よく分かるSPC(特別目的会社)の会計・税務

よく分かるSPC(特別目的会社)の会計・税務

不動産証券化によく使われるSPC(特別目的会社)にまつわる会計・税務を分かりやすく解説しています。

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SPCの税務でよく出てくる言葉として「パススルー課税」というものがあります。

スルーパスじゃないですが、似たようなものです。

日本語では「構成員課税」と言いますが、読んで字のごとく、構成員、言い換えると、出資者に対して直接課税するというような課税体系のことです。

つまり、事業を行う会社に課税するのではなく、その事業に投資した投資家に直接課税しましょうというものです。



さて、匿名組合でも営業者ではなく匿名組合員に損益を帰属させることになりますが、結果として匿名組合員がその利益に対する税金を納めることになります。

こう言うと匿名組合もパススルーのように見えますね。

しかし、これは厳密にはパススルーではありません。

というのも、匿名組合の場合、構成員(匿名組合員)に直接課税するという仕組みになっていません。

匿名組合の事業は営業者によって行われますが、そこで生じた利益は一義的には営業者の利益になります。

そして、そのまま匿名組合員に損益分配しなければ、営業者に税金がかかってくることになります。

通常は、この利益を匿名組合員に分配することで匿名組合員に利益を移すことができるため、営業者に課税されることはありません。

営業者からすると、この分配を損失として認識し、結果として損益がゼロに近似するということになるのです。

何となく、お分かりいただけたでしょうか?



ここで注意すべき点があります。

この損益をゼロにするためにも、匿名組合と営業者の計算期間は一致させる必要があります。

営業者が3月決算だとして、匿名組合の計算期間終了が4月だったとすると、分配前に営業者の税金計算が生じてしまいます。

そうなると、先に営業者で税金が課せられてしまい、前述の効果が得られなくなりますので、この点だけは注意しなければいけません。



ちなみに、普通の会社(SPCではないという意味の会社)では、税金を負担するのは会社になります。

株主に対して税金がかかるのは、配当収入を得たときですね。

その配当ですが、会社が得た利益から税金を引いた後の残った利益から配当されることになります。

この点、匿名組合では、税金を引く前に配当してしまっているので、営業者には税金がかからないという仕組みになっています。

投資家からしても、そのほうがいいですよね。



話があちこち行ってしまいましたが、整理すると以下の通りです。

1.匿名組合はパススルーではない。

2.ただし、匿名組合は分配を損失として認識できる。

3.結果として、匿名組合員に利益を移転できる。

4.そのためにも、営業者と匿名組合の計算期間は一致させる必要がある。


ちょっと、盛りだくさんでしたが、大事なポイントですので、押さえておいてくださいね。




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本ブログでは、SPCに関する予備知識のない方でもスラスラ読んでいただけるような文章を意識して書いています。
結果として、法律上の詳細な説明を割愛したり、表現が多少雑になったりすることがありますが、実際の投資にあたっては、専門家の助言を得て実施するようにしてください。