メディカルインタビュー002 | soul arrow-projectのブログ

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千葉大学病院 循環器内科の宮山先生のメディカルインタビュー第2回目。
今回は【漁村地域と都市部】についてお話を伺ってまいりました。




【私】住む地域によって平均寿命が異なるというお話を耳にしたのですが?

【宮】そうですね。
アザラシなどの海棲類を主食としていたグリーンランドの先住民族イヌイットは、心筋梗塞による死亡率がデンマークの白人に比べて非常に低いことが、1970年代の疫学調査によって明らかにされました。
デンマーク白人の心筋梗塞は、イヌイットの実に約7倍近くだったそうです。

【私】約7倍も!?
世界的に研究・発表されているのですね。

【宮】実は、最初に触れたイヌイットの研究結果は日本でも実証されていて、まさに私が働いていた勝浦市の研究なのです。
1977年から1980年の漁業地域(勝浦市)および近郊農業地域(柏市)における心筋梗塞と脳卒中の死亡率を比較調査した研究です。その調査によると、やはり、漁業地域である勝浦市の方が、心筋梗塞も脳卒中も少ない傾向にあったのです。

【私】なぜこのような差が生まれるのでしょうか?

【宮】実はイヌイットの方々は、アザラシや魚が主食で、野菜を口にすることが、ほとんどありません。

【私】野菜不足は身体に悪いような気がするのですが?

【宮】一般的なイメージだとそうですよね。
ですが、このような食生活にも関わらず、健康な高齢者が多いのです。

【私】なぜこのような結果が出るのでしょう?

【宮】イヌイットの研究の結果、血液のEPAという物質の濃度が、デンマーク人に比べて35倍も高い事がわかったのです。この事実は瞬く間に広がり、世界中でEPAの研究が始まり、血流を良くする効果やさまざまな効能が発見されたのです。

【私】EPAとはどんな物質なんですか?

【宮】エイコサペンタエン酸と呼ばれる脂肪酸の一種で、身体にある脂肪成分のひとつです。
最近はちまたでも、EPAやDHAといったサプリメントが多く販売されているので、どこかで聞いたことがある方も多いかもしれません。

【私】EPAやDHA、聞いたことあります!
青魚に多く含まれていて身体に良さそうなイメージです。
脂肪酸というのは…?

【宮】脂肪酸には、主に牛や豚から摂る『飽和脂肪酸』と、いわしなどの魚油から摂る『不飽和脂肪酸』の2種類があります。
『飽和脂肪酸』は身体に炎症を惹き起こす脂肪酸といわれており、高血圧症、心筋梗塞や脳卒中の原因になりますが、EPAを含む『不飽和脂肪酸』は、中性脂肪の低下、記憶力の向上やアンチエイジングといったすばらしい効果が報告されています。

【私】『不飽和脂肪酸』、素晴らしいですね!
やはり魚に多く含まれているんですね。

【宮】血液中のEPAの数値は日常診療で簡単に調べることができるのですが、残念ながら、普段の診察で見ていると、最近はその数値が特に若い方で危険域まで低い方を多く見ます。

【私】やはり近年の食事の変化が要因なのでしょうか。

【宮】そうですね。
つまり、日常的に魚を多く摂取する習慣が身につく漁業地域に住むということは、肉食が多くなりがちな都心部に住むよりも、老化がゆっくり進行し、ひいては心筋梗塞や脳梗塞といった病気にかかるリスクも少なくなる可能性があるわけです。
せっかく海の多い日本に住んでいるのですから、若さを保つために、あえて都市部を避けて海の見える地域に住むのもいいのではないでしょうか。

【私】なるほど。
食生活は住環境と密接ですし、新鮮な魚が食べられる海の近くにに住むというのは美容や健康のためにもなる!という考え方も出来ますよね。
今回もありがとうございました!!