ある不動産に投資するとき、SPCを使っても自社で投資しても、結局は同じじゃないの?という質問を受けるときがあります。
確かに、匿名組合といっても、営業者を自社で設立し、匿名組合員も自社の一社だけといった場合、これは自社で投資しているのと大きな違いがないのではないかという疑問は一理あります。
SPCと自社投資で会計・税務の取扱いが異なるのは、ビークル(※)の違いによるものなのでやむを得ないのですが、実質的にそのSPCを自社が支配していると考えられる場合は、自社で投資しているのと同じような会計処理をしたほうが適切な場合があります。
※ビークルとは、SPCとほぼ同義語として使われるケースが多いですが、要は特定の目的に使用される事業体(会社や組合)という意味で使われています。
この「自社で投資しているのと同じような会計処理」のことを、「総額法」と言います。
これに対し、投資した持分を出資金勘定で処理し、損益の取り込みも出資金勘定を増減させる会計処理を「純額法」と言います(間を取った「折衷法」というのもあります)。
総額法では、TKで計上される仕訳を、自社でも同じように仕訳するようなイメージです。
つまり、賃料収入が入れば、
(借方)預金 ○○円 (貸方)賃料収入 ○○円
といった仕訳を自社の会計処理として行います。
結果として、自社で不動産を所有しているのと何ら変わらない会計処理が行われることになります。
ここで注意しないといけないのは、どういう会計処理を行おうとも、消費税はあくまでも営業者に帰属させなければいけないという点です。
賃料収入を自社で計上したとしても、住居の非課税売上やオフィスの課税売上は営業者で認識すべきものということになり、自社では消費税対象外の取引として処理することになります。
ところが、法人税の計算では、一部異なる部分が出てきます。
本稿では詳細は割愛しますが、引当金の繰入れや所得税額の控除といった一定のメリットを享受することが可能となります。
実は、法人税法上は総額法が原則となっており、純額法を採用すると上記のメリットが受けられないのです。
逆に、会計処理の原則は純額法であり、総額法で会計処理を行うのは、TKと匿名組合員(自社)が実態として同一である場合に、債権者や投資家に誤解を生じさせないために行う例外的処理ということになります。
ややこしいですよね。
実際には会計・税務だけでなく、譲渡や調達の容易さなども勘案してSPC投資を検討することになりますが、実態に応じた会計処理として、本稿にあるようなことが起こり得るということを知っておいてください。
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本ブログでは、SPCに関する予備知識のない方でもスラスラ読んでいただけるような文章を意識して書いています。
結果として、法律上の詳細な説明を割愛したり、表現が多少雑になったりすることがありますが、実際の投資にあたっては、専門家の助言を得て実施するようにしてください。