彼女と出会った当初、僕は既婚者だった。


平凡で幸せだと思っていた日々は、彼女との出会いから静かに崩れていった。



結果的に、彼女と出会ってから約半年後、離婚する事になった。







一人の時間が多かったせいで、余計に彼女の事ばかり考えてしまっていた。



勿論結婚相手の事は好きだったし、今でも特別な人だと思っている。






自分の気持ちは押し殺し、僕はこの人のいい旦那で居続けなければいけない。



自分の勝手な理由で、相手や相手の家族、そして自分の家族を悲しませるような事があってはならない。






心の中では他の女性を思いながらいい旦那を演じ、でも最終的には傷付けてしまう事になった。






彼女と会った日は家に帰りたくなくて、一人車の中で夜を過ごした事もあった。




心と頭を別にするのは難しい。


僕は自分で思っている程、器用な人間ではなかった。
いい旦那を演じ切る事は出来なかった。






離婚のキッカケとなったのは、相手に好きな人が出来たからではない。



僕がそのキッカケを作ったにも関わらず、その時はそれを隠し通す事が優しさだと勘違いしていた。





自分に好きな男が出来たから離婚となり、お互いの家族を傷付け、僕も傷付けたと思っていたのだ。




全て背負わせてしまった事に、その時の僕では気付く事は出来なかった。






後に、実は離婚のキッカケを作ったのは僕の方だとカミングアウトする事になった。




何故背負わせてしまった事に気付かなかったんだろう。



別々の人生を選択する事にはなったが、長年一緒に居た。
僕の人生の中でもとても重要で、大事な人だと思っている。



そう思っている相手だからこそ言うべきだと気付くのに、時間がかかってしまった事を申し訳なく思った。







「誰よりも強く、優しい人間になりたい」




カミングアウトするキッカケとなったのは、彼女を変えようとするのではなく、自分が変わらなければ何も変わらない事にようやく気付いた時だった。