客足もまばらな時間帯
レジにいた客は私一人だけで
我が子は子ども用のカートに乗ってました


ほどなくして
もう一人男性客が
隣のレジにやってきました



私が精算を済ませた後
隣のレジにいたそのお客さんの後ろを通った時
子どものカートがその方の足に
少し当たってしまいました
(気を付けて通ったのですが…)



「痛っ…」
そう小さく言ったのが聞こえました



咄嗟に「すみません!」と言った時
【入口】という看板に気付きました




私はレジの【出口】から入ったことに気づかず
子どものカートが入口方向を向いた状態で
【入口】から出てしまったのです



気まずさを感じながらも
その場を後にしました



その一分後



カート置き場にいた私達のところに
その男性がつかつかとやってきて



先程の私の行為に対し
物凄い剣幕で怒鳴ってきました



数十年生きてきて
見ず知らずの他人に
フロアに響き渡るくらいの大声で
怒鳴られたことはなかったので
とてもショックで言葉もでませんでした



なかなか収まらない男性の怒りは
どこまでエスカレートしてしまうのか…
私は身の危険を感じ怖くて怖くて…



刃物とか持ってたらどうしよう…
みんな遠巻きに見てる…
なんなのコレ…



とにかく男性に謝りその場を離れました




去り際に
その男性がカートを足で蹴り
捨て台詞を吐くのが聞こえました




公衆の面前でこんなにも大声で
女性を怒鳴り子どもを怯えさせるなんて
恥知らずでどこまで最低なんだ!!
と怒りが込み上げてきました




貴方だって
女性から生まれて
子どもの頃があったのに



長い人生の中で
うっかり間違えてしまうことだって
あったはずなのに



通りすがりにぶつかってしまうことだって
あったはずなのに




どうしてここまで怒りをぶつけてくるんだ???



私の感情は怒りを通り越して
疑問に変わっていました




しばらく心静かに考えていると
「どうしてお前はそんなにいい加減なんだ」
という言葉が浮かんできました



更に続けて
ルールを守れないやつは最低だ!!!
俺は言われたことを守って
きちんと生きてきたのに
どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだ!!!
こんなに我慢して生きているのに
どうしてバカにされなきゃならないんだ!!!
俺をなめるなよ!!!




いつの間にか怒りを通り越して
唇を震わせながら私に怒鳴り付けた男性の
悲しみや悔しさを感じていたのです



家庭や仕事で
理不尽な思いをしていて
我慢の限界で
ほんの些細なことが
ささくれだったその心に引っかかり
パチンとスイッチが入ったように
キレてしまったかもしれない…



とここまで来て
ふとあることに気付きました
→②へ続く