『ええパンです…』

戦時中の空襲にも、

大震災にも耐え抜いた奇跡のレンガ窯の前に立ち、

焼き上がった食パンを、

愛おしむように、

厳しくもやさしい眼差しが包み込んでいく…

それは、88歳の熟練のパン職人の日常の一コマに過ぎないかもしれない…

しかし、その食パン一つ一つに向けられた熱い魂の物語は、

おおよそ50年以上もの長きに渡り、神戸の地で紡がれてきた…

パン生地が発酵する際に発する繊細な声に耳を澄まし、

職人としての感覚のすべてを纏ったようなその素手で、

生地を慈しむように、

そして、丹念に捏ねていく…

シンプルな材料による、

手作りで、

丁寧な、

最後まで妥協することなく作り上げる珠玉の一品一品は、

パン職人の魂の灯火とともに、

今も確かなものとして、

パンを待つ人々の心に寄り添うように届けられる…