VoxのDistortion Boosterについて調べてみると"歪み"というものが生まれた時代の雰囲気を感じることができる様な気がして興味深いです。
その反面、深く調べなければいけないほどこの当時のVox製品はややこしいです。60年代のVox製品は同じ名前の商品でもどこの工場で生産されていたかで見た目や回路が違い、当然音も違います。Distortion Boosterも同様です。素人知識ではなんだかよく分かりませんが、とりあえず調べたことを分かった範囲でまとめてみました。
このDistortion Booster、名前がディストーションにブースターときてるので分かりにくいですが、現代の分類で分けるとファズのようです。
なぜDistortion Boosterという名前がついているかというと、もともと64年にJMIが開発に着手していたブースターは4つあり、それぞれTreble、Bass、Mic(Mike)、Distortion、という名称が付いていました。
高音(ギター)用、低音(ベース)用、マイク用のブースターを想定して各々設計されています。その中にディストーション用のブースターがある訳ですが、64年当時の人々にとってのディストーションとはどういう意味だったのか当時を生きていないのでいまいち分かりません。
私の考えでは、マエストロ FUZZ TONEを模した物を作る際に、JMIがファズという表現をそのまま用いてしまうのではなく別の言葉でその音色を表現するためにディストーションという言葉を用いた、なんていう背景があったりするのかな~と思います。実際には、製作に関わった人に聞かないと分からない事ですが。
その点に関し、一体何を増幅したかったのかについての記述が66年のThomas Organの製品カタログにはこうあります。
「基音に実在しない倍音を生み出すユニット。その結果、まったく新しい音色のエフェクトで、それは“Boss”!」
Fuzz Toneを模したエフェクト効果を持つ製品を売り出すためのアピールとしてこういう表現をしているという意見も出てきそうな表現ですが、60年代もこんな感じの売り出し文句を用いていたんだな~と感じました。
「基音に実在しない倍音」という表現から原音の低域や高域をブーストする他のものとは違い、原音に存在しない音を加え原音とは全く違う新しい音を出すために製作されたエフェクターなんだと思います。(どちらかというと、オクタヴィアの売り文句に聞こえる表現です。)
そういった意味では、従来のプリアンプ発展型のような、あくまでオーディオ的な考えで製作されていたものから、今でいうところのエフェクター、原音とは違う音響効果を求めるものが製作され始めたころの製品なのかなと感じます。あくまで私個人の勝手な想像ですが。いまいち60年代のエフェクター事情が私は分かっていません('ω')ノ
そして、いまいち判りにくいのが、このDistortion Booster、同じVox製品として4種類のそれぞれ違う回路を持つエフェクターが売り出されています。
まず最初に、JMI製のDistortion Booster。当時の参照番号から#153 Distortion Boosterと呼ばれたりします。
2つ目にThomas Organから66年に発売されたDistortion Booster。型番からV816 Distortion Boosterと呼ばれたりします。
3つ目にV816の出力を調節できるようLevelが設けられた(増幅回路自体も改変されています)V8161 Distortion Booster。
そして最後にイタリアで製造されたというV8162 Distortion Booster。
現在、比較的市場に出る(といっても滅多にないようですが)機会があるV8162の中身はカップリングコンデンサにトロピカルフィッシュ、トランジスタにBC108が使われています。回路自体他の3つのDistortion Boosterと違ったものになっています。
そして、私が個人的に興味があるDistortion Booster V816は入出力段にあるカップリングコンデンサにセラミックコンデンサが使われています。トランジスタは2n2924が使われています。バイパスコンデンサにはSuper Beatleといった60年中頃にイギリスで製作されたVOXアンプに使われているメーカーのコンデンサが用いられています。
最近だとフィルムコンデンサが用いられる容量の部分にセラミックコンデンサが用いられている訳ですが、どういう音がするのか興味があります。という訳で一応製作してみました。
実際の当時の音とは当然全く違うものだと思いますが、如何にも60年代!ビートルズ!みたいな音がしました。こういう表現をすると如何にも60年代やビートルズの事を全然分かっていないといった感じになります(・ิω・ิ)/
そして私は音の細かいディテールを確信を持って聞き分ける自信は全くありません(*>_<*)ノ
50~60年代の洋楽も好きなのでよく聞く期間もあったりしますが、そういうのが"好き"というのと、その時代の音や音楽的背景を深く"知っている"というのは全然違うんだな~と常々感じます(๑•̀ㅂ•́)و✧
そんなこんなで、このブースターをいくつか試作している中問題になったのがバイパスコンデンサです。オリジナルはSuper Beatleといった60年中頃にイギリスで製作されたVOXアンプに使われているメーカーのコンデンサが用いられているようです。同じコンデンサほもう入手できないので新たに音色を模索しなければなりませんでした。
しっくりくるコンデンサがなかなか見つからず、満足いく音を得られるまで試行錯誤しました。
結局、とても耳の肥えた方に聞いてもらい押し出しが強く、音が抜けて聞こえ、ハリや明瞭度が素晴らしいコンデンサを見つけて頂いたのでとても心地よい歪みが得られるブースターができたと思います。
ただこのコンデンサの手持ちが数個しかなく、私の環境だと海外から取り寄せないと購入できないようで、さらに実際に購入できるかもよくわからないので…
もったいないくてこのブースターや、そのコンデンサを使ったエフェクターを全然製作できないのが残念です('_')