みなさんこんにちは

 

今回はガー科の特定外来生物指定に関する会合の議事録を取り扱いたいと思います。
皆様ご存じの通り、昨年ガー科は特定外来生物候補と報知され、多くのアクアリストに衝撃を与えました。ガーはアクアリウム界の大物であり、大変人気のある魚です。さらに特定外来生物の指定はガー科だけではなく、ナイルパーチやヨーロッパオオナマズなどのアクアリウムでお馴染みの魚まで連ねていたため、当時「月刊アクアライフ」では3号続いて特集が組まれました。

 

ここで少し「特定外来生物」についておさらいしましょう。生態系や人身に問題を引き起こす外来生物は「外来生物法」にて、特定外来生物に指定されます。指定された場合、飼育は勿論、繁殖、生きたままの運搬、譲渡など、様々な事柄が規制され、それらを犯せば個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金に課せられる可能性があるのです。

そして見落とされがちですが、現在では多くの方がSNSや投稿サイトを利用しているため、外来生物法を知らなければ、画像や動画から大炎上に発展してしまうかもしれません。アクアリウムを始める方へ必ず伝えるべき情報ではないでしょうか。

また、昨年は特定外来生物に指定されている水草を偽名で販売していた男が逮捕されるといった事件がありました。ベテランも用心しないと火傷を負うかもしれません。

(特定外来生物及び危険外来種一覧を記事最下部に用意しました。御存じない方はぜひご覧ください。)

 

さて、ガー科の特定外来生物指定は多くの愛好家からすれば憂慮すべき事態であり、ガー科の熱心な愛好家からは不満の声が上がっています。ですが、環境省は指定までにパブリックコメント募集や会合にて有識者から見解を聴取しており、様々な情報を収集されていました。恐らくガーの指定は千思万考した後の決断だと思われます。

そこで今回の記事では、昨年行われた「第6回特定外来生物等分類群専門家グループ会合」と「第 10 回特定外来生物等専門家会合」の議事録からガー科に関する箇所を抽出し、規制背景を看取したいと思います。規制派の意見を知ることも有意義でしょう、それでは今回も皆様よろしくお願いします。

※個人的な抜粋となるため、全容を希望される方はこちらからお願いします→https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/attention/lepisosteidae.html

 

 

@議事録抜粋1@

H28.1.29 魚類グループ会合(第6回)
第6回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)議事録(案)
1.日時 平成28年1月29日(金)13:00~15:00
2.場所 一般財団法人 自然環境研究センター 7階 会議室
3.出席者
(座長) 細谷 和海
(委員) 中井 克樹
升間 主計
松田 征也
(環境省) 曽宮外来生物対策室長
 立田外来生物対策室
長補佐
 森川外来生物対策係長
(農林水産省)畠沢大臣官房政策課環境政策室長補佐

 

【事務局 今井】 

最後にガー科になります。ガー科についても被害の事例として、海外の事例とかはないのですけれども、被害というほどではないのですが、国内で定着可能性があるような発見事例があるということがあります。

北米、それから中米ぐらいまでが原産地のものでして、国内に定着できる可能性があるということ、それから、大型になる捕食者であるということから、これらが定着した場合に国内の在来種の食害が心配されるということで、こちらを挙げさせていただいております。

 

【森川係長】
ガー科を特定外来生物に指定し、また、先ほど御説明したパイク科と同様に、こちらについてもガー科の中に属している7種ございますが、それらの間の種間交雑種が今もう既に認められているという状況もございますので、種間の交雑により生じた生物についてもあわせて特定外来生物に指定するということを考えております。

 

【中井委員】 

ガーが今回やっとこういう形になってくるというのは、個人的には非常にうれしいなという部分がありまして、滋賀県としては条例指定種を外さないといけないのは面倒くさいなというのはあるんですけれども、本来は全国に指定が広がっていくのが、特にガーなんていうのは全国的に見つかっているものですから大変大事だと思います。

ここで実際、平成30年ということで、2年後という形でかなり具体的に期限を設けていますけれども、この2年という形で期限を持たせて予告してこのように指定する試みというのはこれまでされていたんでしょうかということと、魚以外でもそのように考えておられるようなものが既にほかの部会も、爬虫類・両生類しかやっていないと思うんですけれども、その中でも同じような取り扱いのものがあるのかどうかとか、あるいは2年間でどういうことを取り組もうとされているのか。2年というのが妥当だということで2年という数字が出ていると思うんですけれども、2年と限った中で何をどうされようとしているのかということで、お考えがあればぜひお伺いしたいと思います。

(※現時点での「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」に指定されている魚類外来種:タイリクバラタナゴ、オオタナゴ、ヨーロッパオオナマズ、ピラニア類、カワマス、カワマス、ブラウントラウト、ガー科全種、オヤニラミ)

 

【森川係長】 

ありがとうございます。最初の御質問ですけれども、今回遅らせて指定するということを、これまでしたことはございません。これまでは会合で検討したら、まとめて指定の手続を速やかに行うということをしております。他の分類群で送らせているかということについては、基本的には今回の候補の中にはございません。ガー科のみをこのような形で他の種類と比べて遅らせるということを考えています。

この2年間という期間ですが、ここについては、これまでも今回のグループ会合までに一部観賞魚関係の業界の方ともお話をさせていただく中で、冒頭の御説明もさせていただきましたとおり、利用者と、あと、流通をさせるためのストック等を踏まえると、今すぐの指定がなかなか難しいと考えています。

かつ、それらを遺棄しないようにする期間を考えると、シーズンを考えたときに1年という期間だと啓発までにもう少し我々の時間がかかるということと、準備をして具体的に実行に移すということまでを考えると2年という期間を考えまして、今回、平成30年4月ごろということを提案させていただきました。

 

【中井委員】 

恐らくガーの場合、餌は生き餌を使うことが多いと思うので、多分生き餌の調達にショップへ行くような飼い主が多いと思うから、販売店ルートでの啓発とか、そういうことも含めて考えておられるということですか。

 

【森川係長】

まさに冒頭にも御説明しましたとおり、その点、お知恵もいただきながら進めてまいりたいと考えているんですが、我々がこれまでも、例えば特定の業界の方々とも協力させていただきながら、我々がつくった普及啓発のための媒体を業界の方々のところで配っていただくということはしてきている部分もあったと思うんですけれど、今回の指定に合わせて、もっとより業界の方々、販売する方々と協力関係をとって御相談しながら普及啓発をしていく。対象をしっかり絞って集中して普及啓発をしていければと思います。

もっとよい知恵とか、どこに相談すればいいとか、こういったところと連携していくことでより啓発ができるといったお知恵があれば、御意見、御指摘いただきたいと思います。

 

【立田室長補佐】 

こういった普及啓発については1週間前に開催した両生類あるいは爬虫類の専門家会合でも出ています。爬虫類は御存じのとおり、動物愛護管理法の関係で対面販売が義務づけられております。両生類と魚類は動物愛護という法律の中では対象にならないので、対面販売を義務づけるということにはなっていません。

魚類の中には長生きするものとかもありますので、それにできるだけ近づけるというか、購入者にも責任を持って売っていただくというところをいかに業界の方々と協力していけるかということは重要です。そういう意味でも、業界の協力を得ながらというためには、時間も必要と思っているところです。

(※現在、動物愛護管理法に該当する「愛玩動物」は主に哺乳類や鳥類、爬虫類を指し、対面販売の義務が生じる。一方、魚類や両生類、昆虫などは対象とならないため通販による生体の売買が可能である。)

 

【細谷座長】 

我々がえいやという形でやれるものもありますけれども、確かにガーというのは魅力的で大型にもなりますし、これを外に出すと大騒ぎになって、あちこちでテレビだとか新聞だとかで、かつてはワニがいるんじゃないかとため池で大騒ぎになったこともございます。

いきなりえいやとすれば、むしろ混乱によって生物多様性を乱しかねないと思うところです。12種について、大体、主立ったところの議論を尽くしたようなのですが。

 

【松田委員】

指定前に放逐される場合というのはかなりあると思うんです。ですから、それをどうするのかということも考えていく必要があるのかと思います。

カメがそうでしたね。ワニガメとかカミツキガメ、指定される前に非常に野外で見つかったということがございますので、そのあたりを注意されたほうがいいのではないかと思います。

 

【細谷座長】

 ほかに、今の対象12種についていかがでしょうか。

 

【中井委員】

 これまた規則で定めていくんでしょうけれども、実際の飼育条件というのをこのあたりに何か、余り敷居が高くならないような配慮というのはあり得るんでしょうか。そうやって規制を緩めることを尋ねるのはどうかと思うが、今後、今回ちょっと違いますけれども、最近巷で話題になっているある種のカメなんかも想定していく中で、やはり飼育されているものについて考える必要がある。

だから、今までよく似た事例があったのは、恐らく特定外来生物ではカミツキガメだけだったと思うんです。あと松田さんが言われたワニガメも特定動物になったためにやはり飼育がかなり厳重に取り扱わないかんということで同じようなことが起こったんでしょうけれども、それとはかなり性質の違うものなので、飼育のための設備をどうしていくかというあたりをどう考えていくのか。

魚はカメほど厳しくはないと思うんですけれども、一般の飼育者ができることで、いい妥協点が見つかるといいなと。要は、これぐらいだったら飼い続けられるなという妥協点だと思うんです。このあたりはまたぜひ。それこそアクアリストの方とか、そちらの情報に詳しい方からも積極的に情報を収集していただいて、いい着陸点を見つけていただきたいと思います。

(※現在、カミツキガメ科は人に危害を加える恐れのある危険な動物として「特定動物」に指定される。ワニガメはカミツキガメ科に分類されるため、飼育する場合は都道府県知事又は政令市の長の許可が必要となる。なお、カミツキガメは「特定外来生物」に指定されており、一般人の飼育は基本的に不可である。)

 

【細谷座長】

どうもありがとうございます。

 

 

@議事録抜粋2@

H28.3.15 特定外来生物等専門家会合(第10回)

第 10 回特定外来生物等専門家会合議事録
1.日時 平成28年3月15日(火)13:30~15:40
2.場所 経済産業省別館 1107号会議室(11F)
3.出席者(敬称略)
(座長) 村上 興正
(委員) 岡 敏弘 

角野 康郎
芝池 博幸 

成島 悦雄
長谷川 雅美 

風呂田 利夫
細谷 和海 

森本 信生
(環境省) 奥主自然環境局長
亀澤大臣官房審議官
奥田自然環境局野生生物課長
曽宮外来生物対策室長
立田外来生物対策室長補佐
森川外来生物対策係長
(農林水産省)畠沢大臣官房政策課環境政策室長補佐
(水産庁) 城崎増殖推進部漁場資源課長補佐

 

【外来生物対策係長】
ガー科に属する種については現在の飼養等の状況から、遺棄のリスクが大きいということを踏まえて、猶予を持たせて業界と協力しながら啓発していくのが現実的な手法であり、今後の魚類の外来種問題の解決にも非常に重要であるということを踏まえて、2年程度の周知期間というものを経た上で指定をするということを考えておるということについても議論させていただいて、それについても了承いただいております。

時々ニュースで出てくることもございますので御存じの方も多いと思いますが、ガー科については7種ございまして、このうちアリゲーターガーが特に有名ですが、日本の各地で遺棄されたと思われる個体が確認されているという状況でございます。野外での越冬も可能という生態を持っておりまして、定着も可能と想定しております。また、数十年にも及ぶ寿命を持っており、全長も1mから2m、大きいものだと3mぐらいになるものもあるといったもので、大型であるということ、また、肉食ということを踏まえて、捕食によって在来の生態系に被害を及ぼすおそれが十分あるということを踏まえて、特定外来生物の指定の候補としております。

観賞魚として、基本的に幼魚が販売されているという状況です。流通量は比較的多いのではないかといったところでございます。ガー科についても、ガー科及び種間の交雑により生じた生物についても、今回の指定の候補として挙げさせていただいております。以上です。

(※野生下と飼育下での成長サイズが異なることに注意していただきたい。)

 

【細谷委員】 
既にお話があったように、ガーについては猶予を設けて、ペット業界と足並みをそろえつつ、協働しつつ遺棄のないように、平成30年の2月ということで、妥当な具体策ではないかと考えるところです。

少し説明を補足させていただくとすると、ガー科であって、なぜ種レベルではないのかということですが、ガーは古代魚で、古生代には海産魚だったのです。化石は博多で出るくらい、かつて日本にもいた古い魚なのです。今のところ全世界に7種類いて、種によって非常に柔軟性に富んでいる。多くは北米原産ですが、例えば今本州で見られるものはスポッテッドガーとアリゲーターガーと呼ばれる種で、十分に耐寒性があります。繁殖は確認されていませんが、サイズの違うものが複数とられているので繁殖をうかがわせるものがあります。

冒頭に課長から今回の方針の説明がありましたが、予防原理という点では当然対象になるべき種類だと思います。一方、残りのキューバンガーであるとかトロピカルガーというのは、やや熱帯性で、よしんばこれが南西諸島に入ればホットスポットの生物多様性の地点に相当な影響を与えると危惧されます。これらがブルーギルのように常温適応したら手遅れになりますので、もう何としても啓発をしつつ進めていくことが妥当と思います。

 

【成島委員】 

では、よろしいですか。このガー科で2年間モラトリアムということですが、その2年間のモラトリアムがあればかなり有効な手が打てるということなのですか。

 

【細谷委員】 

手続上の問題でしょうし、長寿命ですので、おそらくもう飼えないとなると放り出しますが、思い入れがあろうかと思うのですよ。

そうなれば、手続さえすればそれは飼育が可能ですので、明日からだめよと言うよりは、猶予があれば、そのくらいであれば何とか、あのカミツキガメのようなことにはならないのではないかとは思っているところなんですが……。

 

【成島委員】 

それについては環境省も積極的にPRしていくということですか。

 

【外来生物対策係長】 

はい、2年間を提示させていただいたざっとしたスケジュールですが、今回指定に向けて、ガー科以外のその他の種類を指定するための作業をこれからしていくわけですが、その間にガー科については、その2年間は猶予があるということを、しっかりと業界と連携して啓発を進めていくと。

そして業界のほうも既にガー科は今もペット、観賞魚ショップで売られているという状況もありますので、そういうところにしっかりと啓発して、さらに、それはこれからの業界との連携の仕方にもよるかと思うのですが、流通量をどんどん減らしていくということを踏まえると、2年間という期間が必要ではないかと考えておりまして、グループ会合のほうでも御議論いただいて2年間とさせていただきたいと考えております。

【成島委員】

 ありがとうございます。

 

【村上座長】 

その2年間を切ったことによって、その間に、今なら飼えるということで飼育者が増えるという問題は起こらないですか。

 

【成島委員】 

反作用でね、あるかもしれない。

 

【外来生物対策係長】 

当然そういうことも想定はされるのですが、特にガー科については、以前は大きくなるということを余り啓発せずに、業界のほうも販売をする機会が多かったので、今こういった遺棄された個体が見つかっているという状況があり、最近は、特にアリゲーターガーが報道にも出たりするところで、やはり見た目もかなり怖い顔で、余りよい記事として載らないので、業界の方もこのガー科については、大きくなるということを前提にしっかり販売をされるということを踏まえると、しっかりとした施設で、手続もした上で飼っていただく分には、環境省としても、もちろん遺棄されてしまうと問題が起きるのですが、そういったことで、さらに流通量も今後多くならないのではないかということも業界の方と話しているので、そこの点についてはしっかりと、座長から今御指摘いただいたことも踏まえて、当然こちらも考えていたことですが、そういうことが起きないようにしていきたいと思います。

 

【村上座長】

一庫ダムと桂川で60cmぐらいのが泳いでいるのを見ましたが、とにかくすごい、正面を波蹴立てて来ますから、もう目立つんですよね。そして大体そのぐらいの個体が遺棄されるんですよ。もっと大きなサイズものは遺棄しません、こんなサイズまで飼っていないです。50cmぐらいのときにはもう全部遺棄しはるんです。だから、遺棄サイズが決まっているような気がするんです。だから、その辺の個体になったころに問題が起こるのです。

最初は楽しいですよ。どんどん大きくなるし、見ていても楽しいのですが、だからその小さい段階のうちに「大きくなると困るので、何とか考えなさいよ」という話で、やはりこれも何か、彼らに「殺す」と言ってはいけないですから、引き取った後で処分するようなことをやったほうがよいような気がするのですね。あれは、上は、もう甲羅みたいに頑丈ですし、結構難しいですよ。

だから、そういうことも考えたほうがいいと思うのですが、2年程度置くと言うのなら、その間にやるべきことをちゃんとするという、その2年間のスケジュールを立てるべきで、それをしていないと単なる先延ばしになって、その間に逃がしてしまえという人が出てきたら、それはもう目も当てられないですね。飼養許可を取るよりは、外へ出したら終い。2年の間には、放したって別に違反にならないという選択肢をとる人は出てきて当然ですからね。

何か悪いことを言いますが、そういう可能性もあって、やはりその辺のことをちゃんとするにはどうしたらよいかということを、2年間の間にスケジュールは魚類グループで一回考えるべきだと思うのですね。

 

【外来生物対策室長補佐】 

やはり今回重要なのは、ガー以外にもいろいろなリスクがある外来の魚類はたくさんいる中で、その普及啓発がしっかりされないと、結局ほかのものもリスクになってきます。業界とも話しているのですが、当然未然防止で法律の規制をするということもあるものの、最大の未然防止は飼っている人が捨てないということがもっと浸透するということになります。

ガー科の指定についてははおそらく一部の業界は痛みとして感じるということはあると思うのですが、今後そういったことが起きないように今のような話をしていくということが必要なのかなと。この後出てくる植物も、当然そういう話が多くなって、特に植物は見分けもつきにくいという問題があったりして、そこも含めてということなどもあると思うのですが、そこをしっかりやっていけば、今後むしろガーのようなことにならないようにしたいなとは思ってございます。

 

【細谷委員】 

先ほどの爬虫類・両生類のカメの遺棄と同様で、次の植物もそうだと思うのですが、ここを慎重にやらないと、いけないと思います。

自然を身近に体感させるというところで、アクアリウムって非常に重要です。考えようによっては、もう熱帯魚や外来のものを家では飼えないということになる前に、本当に歩調を合わせて啓発していくタイミングではないのかなとは思います。ビフォー・アフターの部分も、また対策を足並みをそろえてやっていくことが必要です。

 

【村上座長】 

ほかにございますか。

 

【角野委員】

 今のことに関連して、こういう観賞魚を販売している業界と連携という話でしたが、その業者にも、こういう話を非常にちゃんと理解する良質な業者とそうでない業者がいると思うんですよ。

もうガーは人気のある種類ですので、この2年間に何をするかということが大切だということはさっき村上さんも言われましたが、安易に飼養許可を出すというようなことは、ちょっと考えてもよいのではないかと。本当に生態系被害というものを考えるのであれば、まあ、強硬なという言い方はちょっとおかしいかもしれませんが、やはり何か効果のある対策を考えておかないと、うまくいかなかったということになりかねないというか。

 

【細谷委員】 

確かに先生方がおっしゃるように、この2年が猶予ではなくて単なる引き延ばしであれば、その分だけ楽しむということにもなりかねません。具体的な細目における規制だとか手続だとか、そういったものをしっかりスケジュールしておく必要はあるようには思いますね。

そして場合によっては、なかなか難しいでしょうけれども、飼い切れなかったようなものの回収のシステムをペットショップ屋さんにお願いするような制度もまた提案できればと思っています。

(※現在、日本観賞魚振興事業協同組合では引き取り制度を導入している。)

 

【岡委員】 

ちょっと質問です。2年間の猶予の間に申請の受け付けはやっていくわけですね。

 

【外来生物対策係長】 

手続ができるのは、今のところの予定は平成30年2月からになります。

 

【村上座長】

 飼養はしていますという話ぐらいはあったほうがよいのですけれどもね。あなたは飼っていますか、飼っていませんかということで、飼っていますという人を調べておくということは1つの手だと思うのですけれどもね。

 

【外来生物対策室長補佐】

 これも、先ほどのハナガメもそうですが、売っている熱帯魚ショップなどと協力して情報提供をしていくことを考えます。特に先ほどのハナガメと違って、動愛法の対象になっていないということもあって、大型化とか、競合とか、あるいは長寿であるとか、いろいろなそういったことも含めて、売るときに伝えていただくとか、そういう協力が必要にもなってくるかと思います。

ガーの場合は、飼養等施設が既に飼っているものと余り大きく違うということはないと思うのですが、適切な飼養施設についてということも含めて普及啓発をしていく必要はあるかなとは思います。

 

【村上座長】 

今後飼う人に対しては、確かにこれは大きくなりますし、危険ですよという話はできますが、既に飼っている人に対してどうするかという、その2つがありますね。そして、今既に飼っている人に対する話が出てきていると思うのです。

だから、その辺のところを少し分けて、やはり戦略が違うと思うので、その辺のことをちょっと考えていただけたらと。これは全部に共通している感じがします。

 

【細谷委員】 

今の岡委員の御質問とも関係があるのですが、ガー科は既にほぼこれで決まっていくと思います。本来だったらこれはほかの11種と一緒に規制しなければいけない段階です。

しかし2年遅れるということなので、それまで状況によってはペットショップ屋さんに購入者リストに記録してもらうとか、そういう作業手順をとれば、単なる引き延ばしではなくて、まさに猶予という感じになるのではないかと思います。業界としてもなかなかやりにくいところがあるでしょうが、たしかカメなどもペットショップ屋でそうしているようですが。

 

【外来生物対策室長補佐】 

カメは、ワニガメとか、動愛法で指定されているようなものは登録が必要になっています。

 

【細谷委員】

 私もカメが好きで、何のカメだったかはちょっと忘れてしまったのですが、買ったときに名前と住所を書かされたことがありました。そうした購入者リストを把握すれば、その後どうなったかトレースできると思いますが、御検討いただければと思います。

 

【外来生物対策室長補佐】

 そうですね、その辺はものによっては、顧客は当然把握されているところも多いとは思いますので、リストという形とか、いろいろな状況はあると思いますが、そういうところも含めて業界とも相談していこうとは思います。

 

【村上座長】

 もう業界との窓口はちゃんとできているのですか。

 

【外来生物対策室長補佐】 

そうですね、観賞魚に関しては、窓口としては日本観賞魚振興事業協同組合というものがございますので、まずはそこと話をしながらと考えています。

グループ会合でも出ましたが、そのほか爬虫類も、魚類もですが、いろいろな雑誌とか、そういったところに広告を出すとかいったことも含めて検討していく必要はあるかと思っております。

(※日本観賞魚新興事業協同組合は、観賞魚及び観賞魚関連用品の販売、並びに、それに関連する業務に携わる事業者が組合員となり観賞魚飼育の振興・普及を目的とする事業に取り組む組合。現代表理事会長は金魚の吉田代表取締役である吉田信行氏)

 

【村上座長】 

自主的に出してくれたらありがたいですが、例えばこういうことを出してくれないかと頼むことも必要ですね。

 

@感想@

皆様いかがでしたでしょうか。 愛玩動物の定義を知らずに発言される方やガー規制に大変お喜びになられている方、ガー飼育者への配慮を案じる方など・・・様々な意見が見られます。

 

さて、内容はガー科の規制理由対策に大別できるでしょう。規制理由としては「定着し繁殖する可能性がある、大型の肉食魚であることから在来魚の脅威になる、遺棄されやすい」など。

事例はない、可能性がある、心配される」といった言葉が見られ具体的なデータに乏しい印象がありますが、遺棄された個体が各地で発見されている以上は、被害の未然防止効果の観点で規制とされるのは致し方ない一面を感じます。しかしながら、多くの愛好家は遺棄せず真面目に飼育されているのです。何故、ガーを遺棄放流する俗物のために、真面目なアクアリストが損をしなければいけないのか、と思わざるを得ません。

また、マスメディアによる恐怖を煽る報道も大きな影響があるでしょう。愛好家からは、「ガーは大人しい魚である」という声も聞こえますが、歯が鋭いため漁業者や子供たちへの咬傷の可能性があります。これは「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」で指定されているピラニアの該当条件です。マスメディアの報道の仕方によっては、ピラニアの特定外来生物指定へ繋がる危険性があるのではないでしょうか。

 

対策としては「2年間の猶予、業界と連携して啓発を進める、購入者リストの記録」といった言葉が見られます。2年間の猶予を単なる引き延ばしにするのではなく、啓発活動を進める期限とするのが重要と述べられています。遺棄を回避する具体策として「普及啓発のための媒体を業界の方々に配布してもらう、雑誌に広告を出す、」が見られます。さて、環境省の啓発活動はどれほどの効果を期待していいものなのでしょう。一例として下の図をご覧ください。

 

 

これは、「環境省:外来種問題認知度調査業務資料」を参考に作成したグラフです。驚くべきは外来生物法を「知っている」方が圧倒的に少ないということです。環境省としても普及啓発活動を行っているはずですが、この結果はどういうことなのでしょう。

環境省HPでは様々な啓発用パンフレットを見かけますが、私はそれら媒体を手に触れたことがありませんし、生放送で視聴者の方に伺っても、手に取ったという方をあまり見かけません。一部、ハナガメの飼育申請に関するパンフレットやポスターをショップで見かけたという方がいますが、私が聞いた限りでは、そういったショップは少数です。環境省と業界は連携がとれているのでしょうか。

現在、長く続くデフレ不況で日本の経済的背景は大変暗いものがあります。ペット業界紙でもアクアリウム業界に関して暗い状況が読み取れました。以前よりブログで記事にしていますが、かつてのアクアリウムブームを見るとブームの社会背景には経済成長または安定という傾向が読みとれます。さらには、東北と熊本の大震災が発生し、今後も日本の自然災害危機が警告されています。

パンフレットを刷って配布する予算が足りない」「普及啓発活動は儲けにならない」と言われてしまえばそれまでですが、これ以上規制をされては日本アクアリウムの行く末は悲惨なことになるでしょう。モラルのない店を許してきた愛好家にも当然責任があります、ここは愛好家も普及啓発活動に少しでも貢献すべきではないでしょうか。次の世代のアクアリストがあまりにも気の毒です。

 

また、「南西諸島・琉球列島で定着の可能性がある」を根拠に挙げられてしまっては、殆どの熱帯魚が該当してしまいます。日本は南北に長い国であるため、そういった点も何か配慮が欲しいところです。

 

皆で考えれば、マイクロチップの埋め込みや資格制度など、色々なアイデアが見つかるはずです。愛好家としては、このような特定外来生物指定の一歩手前の規制などを設けていただくことを切望します。

 

中央環境審議会野生生物部会 第5回移入種対策小委員会 議事次第・資料より

 

 

欧州では各国で総合サイトがあり、情報提供やフォーラム、書籍発行をしております。また、政治家とのパイプもあり、規制に関する情報発信や指針も提示しています。さらには、下の図をご覧いただきたいのですが、これら各国の総合サイトをまとめる総合サイト(EATA - European Aquarium Terrarium Association)があります。こういった場所で情報を収集するのは、とても効率的に思えます。

一方、日本にはこういった総合サイトはあるのでしょうか。日本のアクアリウム界では各ジャンルに細分化されており情報収集はバラバラであり、雑誌書籍の役割が強いと指摘されます。窓口とされる日本観賞魚振興事業協同組合のHPには、どれほど規制に関する情報が啓発されているのでしょうか。イギリスの観賞魚貿易協会(OATA - Ornamental Aquatic Trade Association)のHPではファインディングドリーの上映にあたり、安易な海水魚飼育に警鐘を鳴らしている他、規制や危険器具に関する情報も記載しています。

 

 

果たして、ガー科規制問題はどのような結果を残すのでしょうか。私が危惧していることは、啓発活動の不足は勿論ですが、申請時の適正飼養水槽の目安です。ガーの大きさを1メートルから2メートルと説明されていましたが、野生下と飼育下でのサイズが異なるという点が欠落していた場合どのような基準になるのでしょう。また、飼育者は魚の成長とともに水槽をランクアップさせていくという事実をどこまで把握されているのでしょう。私はパブリックコメントを送っていますが心配になります。

 

@おわりに@

昨年の特定外来生物への指定は、生物多様性を守るための2020年目標である愛知目標に基づいた決定です。(愛知目標は、2011年以降の新たな世界目標となります。)ちなみにですが、生物多様性を大まかに説明すると「生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性という3つのレベルで、生き物たちの豊かな個性とつながりを守る」ことです。この多様性を守ることは、人類の生存を支え、人類に様々な恵みをもたらすものとされ、世界全体で問題に取り組む必要がある事から、1992年5月に「生物多様性条約」がつくられました。

ですが、アクアリウムを含め海外の生き物を繁殖可能な状態で飼育する趣味の定義を、単なる生き物を飼育するだけの趣味であるとするならば、生物多様性との相性は最悪となります。以前よりも増して、ペット関連の趣味は、自然への貢献という視点なしには語れなくなるでしょう。

 

付録として、魚・水草に関する要注意外来生物の一覧を自作資料よりアップします。
参考までにどうぞ。

 

 

ご意見、ご感想は放送又は掲示板でお願い致します。
ツイッター:http://twitter.com/soukundesuyo
ツイキャス:http://twitcasting.tv/soukundesuyo/broadcaster

Youtube :https://www.youtube.com/channel/UCzYdj5RfC1-lEwW1a07xzIA

参考:環境省HP、滋賀県HP、日本観賞魚振興事業協同組合HP、EATA - European Aquarium Terrarium Association、OATA - Ornamental Aquatic Trade Association、月刊アクアライフ、生物多様性 - 「私」から考える進化・遺伝・生態系 (中公新書)本川達雄著、異端の植物「水草」を科学する (BERET SCIENCE) |田中 法生著、他