きらきら水色の輝く波。
細かい反射が銀色に輝き、
目に、記憶の底に、海の透明度と同じように差し込んでくる。
温かい幸福感。
波に揺らぎながら舟に乗り、
男の子を抱え、
むせるような満ち足りた思いに酔い、
ぐらっとした瞬間、
水色の海に落ち、
男の子と一緒に沈んでいった。
気を失くしかけ思うのは、愛された記憶。
私を失くして、悲しむだろう人のこと。
幸せすぎて、海に落ちるほどの幼さも、愛し許された日々。
なくならない愛された思い。
自分と判別がつかないほど離れがたき子どもへの思い。
私の不注意で共に死にいたった子への申し訳なさ。
積年の思い。
春めいてきた午後の陽射しを浴びながら、
台所の擦りガラスのきらきらの中、
産まれたばかりの息子に授乳し、
うとうとした瞬間、
ぐらっと、
南の海に落ちたかと思った。
「あぁ、知ってる…。
この子と一緒に波の上にいたな。」
かつて子どもを産んだ記憶が蘇ってきた。
大きな経験をすると過去に触れるんだなと思い、
私の元へ産まれてくれたことに感謝し、
不運や不遇、子の不出来さに、
時々思い出すことはあっても、
その後はこの白昼夢のことは忘れていた。
あなたを思い、
この無条件に愛された記憶がやってきた。
静かに見守られている。
私はこの悲しませた人を
その後の生、今生でも、喜ばせることができているんだろうか。
幼すぎて、頭が弱すぎて、愛されるばかりだった。
波の歌。
透明な水色の海。
暖かな常夏の海。
遠い南洋の記憶。