高校生二人を車から下ろすと、雲英は「後で電話して、迎えに行くから」とだけ言うとそのまま車を走らせた。
ポツンと残される二人。
「ま、いつものことだし。さっさと終わらせるかぁ。」
秋穂が背伸びをしてフゥっと息をつくと、早速インターホンを押した。
出たのは、どうも弟らしかった。
『はい、上木ですが』
「こんにちは。白川という者です。優香さん、いますか?」
『姉ならいますが・・・・少々お待ちください。』
すると、インターホンを切った。
「丁寧な弟さんね。」
儷は感心したように呟いた。秋穂も黙って頷く。
しばらくすると、バタバタと家の中から足音が聞こえて、ドアが開いた。
そこにいたのは、少し粧した上木優香の姿があった。
秋穂を見ると、頬を紅潮させて照れ笑いをしたのと同時に、儷の姿を見ると少し眉をひそめた。
「あのぅ、どうしたんですかぁ?」
ぶりっ子さながらの甘ったるい声で、クネクネしながら秋穂を優香は見た。
儷は呆れたと言わんばかり半眼で優香の仕草を見ていた。
秋穂は王子様スマイルで微笑みながら、言った。
「こんにちは、優香ちゃん。ちょっと話があるんだけど、いいかな?出来れば、俺達三人で話せるところがいいんだけど。」
優香は三人で話すということに少し不満そうにしたが、憧れの王子が家に訪ねてきたことに対してすごく、気分がよく、快く二人を家に招き入れた。
両親が共働きで今は家に弟自分しかいないらしい。
弟はすぐに友達の家に泊まりに行く予定があるから、家で話せばいい。とのことだった。
「話って、なんですかぁ?」
(アッタマ悪そうな話し方)と内心儷は良い気分じゃなかったが、このあと起こる出来事を考えると、ワクワクして自分の嫌いなタイプの優香を見るのも嫌ではなかった。
「んー・・・っと。Team COLORって知ってるよね。」
「え?・・あぁ、はい。あの都市伝説じみたグループですよね。なんでも、恨みを持った人の見方だとか?いや、優香はよくわからないんですけどぉ~」
「うん。それ。噂なんだけどさ、飯田君ってその人達に連れてかれっちゃったんだって。」
「あ!優香もそれ聞きましたァ~」
一緒だぁ~なんて、花を飛ばして喜ぶ優香。秋穂の隣で笑いをこらえている儷に秋穂は笑みを浮かべたまま、儷の太ももをつねった。
儷は、少し吹き出しながら、秋穂を見た。
(分かってますってw)
小声で言うと、ジトっと秋穂の目線が変わった。
「なんかぁ~、飯田君って超キモいんですよぉ。優香なんか、前にストーキングされちゃってぇ。」
COLOR側の二人の目つきが変わる。その様子にも気づかないで、しゃべり続ける。
「ずーっとだったんで困ってたんですぅ。なんかぁ、一緒な委員会にしてきたりとかぁ。部活も同じだったんですよぉ。
優香のこと、休み時間中に見てきたりとかぁ、マジでなくないですか?
飯田くんってぇ、ひとり暮らしなんですけどぉ、合鍵とか渡されてぇ。
『家とか入ってもいいよ』
みたいな事を言われて!
マジ意味わかんないんですけどぉ。
そしたら、急に彼女作って優香の前でイチャイチャしだしたんですよぉ~
あれ?!優香のこと好きなくせに?みたいなぁw
本当にアレは恨まれても仕方ないですよねぇ」
「「・・・・・」」
二人は顔を見合わせて思った。
((こいつ、本気な馬鹿な奴だ))
自分が勘違いしているとも気づかずに、自惚れているなんて馬鹿だな。
「それ、自分が自惚れてるだけだったりしてー」
冗談めいた風に、それでも本音を口に出す儷。
秋穂は目を見開いて儷を見たけど、そんなことない、と自信満々で優香は答えた。
「黒崎さんはそんな経験ないだろうから、分かんないかもだけど!
本当に飯田くんは周りに優香が可愛いとか色々と言っていたのよ!」
「可愛いって言われた=好きってのは勘違いだと思うけどなぁ~」
ボソッと呟く儷の声はどうやら優香には聞こえなかったみたいだ。
じゃあさ、と儷は言う。
「TeamCOLORの話に戻るんだけど、これ、知ってるかなぁ?
あのグループの報酬の話。」
「知ってるぅ!無報酬なんでしょ?便利だよねぇ。ま、グループだもんねぇ。お金は取らないか!」
「違うよ。」
「え?」
優香の顔が少しひきつる。儷はニッコリ笑いながら話を続けた。
「確かに、そのグループの報酬はお金じゃないけど、かといって無報酬ではないんだよ。
報酬の形はいろいろで後払い。だから、老若男女問わずに彼らの前に現れることができるのがCOLOR。恨みを持つ人なら誰でも歓迎しますってね。
・・・これは、ココだけの話なんだけどさ。飯田君って本当にTeam COLORの餌食になったらしいんだけど、依頼主である恨みを持った人が報酬を払ってないらしいんだよ。」
「へ、へぇ~」
徐々に、優香の顔に大粒の冷や汗が流れている。それを見ながら、儷はクスリと笑った。
「まぁ、後払いだから支払えばいいんだけど、もし払わなかったらその人達が目の前にもう一度現れて、請求するらしいよ。」
「ガ、ガセでしょ~。だいたい、その情報どこ情報なのぉ、黒崎さんだけズゥルゥイぃ♡」
もはや動揺を隠せていない。
儷と秋穂は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「あたしたちだよ。」
その言葉に、ホッとしたように優香が言った。
「な、なんだぁ~。マジでビックリしたじゃん~!驚かせないでよぉ。だいたい、秘密組織のようなものなのに、そこまで詳しいこと知るわけないと思ったのぉ
その人達じゃないと分かんないじゃんー」
ねー。と同調を求めるように秋穂に笑いかけた。秋穂も微笑む。
「目の前にいるのがその人達って言ったらどうする?」