第二次世界大戦時の日本の侵略は、中国と朝鮮半島のイメージが強いです。もちろん戦前日本が東南アジアの国々を占領した歴史は皆知っていますが、知識として知っているだけでその詳細な実態は知らない人が多いです。日本軍がシンガポールを占領下実態がわかる貴重な書籍と言えるでしょう。

日本が占領する前、シンガポールはイギリスの植民地でした。植民地というと抑圧されていたイメージありますが、シンガポール人はイギリスとうまくやっていたようです。イギリスが宗主国となったことを歓迎していたとあります。

しかし日本軍が進攻して来ると、あっけなく降伏してしまいます。(元から戦意があまりなかったとありますが、自国でないからある意味当然のような)そして日本軍が1942年から1945年シンガポールを占領しました。本書はその時の様子を貴重な資料と共にまとめたものです。当時のシンガポールの町中の様子や、ポスターや切符などの写真が多く、写真を楽しむという点でもいいと思います。

本書の執筆者リー・ギョク・ボイ氏は本書の序で「戦争を指せるには戦争そのものと戦争の原因を知ることが何よりも大切です。自らの歴史を知る努力を重ねていけば、戦争の阻止に役立ちます(要約)」と述べています。

本書の訳者塚田綾氏も「謝るという問題ではない。日本が戦時中シンガポールで何をしたか知ることが大事。そしてそれを伝えることが、それが再発を防ぐこと(要約)」とあとがきで述べています。まずは知ることが大事です。

本書を読めば、日本のシンガポール占領時の様子を知る切っ掛けになると思います。

ちなみにその後のシンガポールについて。
日本敗戦と共にペナンとマラッカはマラヤ連邦に吸収され、シンガポールはイギリスの直轄植民地となった。のち1959年人民行動党が勝利したのを受け「自治州」となり、1963年完全独立したマレーシア連邦の一州となったが、1965年連邦から脱退して分離独立しました。

現在のシンガポールは、意外と若い国なのであります。独立前も独立後もイギリスには友好的な感情を持っています。平和に独立した稀有な国であります。