はいはーい。今日も無責任に感想文書いちゃいますよ。

今回は『ハサミ男』です。


え? 昨日のブログで書いただろって?
ちっちっち。今回はですね、映画の方なんですよ。

話題の作品はすぐ映画化の話が持ち上がるわけですけれども、この作品に関してはどういう風に映像化されたのかが凄く気になって。
原作を読んだ方なら分かると思うんですが、トリックがね。アレなので。映像ですぐに解けてしまう可能性が高いんですね。
だから興味を惹かれました。


監督:池田敏春
脚本:池田敏春・香川まさひと
原作:殊能将之
キャスト:
   豊川悦司(安永)
   麻生久美子(知夏)
   阿部寛(堀之内)
   樋口浩二(磯部)
   斎藤歩(日高)
   阪田瑞穂(樽宮由紀子)





さて、以下ネタバレで。



ハサミ男である安永と知香は、次のターゲットとして樽宮由紀子という少女を狙います。
しかし、尾行を続けていたある夜、彼女の死体を発見するのです。
ハサミ男が殺したようにしか見えない、完璧な死体を――


原作については前回のブログに書いたので、映画としての特徴などを。

映像化するにあたっての尤も大きい問題点を、医師(安永)を知夏と同行させる方法で回避してました。これは凄い発想だと思います。
一緒に見てた旦那さん(原作未読)がしっかり騙されてましたしね。

前半から中盤にかけては原作に概ね沿っていたので、気持よく鑑賞出来ました。
ハサミ男の殺害方法がそれ程グロテスクなわけでもないので、視覚的にも嫌悪感が現れることはなかったです。
まあ、時間の関係上、ストーリーが駆け足だったのは仕方ないかな。


ただですね。
何なんですか、あのラスト。


映画としてのオリジナリティを出したい、というのは理解できます。
ラストを変えることによって面白味が増すことがあるのは確かです。

でも、あの変更は納得できなかった。

安永が消えることで『ハサミ男』がいなくなる?
それは綺麗事過ぎますよ。
それを言ってしまうと、ハサミ男が犯行に至った理由が希薄になりません?
知夏の自殺願望とかも。

その変更のせいで、最終的にチープな物語に感じてしまったのが残念でした。
これさえなければ、かなりの意欲作だったんだけどなぁ…


感想としては、原作を読まなければそこそこ楽しめる作品かと。
それで興味を持って原作を手に取ってもらえたら、価値は上がりますね。
逆に、原作から入った人には不満の残る作品かもしれません。
原作が良すぎるのも問題なのかもなぁ…


ただ、言うほど悪くもないので、鑑賞してみるのもいいかも。
おすすめ度を数値にすると、10点中6点くらい。辛口評価。


でわでわ、今回はこの辺でー(・ω・)ノシ
自分の中での読書週間に入ってます。
ここ一月で結構読んだんじゃないかな。

普段はOUTPUTが中心なんですが、最近はINPUT。
小説にしろ、映画にしろ、色々と吸収したい欲求があります。


で、お次の話題は殊能将之氏の『ハサミ男』です。


これは度肝を抜かれました。
何という秀逸なトリック! 濃密な人物の造形! とにかく隙のない素晴らしい作品だと思いました。

以下ネタバレで。


マスコミで話題を浚った猟奇殺人犯『ハサミ男』。
その『ハサミ男』は半年のインターバルを置き、新たな獲物に狙いを付けていた。
獲物――樽宮由紀子の後を追い、機会を狙ううちに、彼女は別の人物によって殺害されてしまう。

『ハサミ男』と全く同じ手口で――



前半はハサミ男の視点が中心です。樽宮由紀子を尾行して、彼女の行動や人物像に触れていく場面です。
その中での彼女はとても綺麗で、清廉な印象でした。

そしてハサミ男は、几帳面で理性的な印象。
話が進んでいくに従い、医師に見せる自暴自棄で空虚な面が顕になってきます。
自殺願望が強く、何度も試みては失敗。医師と面談するたびに、それを指摘されて苛立ちます。
私はこの自殺願望が、この話の中心にある気がするんですよね。

さて、ハサミ男は今回の犯行には関わらなかったわけですが、不幸なことに使おうと所持していたハサミが手元に。しかも、そこにもう一人の遺体発見者が現れ、立ち去ることもできない。
切羽詰まったハサミ男は、ハサミをその場に投げ捨てました。
その後、また自殺未遂を起こしたハサミ男に、医師はもう一人のハサミ男を捕まえるように促すのです。



樽宮由紀子の死後、警察の側からの視点も入ってきます。
捜査の過程で、マルサイ(本庁科捜研の犯罪心理分析官)の堀之内も動員され、「ほぼハサミ男の犯行でしょう」との意見を述べます。
そして、堀之内は自分が現場に出ない代わりに、磯部刑事に手足、目として働いて欲しいと願います。

この磯辺刑事がとにかく可愛らしい。話が進む毎に可愛さが増して、最後にはもうムズムズしてきました。
推理小説オタク。純情を絵に描いたような行動。刑事としてはどーなのそれ? ってところまで可愛い。
遺体の第一発見者に思わず一目惚れするとかホントにもう(悶)



…すいません。暴走しました。



とにかく、刑事側とハサミ男側でそれぞれ捜査していくんですが、その過程で見えなかった樽宮由紀子の意外な面が明らかになっていきます。
それから、ハサミ男との共通点も。

刑事側が真相に近付けば近付くほど、ハサミ男は行動が難しくなっていくので、その辺りのスリルもなかなかです。



そして、これぞ叙述トリック! といったラスト!
医師がハサミ男の****だというのは途中で分かったんですが、ハサミ男の正体は最後まで分かりませんでした。見事に騙された。気持ちいいくらいです。

もう一人のハサミ男も、伏線がきっちり張られていて納得。
決着もああするしかなかったんだろうな、と。

最後も広がりを持たせて、尚且つ可能性を匂わせて終わり。
読後の満足感は相当なものでした。


これは賞賛されるの分かります。もう純粋に面白いし、気持ちよく騙された。
読んでよかった、と思えた小説は久しぶりです。


ぜひお薦めしたいですね。いい作品でした。また読もう。


でわでわ、今回はべた褒めで終わりまするー(^ω^ )ノシ
薬疹ってたまんないですよ。痒いし。痛いし。
しかも意外に重篤っぽくて、口の中やら舌やら粘膜にきてました。
ご飯食べられないの辛かったー……



と、まあ、それはさておき。


我孫子武丸氏の「殺戮にいたる病」読みましたー。
動くに動けなかったので、読書にはいい機会だったというか。
なかなかね。時間取るのって難しいもんね。



という訳で、感想です。
ネタバレを大いに含みますので、出来れば読了後に読んで頂いたほうがいいなあと。
この作品はネタバレしてしまうと、9割方楽しみがなくなりますからねぇ。







さて。内容ですが。
犯人、息子を疑う母、そして定年退職した元刑事の三者の視点で物語が語られていきます。

まずは、犯人がまさに逮捕されたその瞬間から始まるエピローグ。
犯人である蒲生稔に、刑事が「……本当にお前が殺したのか?」と問い掛けます。
それに答える稔の言葉は淡々としていて…

そして本編に入っていくのですが。
稔の異常性愛は、もう本格的に歪んでいます。
初っ端から歪みっぱなしです。
こう、なんて言うんですかね。物語として言えば、歪みは歪んでるなりの「美学」がありそうなものなんですけど…稔にはそれが感じられません。
とにかく、歪。理解出来ないんです。
それが失敗って意味じゃないですよ。むしろ成功なんだと思います。
これが納得出来るものだったら、それは『異常』でも『歪』でもなく、予定調和になっていたでしょうし。

稔の手に掛かる被害者は、よくいるありふれた女性。
ほいほい着いて行き過ぎな気もするけど、まあ、ね。そういう女性も珍しくないし。

殺害の場面はエグイです。
肉体的にもひどいですが、精神面でもかなりのものですよ。
殺人の描写の合間に、これが本来の愛の形だ! 素晴らしい! 愛している! この姿が最も美しい!
……と、しつっこいまでの稔の主観!!
正直気持ち悪過ぎます。お願いですから、もっと控えめに愛を叫んでくださいと。
通じ合っていてもキッツいだろうな、と思わせる愛の叫びが、一方通行になってることで更に際立ちます。ちきん肌がひかない。

一方、そちらに一生懸命になりすぎて、肝心の犯行は杜撰です。
証拠隠滅に熱を入れるタイプのシリアルキラーもいますが、稔はそうではなかったようです。
本作品の趣旨は犯人あてのパズルではないので、問題はないですが。

とかく、異常性愛者を主人公に据えて、尚且つ嫌悪感を損なわせない手腕はすごいです。



さて次は、息子が連続殺人の犯人なのでは、と疑う母、雅子です。
この人は、全く子離れできていないお母さん。
親として、息子のことが気になるのは分かりますよ。女親に見せない面って増える一方ですし。

でもね。
ゴミ箱漁ってオ○ニーの回数数えるのは確実に異常だと思うの!(がくぶる)

いや、対象が旦那だったらまだ許せた。ギリだけど。
けど息子はダメ! つかムリ!!
そんなブラックボックス、よく開く気になるな!!

同じ母親の立場から見ても気持ち悪かった…
そのせいなのか、あまり感情移入できなかったですね…できなくて当然と誰か言って。
思ったよりのめり込めなかったのは、この雅子に依るところが大きかったです。



で、最後の主人公。定年退職した刑事さん、樋口。
彼は半年前に、愛する妻を乳がんで亡くしています。
当時お世話になった看護師の島木敏子に支えられ、細々と喪失感に苛まされる日々を過ごしていました。
樋口は想いを寄せてくれる彼女に気付きつつ、気持ちを拒みます。
それでいて、好意を受けているのだから、どうしようもなく追いつめられていたのでしょう。
そんな関係が続いていたある日、敏子が稔の手に掛かるのです。
彼女の想いを拒み続けていた罪悪感があり、そして、同じように罪悪感を抱いていた敏子の妹、島木かおると独自に調査を開始します。

稔、雅子が『歪』なので、樋口はその対極の『正』ですね。
奥さんを一途に想う姿が、同情と共感を呼ぶ。と。

尤も、『歪』が強すぎるせいで、影が薄れがちなのは否めないかなぁ。
当然、物語を進めるための重要なファクターなのだけど、彼だからこそ、という感じはなかったかも。かおるを主人公に据えても成立しそうな気がしたのは残念。



途中、日本や世界のシリアルキラーに触れる講釈が入りますが、核心には関係なし。
単なるピース扱いだった気が。(;´д`)モッタイナイ
タナトスコンプレックス(タナトフォビア?)についてもっと掘り下げてくれたら、一読者として嬉しかったです。
稔はタナトフォビアとは違うと思うけど!!



物語はまあ、無難に、というか予定通り盛り上がってラストに入るんですが……



あのオチ読んで3分考え込んだわ!!



いや、もう…書きたかったのは、アレですよね。本当は幼児期の性への興味を親が力で抑えると、正常な性を育めなくなる可能性がある、と言いたいんですよね。それがテーマですよね。

もしこれが、あのオチありきだったら、私は…私は……orz



何というか、ごめんなさい。私はこの作品、ムリかもしれないです。
面白いかどうか、というよりも、モヤモヤするんです。あんまりいい意味じゃなく。

そこまで後味の悪い作品でもないし、後味悪くても美味しくいただけるタイプの人間なので、単純に合わなかったんだと思います。

何かなぁ…叙述トリックとして素晴らしいのは分かるんですけど、そこに重点が行き過ぎた感が。
ついでに言うと、同居を匂わせる描写はもう少し欲しかった。グラタンの数が5個ある、とかの些細なことでもいいから。唐突に母親が出てきてびっくりした!



というわけで、この作品が好きな人はすみません。正直合わなかった…
今度、別の作品を読んでみたいと思います。


でわでわ、辛口ごめんね(・ω・`)