韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が10日、日韓両国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)を訪問した。
現職の韓国大統領が竹島を訪問するのは初めて。
韓国の当局者は大統領の竹島訪問について、同島付近に存在する天然資源の重要性を強調するもので、日韓関係の悪化が目的ではないと主張した。
一方、藤村修官房長官は午前の記者会見で、李大統領の竹島訪問が事実であれば、日本の立場と相容れず受け入れられないとし、「極めて遺憾だ」と述べた。
この時期の竹島訪問は、李大統領が領土問題について、言葉だけでなく行動を見せならなければならないと判断したため
<日本での経緯>
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が10日、島根県の竹島(韓国名・独島(ドクト))を強行訪問したことで、昨年夏以降、すれ違いを重ねてきた日韓関係は、機能不全に陥りかねない深刻な打撃を受けた。
北方領土、尖閣諸島(沖縄県)とあわせて、日本の領土を巡る三つの問題が野田政権を揺さぶっている。
韓国のテレビ局は、竹島に上陸し「韓国領」と漢字で白く刻まれた岩に一人で登ってポーズを取る李大統領の姿を10日夕から繰り返し流した。大統領は「国土東端の独島をしっかり守ってほしい」と常駐する警備隊員たちを激励。同行の韓国記者団によると、大統領は、竹島の玄関口である鬱陵島(ウルルンド)に立ち寄った際には「就任時から来ようと思っていたのだが、実現せずにいた」と語ったという。
青瓦台(大統領府)関係者は「任期中に1回は行くという計画があった。12月に大統領選があり、時期は今しかないと判断したのだろう」と話す。
一方、日本外務省の説明によると、日本政府が大統領の訪問計画の一報をつかんだのは9日午後5時ごろ。韓国政府が韓国の報道機関に事前に知らせた情報を入手したもので、韓国政府からの連絡は一切なかったと言う。
日本政府は9日午後7~10時ごろ、佐々江賢一郎事務次官から申珏秀(シン・ガクス)駐日韓国大使など三つの外交ルートで、事実関係の確認と訪問中止を申し入れたが、韓国側はいずれも「自分たちは知らない。至急確認する」と応答。韓国側は10日午前まで「電話にすら出ない」(外務省高官)状況になった。
日本政府は10日午後2時前、大棟領の竹島上陸を確認したが、これも韓国のメディアが配信したとみられる映像を根拠にしたものだった。
◇ ◇ ◇
民主党政権下での日韓関係は、歴史問題に抑制的に対応する李大統領と、その姿勢を評価して未来志向の関係構築を目指して「配慮」を見せる日本政府の間で、当初は友好ムードだった。日本側は、台頭する中国や不安定な北朝鮮情勢を背景に日韓関係重視を鮮明にし、▽日韓併合100年の談話▽植民地時代に日本に渡った朝鮮半島由来の図書の一部引き渡し▽通貨危機の際に外貨を融通し合う通貨スワップ協定の限度額拡大--などの政策を次々と打ち出した。
しかし韓国の憲法裁判所が昨年8月、慰安婦問題について「韓国政府が問題解決に努力していないことは元慰安婦の人権を侵害していて、憲法違反だ」との判断を示したのをきっかけにすれ違いが始まった。韓国側は日韓外相会談などで問題を取り上げたが、日本政府は「法的に解決済み」との立場で応じる姿勢を示さず、昨年12月の首脳会談では慰安婦問題を巡って激しい応酬になり、両国関係は冷却化した。
韓国側関係者の多くは「李大統領は日本に強いフラストレーションを感じていた」と話す。就任後、歴史や領土問題に深入りしてこなかった見返りを日本側に期待したのに期待外れだったと考えているのだという。
李大統領が韓国の現職大統領として初めて竹島訪問に踏み切った背景として、「民主党政権による外交敗北の結果だ」(自民党の安倍晋三元首相)との批判も自民党などから出ている。安倍氏は「日米同盟の信頼関係が揺らいだ状況を各国は見ている」と指摘した。 竹島以外にも、北方領土問題では、ロシアのメドベージェフ首相が7月3日に国後島を訪問。中国などが領有権を主張する尖閣諸島については、中国の漁業監視船が7月11、12両日にわたって日本領海に侵入した。
大統領の竹島訪問で「日韓関係が完全に壊れかねない」(政府関係者)との懸念が出ている。残り任期が来年2月までと少なくなった李大統領が、融和姿勢に転じる可能性は低いとみられる。今年12月の大統領選に向けた動きが活発化するなか「今、表に出ている候補者で李大統領ほどの日本重視の人物はいない」(日韓関係筋)とされ、日韓関係立て直しの見通しは全く立たない

