時代の流れとアクアリウム
生物多様性、自然保護を国際的に目指すのが世の流れでしょう。もちろん、人間の黒い思惑がありますので、諸手を挙げて「善いことである」とは言えません。ですが、それで救われる種も存在するのでしょうから、以前よりも「善い方向」であると信じたいところです。

さて、この流れが善しと謳われる時代におきまして、外来生物を飼育する趣味である「アクアリウム」は、とても危ういものを感じます。この趣味は明らかに、自国の生態系に悪影響を及ぼす可能性があるのです。自国に多くの外来魚を繁殖が可能な状態で招いているのですから、当然でしょう。放流すれば、次のブラックバス問題を引き起こすことができます。
ですから環境省は、幾つかの種を特定外来生物へ指定したのです。厳しい言い方をしますと、飼育目的だけのアクアリウムは、そういった視点ですと「有害な趣味」です。
(※細かくは国内外来魚問題等も含む)

アクアリウムという趣味に、知的好奇心を満たしたり、精神的安定といった人間へのプラス効果があるのは事実です。アクアリウムは人に善い影響があります。しかしながら、人へのそういった効果が期待できるものは、何もアクアリウムだけではありません。
そうであれば、自国の自然環境に悪影響を及ぼしかねない趣味である、アクアリウムの存在意義が問われてきそうです。これは国内種も同様です。

私は以前より、アクアリウムの大義を、その必要性を主張していました。それは、自然保護と動物愛護の観点から、この趣味の将来に危うさを感じていたためです。今年、ガーやナイルパーチといったアクアリストに馴染みのある魚が規制されますが、今後様々な規制が待ち受けているかもしれません。

アクアリウムの大義は人だけではなく、生物多様性、自然保護といった観点にも良点が見られることです。魚や水草を育成することで、自然への関心が高まり、生物多様性や自然保護といった行動へ繋がることも可能でありましょう。飼育をして得られる感覚は、水族館や採集といった体験と、また別のものです。
先程の「有害な趣味」とは何であったのかと思われるかもしれませんが、それは「愛玩と観賞」だけをアクアリウムの存在意義にした場合の話しです。

日本アクアリウム界で有名な、天野氏、松坂氏、東氏は、そういった視点を持ち行動した方々であると思います。天野氏はネイチャーアクアリウムやカメラを通じて自然保護を訴えていました。毀誉褒貶ありますが、松坂氏もアマゾンの自然保護に関する募金活動をされています。また、東氏は種の保存といった観点からも熱帯魚のブリードをされているそうす。これからの時代、こういった視点がアクアリウムに求められるのだと思います。

個人的には、彼らと同じ行動をしなければならないとは考えていません。私を含め、一般人にはとても真似のできるスケールではありません。ですので、こういった考えや放流の危険性などをブログや動画にして発信するのもいいですし、お友達に教えてあげたり、ゴミ拾いをしてもいいでしょう。飼育魚とのコミュニケーションを活動のモチベーションにしたり、アクアリウムの経験で得た知識を活かすのも素晴らしいことだと思います。
まずは、アクアリスト一人一人が自分のできる範囲で考え、アクアリウム界に、こういった意識を広めることが必要ではないでしょうか。そして多くの方々に、アクアリウムの美点を認知してもらえれば、アクアリウムの将来はきっと明るいものとなるはずです。

外来生物法とアクアリストの意識

数ヶ月前、特定外来生物であるウォーターレタスを販売していた男が、外来生物法に違反したとして逮捕されました。異なる名前で販売していたそうなので、知らずに購入された方もいるでしょう。
特定外来生物というと動物を思い浮かべる方が多いと思われますが、植物(水草)も幾つか含まれるのです。ネットの利用者であればコミュニティサイトを利用されているでしょうから、知らずに画像投稿すれば大変なことになります。つまり、レイアウトをメインに楽しまれているアクアリストにも関係のある話なのです。

外来生物法についての簡単な説明は、放送や動画などを通じて発信してきました。その経験から得たことは、「外来生物法」について把握されている方があまりにも少数であるという事です。私自身も100%理解しているわけではありませんが、ご存じない方があまりにも多い。


環境省やアクア業界による広報活動が足りていないのは間違いないでしょう。現在は不景気なので尚更です。ならば、我々アマチュアも何かしなければいけません。お友達に説明するだけでも一歩になるのです。知らずに違反するといった方々を減らすべきであると思います。

こういった認知活動は重要です。ガーの特定外来生物への指定があれほど騒がれたのですが、環境省にパブリックコメントを送ったアクアリストは少数であったことが判明しました。そもそも、パブコメ募集をご存じなかったという方が多かったのも事実です。
しかしながら、認知活動の必要性に気づいたアクアリストが多ければ、その結果は変わっていたのではないでしょうか。少なくとも、パブコメ数は現状より増えたことでしょう。

パブコメの送信に懐疑的な方もいます。その気持ちはわかりますが、何も行動しないよりかは可能性があると考えます。それに、何もしないで不平不満を垂れ流すよりは健全ではないでしょうか。
未来のアクアリストは、魅力的な魚や植物が規制されてからアクアリウムが始まります。悲しい思いをするのは、まだ行動のできる私たちより彼らでしょう。自然保護や外来生物法などの認知活動・啓蒙活動が私たちのためになるだけではなく、彼らのためにもなるのです。アクアリウムの多様性を守ることは、次の世代のアクアリストへの責任ではないかと思います。

終わり
日本とヨーロッパのアクアリウムを比べると情報伝達に問題を感じます。ヨーロッパの愛好家はアクアリウムを全体的に扱う、各国の有名な総合サイトで情報収集をするそうです。覗いてみると、観賞魚の規制についてでしたり注意点といった情報が記載されていました。
日本ではジャンルが細分化されているため、そういった総合サイトが少なく、観賞魚雑誌の存在が大きいといった指摘があります。こういった点に、認知活動の難しさがあるのかもしれません。


この記事は未来のアクアリウムが、今よりも暗いものとなってしまった場合の弁明となります。この時代に、未来を少しでも明るいものにしたいと願ったアクアリストとそれを支持したアクアリストが存在したことを証明する、未来のアクアリストへ向けた弁明なのです。