秋の蚊 | soraharuruの まにまに 雑記帳

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日々のまにまに。空のまにまに。雨のまにまに。
だれかを想うまにまに …


いろんな隨に ふとした間に間に …
きらきらひかる摩仁たちを 思いつくまま綴っています














夜更け


テーブルの上に置いた
一本の熟したバナナに
蚊が纏わりつくように
飛んでいた



たぶん
一昨日見かけて見失った
あの蚊だと思った



滴る果汁もない
血も通わないバナナの周りを
香りにひかれて
執拗に飛ぶその姿を見て
何とも云えず哀れな気がしたけれど



やっぱり …
血は吸わせてあげなかった








秋の蚊は
明らかに夏よりも殺気立っていて
けれど気温の低下に従って
動きは鈍くなってゆく

この頃は10℃前後の朝夕もある
彼らの活動にはもう適さないだろう



それでも命を次に繋ぐため
何とか血を得ようと
真っ正面から果敢に挑んでくる
その姿の壮絶さと悲壮さに
毎年 思わず心打たれてしまうけれど


そう思いながら
血を吸わせてはあげない

いつも








それどころか
力をかぎりに掌を振り下ろす


いつものゆっくりとした
動きが嘘のように

素早く
躊躇なく
紛うことなき殺意を持って






ひどいな  と思う



そして
わたしは必ずそれをする











秋の蚊は
やり切れない


忸怩たる思いを
わたしに抱かせる







夏の攻防は
こんなにわたしを苦しめない

そこには対等で真っ当な
真剣勝負があると思っている




秋の蚊がわたしを寂しくさせるのは
燃え尽きそうな命の灯火を
真っ正面に掲げて迫って来るからだ


その真っすぐな命を前に
じぶんがとても卑劣で
非道な存在に思えるからだ



それはただの投影に過ぎなくて
夏の蚊も秋の蚊も変わらぬ命だと
わかってはいるけれど










ぱちん と鳴らした掌の
じんじんとした疼きが
胸にうつる


小さく
ごめんね と 呟く





… 蚊の鳴くような声


ふとそう思って
泣きたくなる



もちろん泣かない







… 


 ひどい女












結局は
ただの感傷だ



本当は何もかも
秋の所為かもしれない

夏が行ってしまったから







秋の蚊は哀しい










































  ゚・*:.。..。.:*・゚゚  忘れてないよ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・