最近は発達障害について認知度が高まったと思います。かく言う私も、夫の事でカウンセリングを受けていた時発達障害のことを初めて知りました。
夫は幼い頃、実家の裏庭に置いてあった小さめのコンテナに少し水を張り、毎日のように数匹ザリガニを採ってはそこに溜めていったそうです。石や砂や隠れ場所などを入れ、ザリガニの住み易い環境に整えることはせず、エサも全く与えなかったそうです。一切の世話をせず、とにかく溜め続けたところ‥気付くと小さなコンテナの中はザリガニで8割方埋まっていたそうです。
お義母さんの言うには、すっかり乾き切ったザリガニの山がそこにはあったのだそうです。
とにかく、自分の欲を満たす収集が目的だったのでしょう。生き物だという認識が無かったのでしょう。
水も食べ物も無く、太陽に照りつけられてジリジリ焼かれ、ゆっくり死んでいくのはどんなに苦しかっただろう?と思わないのでしょう。
お義母さんも、昔の息子の遊びについて思い出を語る‥といったテンションで、懐かしそうに感慨深そうにしみじみ話していましたが、そこには、罪悪感や子どもに対する違和感などは一切感じられませんでした。
夫からは「カリッカリに乾いちゃってね」と、ちょっと笑い話に仕立てる余裕さえ伺えました。悪いことだとは微塵も感じていない様子でした。
発達障害か否かよりも、 今その子の為に何を教える時なのかを考え、愛情をもって寄り添う大人の働きかけが、子どもの心を人間らしく育てていくのでしょう。
子どもが大人になるまでの時間は豊富にあるので、 常に正しい教育や子育てが出来なければならないという訳ではないと思います。親も不完全な人間ですから、気が付かなかったり、疲れていたり、良い方向に導けないこともあります。でも、いつでもやり直す事は出来ると思います。
お義母さんも、このまま放置すると何を教えそびれるのか、子どもが何を得損なうのか、立ち止まって考える機会を持つべきだったと思います。ザリガニの件だけではなく、沢山の小さな出来事が日常に起きたはずです。
私の息子が小2の頃、我が家もザリガニを飼い始めました。公園の池でアメリカザリガニが増えすぎて困っているから、釣ったら持ち帰って下さいと貼り紙があったのです。息子は虫などの生き物をそれ程好きではなかったのですが、ちょっと張り切ってお世話をしていました。名前はザリ男だったと思います。ザリ男は数ヵ月間元気にしていましたが、脱皮の際、上手く出来なかったのか、ある朝ひっくり返って死んでいました。息子は、飼育箱が狭かったせいなのか‥ひっくり返って息が出来なくなっちゃったのか‥植木鉢(ザリ男の隠れ場所に植木鉢を半分に切ったものを飼育箱に入れていました)が邪魔だったのかもしれない‥などと気にして少しションボリしていました。後でお墓を作ろうね、と私は話していましたが、台所で用事を済ませてから行くと、飼育箱は玄関になくなっていました。「あれ?どうしたの?」
息子は驚いたと言った表情で立ち尽くしていて、「パパがね、こうやって空き地にザリ男を投げたんだよ」と訴えるように言いました。「野球のボールを思いっ切り投げるみたいに」「そんな事する?」
家の前に空き地があったのですが、夫は飼育箱の蓋を取り、家の玄関から思いっ切り中身を空き地に向かって放ったのだそうです。「死んでたから」
それを聞いて、私はすごくショックを受けました。息子もショックを受け、余りの事にボンヤリしていました。
息子と一緒にザリ男を探しに行き、拾ってきて庭に埋めました。
通りを挟んで向こうに広がる空き地に向かって、ピッチャーみたいに思い切り肩を回して投げる様を想像すると、その暴力性と薄情さに、私はそら恐ろしくなりました。
夫が小さな命を何とも思っていないことが垣間見えた瞬間でした。