おばあちゃんが脳梗塞と肺炎で倒れたって聞いて
地元に帰ってきた。
この2年くらいで痴呆が進んでしまって
もう1年以上会ってなかったし
人は死ぬものだし
順番だし
残念だけれど
そんなに悲しいとも思わなかった。
でももう会えないまま最後に会いに行かなかったことを後悔するよりは
会えるうちに顔を見ておこうと思って。
おばあちゃんはわたしのことがわからないかもしれないけど
わたしはちゃんと覚えておけるように。
痴呆が進んでた上
脳梗塞のせいで話もできない。
声をかけても目を動かすだけで
わたしのこともお母さんのこともわからないみたいだった。
今日は調子が悪いみたい。
お母さんがそう言った。
声をかけても
手を握っても
おばあちゃんにはわたしはもう見知らぬ誰かなのかと思ったら
目の前に座って手を握る他人のことを怖いとは思わないのか、迷惑ではないのか
そんなことを考えた。
面会時間が終わって
おばあちゃん、もう帰るね。
元気でね。
おやすみ。じゃあね。
そう言った。
もうよくならないことはわかっていたし
また今度はないかもしれないと思ったら
嘘になる言葉は言えなかった。
お母さんが最後に声をかけると
さっきまで誰かわかっていなかった表情が
なにかの回線がつながったみたいにくしゃくしゃになって涙をこぼした。
言葉にならない口で何かを一生懸命伝えようとする。
もうわたしのことを忘れたはずのおばあちゃんの回線がつながって
わたしを見て何度も泣くから
わたしも嗚咽を漏らして泣いた。
おばあちゃんは何を感じて考えたんだろう。
何を伝えようとしたんだろう。
伝える言葉も共有した記憶もなくしてはわたしの知るその人ではないと思っていた。
でも途切れ途切れに繋がる回線みたいにおばあちゃんが帰ってきて
悲しくてやるせなかった。