読み終えて、まだどっぷりと「悪人」の世界にはまっている最中。
電車の中でページをめくっていて、何度涙がこみ上げてきて困ったことか・・・。
最初のうちは祐一が妻夫木君だったり、光代が深津ちゃんだったりしてたけど、読み進めていくうちに、祐一も光代も、おそらく同級生で同じクラスにいても目立たないような、どこにでもいそうなひっそりとした人たちに変わっていった。
祐一の孤独も光代の寂しさも、読んでいてとっても痛い。
すっかり感情移入してしまって、二人の恋を成就させてあげたかった。
殺人事件だし、出会い系サイトだし、殺人者との逃亡だし、題材的にはセンセーショナル。
でも、出てくる人たち、一人ひとりが丁寧に書かれて、この小説を厚みのあるものにしている。
特に祐一のおばあちゃんや、佳乃のお父さんや、一見かっこ悪く見える人たちが、暖かい視点で書かれていて、それがとても好感が持てる。
みじめに見えても、ダサくても、たとえ相手がどんな人間でも、周りが何と言おうとも、愛して守ろうとする人は強い。
そして、人は誰かの悪を暴くことで、自分の中の悪と対峙せずに済んでいるのかもしれない。
福岡や長崎や、知っている場所がたくさん出てくるし、せりふが方言なのも、読んでいて親近感がわく。
束芋さんの挿絵で読みたかった・・・。
映画ではどんなふうに描かれているのか、これから楽しみ。
悪人:吉田修一
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