庭先に見事な菊炭を干しておられるお家がありました。きっと此所の主は茶道を嗜(たしな)んでおられるのでしょう。


 この近くは池田炭の産地です。茶人は炭の切り口が菊の花のような炭を珍重してきました。


 11月は「口切りの茶事」といって、茶道を嗜む人達にとってのお正月。炉に埋(い)ける炭にまで心を使うのが茶道なのだと教えられます。

 菊炭 菊炭


この季節、茶道には縁遠い私も葉茶屋さんで蔵出しの葉茶を買います。倉で夏を越して、充分枯れた御茶は1年の内で一番美味です。この季節は自然に緑茶に手が言ってしまいます。そして、知らず知らずに普段より心を込めて御茶を入れ味わっています。


 御茶の”ボジョレヌーボー”私のネーミングです。残念ながら、倉出しの御茶を売っているのは極限られたお店ですが。新茶とは違う深い味がします。


小さなショッピングモールでも菊花展を催していました。この季節の必需品?かしら。


 道ばたには小菊が咲いています。


 菊の花の御茶を友人が中国土産にくれました。目によいと言うことです。ということは、肝臓にも良い御茶と言うことだと思います。


 菊の花を酒に浮かべて飲む、菊酒。肝臓にダメージを与えることが少ないと言います。菊の薬効です。


 東北からの生の菊の花が青果店に並んでいます。天ぷらに、酢の物にしてみると、季節感が食卓にぐーんと増します。「もってのほか」なんて楽しい名前が付いています。


 11月は口切(くちき)りと、お茶のお正月ということです。

五月、お茶の新芽だけを摘んで蒸し、充分に乾燥させた新茶は、葉脈を取りのぞいて茶壺に詰められ、密封した後、通気のよい所に置かれます。
こうして暑い土用を越して十一月にもなると、お茶が互いに醸成されて味がよくなり、そして、封を切られ、茶曰にかけられます。

 ひと足早いお茶のお正月です。
口切りの茶事の献立は、お正月の料理と同じように、はなやいだ気分、おめでたい気持ちを盛り上げます。鯛、伊勢海老とおめでたいものを使い、また、お祝いごとには、何か一つ結んだものを添えます。

 辻義一著 茶懐石 淡交社より

                               菊