中国河南省の曹操墓を発掘した方々がその様子をまとめた本である。厚いが、専門知識がなくても読める内容である。曹操の墓の状況が知りたい人にお勧めの一冊である。

内容は、墓の発掘状況や、説明である。

そして、「曹操墓の偽物」という主張に対する、反論も掲載されている。

「曹操の墓発見」というニュースが流れたとき、「本物なのか」とその信憑性を疑う声が多かった。

理由は大まかに言えば3つである。

1 曹操は死ぬとき、「自分の墓だとわからないようにしろ」と遺言したのに、「魏武王」という石碑が残っているのはおかしい。

2 殉死を禁止したのに、培葬されている女性の骨が見つかったのはつじつまが合わない。

3 副葬品を禁止したのに、たくさんの副葬品が出てきたのもつじつまが合わない。


しかし、まず1については、その話そのものが虚構ということである。実際には唐の李世民が参拝に行った記録が残っており、場所をわからなくしたというのは「三国志演義」の影響を受けた虚構である。

2については、綿密な調査の結果、培葬されたのではなく、曹操より前に亡くなった側室を改葬したものであると判明。

3 確かに副葬品は多かった。しかし、食器など、普段使っていたものをそのまま入れた形跡がある。墓の副葬品とするために、わざわざ作ったものではない。


「歴史書の記述と違うから、本当に曹操の墓か疑わしい」と言い出したのは、文学者史学者である。彼らに対する、怒りもぶちまけている。

「史書に書かれていることが絶対なのか! こっちは発掘された物を一つ一つ検証しているんだ! 机上で研究している人に、何がわかる!」

伝統的に、考古学者と文学者・史学者は仲がよろしくない。原因は、このように、すぐ「本物なの?」
というのが、後者だからである。考古学者は大抵遺跡のそばに住み込み、「命を賭けて」発掘調査を行っている。今回の発掘調査でも、墓の一部が崩れて、皆で逃げる場面もあったという。危険と隣合わせで調査している彼らにとって、現地を見もしないで本物か疑う人は絶対許せない存在なのである。

安易に、疑うべからず。

 

 

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