3.まとめ


心理学で扱う生体とは、比較的高等動物(チンパンジー、ハト、マウス、人間など)に限られるが、

生理学では動植物全般を扱う。


例えば、William Harveyが血液循環を発見したのは、

比較的血液の流れが遅いカエルなどでの観察にもとづいているし、

神経の働きの基本である興奮のメカニズムは、イカの太い神経線維(巨大軸索)で解明されたものである

(小幡,1997)


生体と物質の違いに関する生理学と心理学との見解の相違を知るためのよい例がある。


ここに、外見上人間そっくりのロボットがいるとしよう。

そのロボットは、知覚・学習・記憶・行動・感情などの面でも人間そっくりなのである。


心理学者はたとえそのロボットが機械じかけと分かっても、その行動や感情の表出を観察し、

さっそく研究にとりかかるだろう。


しかし、生理学者はロボットを解剖し観察した結果、

それが機会とプログラムで構成されていることを知った瞬間に研究をやめてしまうだろう。

(今村,1983)


これは極端な例かもしれないが、つまり心理学ではこのロボットを生体として扱うが、

生理学では物質として扱うということである。


このように、生理学と心理学は生体を研究対象としているのは共通でも、

心理学では生体を行動・知覚・学習などをするものとしてとらえ、

生理学は生体を細胞を基本構造として筋肉・臓器・神経をもつものとしてとらえているのである。


[参考文献]


新生理学/小幡 邦彦

¥5,775

Amazon.co.jp



今村護郎 1983 行動と脳-心理学と生理学-.東京大学出版会.