日本史、東洋史、古代、中世という枠を超えた研究業績を残した歴史学の権威石井正敏氏。氏は2015年7月6日68歳で亡くなった。80過ぎても研究活動を続ける方が多い学術の世界では、比較的短命である。

氏の没後、教え子たちによる「石井正敏さんを偲ぶ会」が開催された。その時に氏の学問的遺産をふりかえるという趣旨で本書が出版される運びとなった。尚、その後ほどなくして氏の論文集「石井正敏著作集」が刊行されている。本書の方は、石井の学問を解説、紹介し、時には氏の趣味まで紹介しており、専門知識がなくても読める内容となっている。

ただ本書の趣旨は「石井正敏氏の功績を残す」ことであり、「前近代の日本と東アジア」のことをよく知らない人に知ってもらおうという内容のものではない。初学者には読みにくいかも知れない。


日本は鎖国していたというイメージが強いが、中国や朝鮮半島との貿易は盛んに行われていた。渤海とも交流していたし、意外と国際的だったのである。


「研究に、日本史も東洋史もないんです」

石井氏の思想です。