日本で「学歴」は意味を持つか

~この十数年で学歴に

イヤな色がついた感じ~

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=321258

 

 

かつては高学歴を獲得すれば、

輝かしい未来が約束されるように思えたかもしれない。

 

「大学全入時代」のいま、

話はそう単純ではない。

 

大学院卒でも希望する職に就けず

不安定な生活を続ける

「高学歴ワーキングプア」の存在も問題になっている。

 

現代における「学歴」の意味と重要性とは。

4人の識者に聞いた。

(ライター・福島奈美子/Yahoo!ニュース編集部)

「YAHOO!ニュース」より転載します。
日本で「学歴」は意味を持つか

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■この十数年で、

学歴にイヤな色がついた感じ


小田嶋 隆・コラムニスト
小田嶋 隆(おだじま・たかし)

1956年東京・赤羽生まれ。コラムニスト。

 

早稲田大学教育学部卒業後、

食品メーカー営業マン、小学校事務員見習い、

ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとして活動。

 

著書に『人はなぜ学歴にこだわるのか。』

『場末の文体論』『小田嶋隆のコラム道』など

(撮影:岡村大輔)



学歴差別とは

「最後にやってきた、

多少ともマシな差別」ではないでしょうか。

 

人間を選別しなければならない場面は、

就職をはじめ、いろいろなところに現れます。

 

そのときに何によって

選別するのかが問題なわけですが、

 

20世紀後半、

総中流社会だった日本が取り入れたのが、

学歴だった。

 

生まれや家柄、経済力、容姿、コネ……

人はいろいろなもので差別されてきて、

 

それは今もあるけれども、

「学歴ならば本人の資質と努力の問題なんだから、

マシな差別じゃないか」と、私たちは考えてきたわけです。

大学の学費が高騰し、加えて、

いい大学に入るための予備校のようなものの

 

存在感が大きくなったおかげで、

いい家の子でないとなかなかいい学校に

行けないようになっちゃった。

 

その結果、学歴が、偏差値の高い・低いじゃなくて、

親から与えられた環境や資産の影響をものすごく

反映するものになったんです。

 

学歴が、今、家柄差別とあまり変わらないものに

着地しつつあるように思います。

たとえば今、東大に進学する高校生のほとんどは、

中高一貫の有名私立校出身者で占められている。

 

私たちの頃は、

いい大学に行けるかどうかの線が引かれるのは、

高校3年、大学受験のときでした。

 

ところが今は、

12歳でもう線が引かれる。

 

公立中学に行くか、

そこそこ意識の高い学校に行くかで、

大きく分かれてしまいます。

 

しかも、それを分けさせているのは

本人の勉強の出来不出来ではなく、

 

親の経済力だったりしますから、

いかんともしがたい。

(図略)


■「育ちのよさ」を示すだけの指標に

さらに今、2020年に向けて、

政府の教育再生実行会議によって

 

「グローバル人材を多く育てる」意図で

大学入試改革が推し進められています。

 

これは大学入学の際に

知識を問う試験だけではなく、

 

面接や小論文などを課すことにより、

多面的な能力を評価するというものです。

 

しかし、「面接で落ち着いて論理的に話せるかどうか」なんてことは

本人の“育ち”、つまり親の教養度やしつけといった環境の影響も大きい。

 

偏差値以外の要素を入試に取り入れることによって、

「いい家の子じゃないといい大学に行けない」風潮は、

むしろ強まっていくんじゃないでしょうか。

私たちが、東大卒の人々に対して

尊敬の念を持ちながらも

コンプレックスを感じなかったのは、

 

「彼らは勉強はできるかもしれないけど、

それだけの話だ」と思っていられたからです。

 

単なる偏差値の高低だったら相対化できるんですが、

偏差値の序列に人間性や育ちの良さや経済力やら

 

社会階層やらが

ひもづいてくるようなことになってしまっては、

逃げ場がなくなってしまう。

私たちの世代でいい大学に進んだ学生は、

「俺たちは偏差値が高い」という自負は

持っていたと思いますが、

 

自分たちをハイ・ソサエティだとは

思っていなかった。

 

けれども、

今の東大生や早稲田・慶応の学生は、

ハイ・ソサエティだと思っているかもしれません。

 

学歴意識が、偏差値意識ではなくて、

そうしたある種の選民意識に

姿を変えつつあるのだとしたら、

 

相当タチが悪くなっていると

言わざるを得ないと思います。

 

 

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