シリーズのさいごは
どこまで医療を介入させるか
です。
(今回は医療行為についてですので、介護の話は入ってきません)
病気の種類や診断時期で、かなり変わってくることなので一般的なお話になってしまいますが、大切なことですので触れておきます
結論から言うと
ある程度の医療行為をしている方が病気とつきあいやすく、自然(に見える)さいごをむかえられるという実感があります。
痛みやダルさ、気持ち悪さなどを軽減させるのはもちろんのこと、病気は体力を消耗しますのでそこを少しフォローしてあげると、ぐっと病気とお付き合いしやすくなります
ただ医療行為の量が多すぎると、犬猫自身にも飼い主さまにも負担になります
勇気を持って治療をミニマムにするのですが、ここは獣医師のさじ加減ですよね
わたしたち獣医師がよくお話を聞いて、考えていかねばなりません
信頼できるホームドクターさんに気持ちを伝え、よく聞いてもらいましょう
緩和ケアの目的は
健康時間を満喫できること
犬猫自身にさいごを選んでもらうこと
このために医療をほどよく介入させていきます
では医療行為について、以下の順でもう少し詳しくお話ししていきます
必要なのは延命ではなくて緩和
どの時期から緩和治療するのか
何もしない、はアリかナシか
安楽死は必要か
必要なのは延命ではなくて緩和
延命というと、辛い時間を引き延ばすイメージがあると思います。
ここでの治療は『そのコらしく病気とつきあっていけること』を目指しています。
上述したように、痛みやダルさ気持ち悪さなどを軽減させ、病気で消耗した体力をフォローし、病気とお付き合いしやすくすることが目的です。
結果としてほんの少し寿命が変わることはあるかもしれませんが、決して無理な延命ではありません。
病気は徐々に進みますから、医療行為をしたからといって眼に見えて何かがよくなるというわけではないこともあります。
ただこの医療フォローが入ることで、『自然に身体がよわっていく』状況を作り、
多くのケースで直前まで自分で排泄し食事をするなど、そのコらしい日常生活を送れています
いつからいつまで治療するのか
これはケースバイケースです。
病気の種類、性格、生活環境、通院の大変さ、などで変わってきます。
健康時間を満喫するために、あえて初期は何もしないこともありますし、
苦しい時間を作らないために、先制して治療を行うこともあります
もちろん治療はなるべくミニマムに。
犬や猫にも、人にも負担にならないように治療プランを組み立てます。
通院が多くなりすぎないようにすることもポイントです。
調子がいい時は、積極的に通院間隔を広げます。
健康時間を通院よりも、お出かけなどに使ってほしいからです
病気が進行してからは、よく状態をみて決めていきます。
空の木では、どんなに『医療行為』として正しくても、犬猫や家族の『心の負担』になる治療は避けていきます。
『治すことが目的』であれば、多少のがんばりも必要ですが、
緩和ケアではその必要はありません
病気が進んで具合が悪くなっていくのは自然なことですが、『心』の具合を悪くしてしまう医療行為では意味がないからです
旅立ちが迫ってきた場合には、医療行為をスパっとやめることもあります。
自分で『その時』を選べるようにするためです。
もちろん続けた方がいい状態のこともあり、そこは空の木とご家族でコミュニケーションをとりながら、『なにがいちばんこのコにいいか』をそれぞれに考えるようにしています
何もしない、はアリかナシか
さまざまな理由から『何もしない』こともありますが、
前述したように、何かしらすることで旅立ち直前まで日常生活を送れたり、病気とうまくお付き合いしていけることが多いです。
もちろん、どんなに『医療行為』として正しくても、犬猫や家族の『心の負担』になる治療は選ばないようにしています。
安楽死は必要か
安楽死は苦痛が取り除けない場合の、最後の治療法という位置付けです。
治らない病気だからといって、しなくてはいけないということはありません。
経験上、医療を前もって程よく介入させていた場合、安楽死が適応となることはかなり少なく、
ほとんどのコが、病気と上手にお付き合いし自分で旅立ちを決めています。
「安楽死はしたくない」
「安楽死をいつ選んだらいいかわからない」
とご相談されるケースは多いです。
でも、だいじょうぶですよ。
本当に必要な時は、犬や猫たちはちゃんとサインをくれます
安楽死というのは特別なことではなく、緩和ケアをしてきた流れの中にあるものです。
それでも悩んだら、私たちに聞いてください
これで、空の木が考えるエンドプランのお話はおしまいです
書ききれない思いはたくさんあるのですが…
次回、ちょこっとあとがき的なものを書いて、このシリーズのさいごといたします