機能不全家族に育ち、自分を支配されながら生き抜く人達は、混乱した、不安定な環境を、どうにかして生き抜くために、自分の内面や外側の出来事をコントロールするようになります。
自分の内面とは、自分自身の感情を感じないように、切り捨てたりすることです。例えば、本当はすごく怒っているのに、怒っていない、たいしたことないように振る舞う、とか。その感情をひとつひとつ直に受け止めていたら、その環境に耐えられなくなります。それは、ある意味、心の防衛機能とも言えます。
怒りをあらわにしたら、「お前なんていらない」と言われるかもしれない。「お前の面倒は見てやらないよ」「ご飯をあげないよ」自分を養育してくれる親の機嫌を損ねたら、捨てられてしまうかもしれない。それは、子どもにとって、見捨てられる、生きていけないことに繋がる死活問題なのです。
なんとしてでも、その環境に適応しないと、生き延びていけない。何度も何度も、見捨てられる体験をして、やがて、それは、「見捨てられ不安」として、心の中にいつも付きまとい、心に暗い影を落とします。それでも必死に生きようとします。
そして自分の内面だけでなく、外側の出来事もコントロールするようになります。外側のコントロールとは、自分の家庭環境が、これ以上、不安定で混乱した状況にならないように、常に周りの人を監視し世話をします。
被害を最小限にするために、四六時中神経をすり減らし、状況をコントロールしようとします。これは、家族に対して行うだけでなく、それ以外の周りの人達に対しても、状況をコントロールするようになります。自分が傷つくことを、可能な限り防ぐ為でもあるし、コントロールすることで、全く得られない、心の平安を少しでも保つためでもあります。
これは、身体的虐待やアルコール依存症の家庭にだけ、起こる話ではないのです。以外に思われるかもしれませんが、過干渉、共依存でも、子どもは同じような心理状態に置かれます。
過干渉、共依存の場合、子どもは親から常に監視され、コントロールされています。お母さんが、怒りっぽいわけでもない。意地悪なわけでもない。しかし、ものすごく強い意志で、子どもの上に、君臨しているような状態で、子どもの生活のすべてをコントロールするのです。
とても柔らかい口調だけど、「あら、どこに行くの?」「誰と行くの?」「何時に帰ってくるの?」「何をしに行くの?」などなど。私の母は、誘導尋問がとても上手でした。非常にやんわりと優しく、いつも問いかけるのです。私は、とても素直で正直だったので、(半ば、バカ正直とも言えますが…)包み隠さず、すべて話していました。
子どもの素直さや正直さもありますが、親から日常的に境界侵入が起きている中で、人としての境界そのものを築けていないので、服従状態でもありました。
それが、母に対する愛情を示す指標であり、仲良しであるコミュニケーションの証のように思っていたのです。母に全て報告することに、少しのためらいや拒否感さえ、ありませんでした。その位、深い洗脳状態にあり、神のように、世界一素敵な母として、思い込んでいたからです。
この状態に、拒否感など、嫌な感情が湧く人は、問題に気づきかけているか、気づいている人でしょう。全部報告する義務なんて、たとえ親であってもないんです。自分が話したいことだけ話せるのです。本来は、義務ではなく、チョイスなのです。そして、その選択は、母の意向によってではなく、子ども本人だけの意思で完結できるはずのことです。
お母さんとしては、子どもを守り育てるという責任を果たしていると思い込んでやっていますが、それは、子に対する責任ではなく、コントロールなのです。自分が不安だから、子どもをコントロールして、心の平安を少しでも保ちたいのです。
とはいえ、お母さんの心の不安定は、子どもとは本来は何の関係もなく、お母さん自身の問題なのです。子どもを鏡として、自分の思いを投影しているだけなのです。
コントロールを受ける子どもの家庭は、周りから見える幸福感とは裏腹に、自分というものの感覚や、自分の価値を育て始める時期に、人としての境界線や、存在自体が、親によって脅かされている危機的な家庭環境なのです。
「見捨てられ不安」を持つのも、「他人軸」になるのも、当然なのです。
コントロールを受けて育つ子どもは、母親との間に健全な関係性を築けないことから、それが恋愛や友人、職場などの人間関係に対しても、上手くいかないようになります。母親との関係性がベースなのです。男の子であれば、女性を怖く感じるなど、女性問題が生じてきます。女の子でも同様です。親密な関係性になる、恋愛関係にも多大な悪影響を及ぼします。
問題の派生が全てお母さんにだけ、あるのではありませんが、お母さんという存在が、非常に大きな割合を占めることは確かです。
しかし、だからといって、お父さんは無罪放免というわけでもありません。子にのめり込む母親には、悲しい背景がありますが、夫婦間の在り方の問題も絡んできます。父親の在り方もまた、子に与える悪影響は大きいのです。
ひとつひとつ、紐解いていきたいと思います。