タップダンサーと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは誰ですか?
馴染みのない方だと全く出てこないかもしれませんが、“雨に唄えば (Singing in the Rain)”はご存じの方も多いでしょう。
主演のジーン・ケリー。
又、その当時2大スターと言われた、フレッド・アステア。
この辺りはご存じの方もおられると思います。
他にもグレゴリー・ハインズ、セヴィオン・グローバー、HIDEBOH、熊谷和徳(敬称略)など、テレビや映画などで活躍されたダンサーでしたら馴染みのない方でもご存じではないでしょうか。
今回は、そんな中でも一般の方にはあまり知られていないレジェンドのタップダンサー、“Bojangles”にまつわる話をご紹介致します。
“Mr. Bojangles”という曲
1968年、カントリーシンガーのジェリー・ジェフ・ウォーカーの実話を元にして作られた名曲。
彼がニューオリンズでの下積み時代、カフェで気になる女の子の気を引こうとして悪ふざけしたところ御用となり、一晩留置所で過ごした時に出会ったのがこの題名の老人とされています。
老人は大道芸人をやっていて、本名を明かしたくないので自らを“Bojangles”と名乗っていたそうです。
そして、愛犬と旅巡業をしていたが先立たれてしまった、という話をする度に留置所内の空気は重たくなったそうで。
そんな時、雰囲気を明るくするため「Bojangles踊ってよ!」と言って、彼が楽しそうに踊るのを見ていた、というような歌です。
歌詞ではこうつづっています。
僕はボージャングルさんを知っている
皆の為に踊るような人だった
擦り切れた靴でね
白髪とぼろぼろのシャツとだぶだぶのズボン
古いタップダンスの靴
彼は高く跳んだ、とても高く
そして、軽やかに着地した
( 中略 )
おじさんは言った
「安い酒場で機会があれば踊ってるよ」
飲み代やチップ目当てさ
でも、ほとんど群の留置所にいるけどね
ちょっと飲みすぎるんだよ
ボージャングルさん 踊っておくれよ
老人と留置所、愛犬の死など物悲しい歌詞のようですが、歌詞の中でのBojanglesは決して悲観的ではなく、そんな人生も楽しんでるようです。
踊ってくれよ!と言われれば、笑いながら高らかに跳んで皆を楽しませるエンターテイナーだった様子が浮かび上がってきます。
Bill “Bojangles” Robinsonという人
話は変わりまして1920年代に実在した名タップダンサーBill “Bojangles” Robinson (ビル “ボージャングル” ロビンソン)をご紹介します。
1878年5月25日に生まれた彼は6歳でタップダンスを始め、7歳でダンスの為に学校を辞め、様々なカンパニーで巡業をしナイトクラブやブロードウェイで成功を収めるまでになりました。
まだ人種差別があった時代。
当時ハーレムにあった高級なコットンクラブでは有名な黒人アーティスト達を集め、白人プロデューサーによる上流の白人の為のショーに彼は出演。
タップの名士として人気を博し、その後ハーレムの名誉市長やメジャーリーグ『New York Giants』のマスコットにもなりました。
ただ彼は根っからのギャンブル好きで贅沢な暮らしをしていました。
故郷のリッチモンドでは信号のない道で渡れない子供を見て信号を作るよう資金提供をしたり。
黒人だけの野球チームの資金を提供したりなどして、彼が亡くなる時には無一文だったそうです。
葬儀はテレビの名司会者エド・サリバンが費用を負担し、ハーレムからブルックリンまで埋葬車が進むブロードウェイの道は50万人を超える人々が沿道を埋め尽くしたそうです。
尚、ビル ・“Bojangles” ・ロビンソンの生まれた5月25日はアメリカで「National Tap Dance Day」と制定されました。
“Bojangles”は同一人物?
前述した歌“Mr.Bojangles”と、Tapの名士“Bill “Mr.Bojangles” Robinson”を同一人物と混同する方が多いそうですが、実は別人物。
歌が作られた頃のニューオリンズの留置所では白人と黒人は別の部屋だったそうです。
作者J.J.ウォーカーは白人だったので黒人に会うことはなかったそうです。
また、ビル・“Bojangles”・ロビンソンは(1878年5月25日 - 1949年11月25日没)なので、曲が作られた1968年には実在していません。
かのエンターテイナー、サミー・デイビスJr.にとってビル・ロビンソンはTAPダンスの師匠だったそうです。
“Bojangles”という名前と生き様を重ね合わせていたのか、サミーはこの歌をこよなく愛していました。
とても色気や哀愁が溢れる、サミーならではの歌唱も興味ある方は是非観てみて下さい。
生誕日が“National Tap Dance Day”に制定される程愛されたビル・“Bojangles”・ロビンソン。
そして、アメリカ国民に愛された名曲“Mr.Bojangles”。
この稀代な“Bojangles”の歴史をきっかけに、エンターテイメントの扉を開いてみてはいかがでしょうか。





