料理の世界に40年携わり、若い頃、師匠から学んだ大切な事の一つが、日常の清掃はご神事そのものであり、料理に宿るエネルギーは全てそこから始まると教わる。


料理人が日々の厨房で行う「洗い」「磨き」「拭く」「掃く」といった清掃や整頓の行為は、単なる衛生管理を超えた深い意味を持っています。それは、ご神事の中で唱えられる「祓い、清め、守り、幸わいたまえ」という言葉と通じるものであり、料理人にとっての「神聖な行い」とも言えます。このような行為は、料理の場である厨房を「火水の聖域」として捉え、そこを神聖な空間に保つための重要な儀式と考えられます。


1. 洗い(祓い)

「洗う」という行為は、汚れや不純物を取り除くことで、厨房の道具や設備を清浄に保つだけでなく、料理を通して関わるすべての人々の心身を清めることを象徴します。これにより、邪気や不浄なものを祓い去り、料理に宿るエネルギーを純粋に保つ役割を果たします。


2. 磨き(清め)

「磨く」という行為には、物を美しくするだけでなく、心を込めて物と向き合う姿勢が求められます。包丁を研いだり、鍋を光らせたりする作業は、物への感謝と敬意を表す行為です。また、それを通じて厨房全体を清めることで、料理を作る空間そのものを整え、気の流れを良くします。


3. 拭く(守り)

「拭く」という行為は、表面の汚れを取り除き、環境を清潔に保つことを意味します。これにより、厨房という空間が常に安心して使える状態を維持することができます。清潔さを守ることは、料理人が料理を作るための基盤であり、料理を提供する相手を守る行為でもあります。


4. 掃く(幸わいたまえ)

「掃く」という行為は、細かなゴミや埃を取り除き、空間全体を整えることで、良い運気を呼び込むことを意味します。床を清潔に保つことは、地に足のついた心構えを象徴し、厨房を調和の取れた空間に変える力を持っています。これにより、料理を通じて幸福や繁栄をもたらす準備が整います。


厨房を「火水の聖域」として捉える意義


厨房は、火と水という相反する要素が共存する場所です。火は命を温め、料理を完成させる力を持ち、水は浄化と生命の源を象徴します。この2つが調和する場を「聖域」として敬意を払い、そこを日々清めて整えることは、料理人の心構えそのものを反映しています。


ご神事としての日常の清掃


料理人が毎日行う掃除や整頓は、単なる作業ではなく、ご神事のような意味を込めた行為です。一つひとつの動作に心を込め、感謝と祈りを持って行うことで、厨房の空間を清らかに保ち、料理を通じて人々に幸せを届ける準備を整えるのです。


このように、「洗い」「磨き」「拭く」「掃く」といった日常的な行動に深い意味を見出すことで、料理人としての使命感や心の在り方を高めることができます。それは単においしい料理を作ることだけでなく、料理を通じて人々に幸福や調和を届けるという崇高な目標に繋がるのです。