国際コミュニケーション英語能力テスト、通称TOEICを受けてきた。 


なかなか厳格なテストのようで、

携帯電話の電源がOFFになっているかを確かめられたり、

カンニングや替え玉受験の取締りを強化している。


それは、受験生全員が公平に受験できるようにとの配慮からだろう。

しかし、どんなに公平性を保とうとしても、予測できないことは必ず起こり、

物理的に統制不可能な変数が混入する可能性を否定できない。

例えば、リスニング中の咳・くしゃみ、試験監督のヒールの音、会場における音響の違いなどである。
他にも、会場によって椅子の硬さや机の高さ・広さなどに違いが出てくる。

もしかすると、椅子が適度に柔らかく、

机が広い会場の受験生は他の会場の受験生よりもリラックスできるので、

得点が高くなるかもしれない。


しかし、これらの変数をすべて統制するのは、ほとんど不可能に近い。


これは、心理学実験における剰余変数の統制が困難であることと共通している

心理学実験で最も注意しなければならないのは、この剰余変数の混入である。
実験で操作される変数以外の変数が混入すると、研究としては致命的な事態に陥ることがある。

例えば剰余変数として考えられるのは、実験者効果・教示の仕方・音響・部屋の明るさなどである。
しかし、たいていの場合、無視できるほど小さい変数であることも多い。

他にも視覚系の実験ならば、視角によって対象の大きさや距離などが異なって見えるため、

視角1°単位で視点を固定する器具を装着してもらったりする。

認知系の実験だと、コンピューターで刺激を提示するのが一般的である。


TOEICでも、細かな剰余変数は無視されているようだ。

TOEICと心理学実験(個人差を扱う実験を除く)で違うところといえば、

個人のデータが重要かどうかぐらいだろうか。


センター試験もTOEICと同じである。

最近、センター試験への風当たりが強い。

今は、受験者と同じくらい、試験監督にもプレッシャーがかかる状況である。


だが、統制できないような変数でとやかく言うのは、あまりにも酷であろう。

真剣だからこそ、怒りもするのだろうが。


[今回の参考文献]


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