アパートにつくと、カズがいた。
「大丈夫だったか?とりあえず、懐中電灯と電池これしか買えなかった」
寒い中、薄暗い中、立っている彼を見て、とりあえずほっとするとともに、
泣きたいような気持にかられた。
お母さん。
会いたい。
家の中は、そこまでひどくないようだった。
棚の中のものは落ちたけど、大きく壊れたり落ちたりしたものはなかった。
電気はない、ガスもない。
唯一、断水だけはしていないみたいだった。
でも、この水もいつ止まるかわからない。
タンクにたまっているのが無くなったら終わりかもしれない。
「私は何か食べ物買って帰ろうかと思ってたけどすごく混んでてダメだった」
「どうする?とりあえず俺も食べ物はないし、コンビニ行ってみる?」
近くのサンクスまで行ったけど、
「営業は終了させていただきます」
って張り紙が貼ってあった。
外の公衆電話には2、3人の人が並んでいた。
こんなとこに、公衆電話、あったんだ。
私の携帯は、気づいたら電池が切れてしまっていた。
列に並びながら、職場で書いたメモを財布から取り出す。
目を凝らしても手元のメモが見えないくらい、あたりは暗くなっていた。
なんとか手に入れたと言っていた小さな携帯懐中電灯で、カズが私の
手元を照らす。
沙智、真鈴、お母さん、お父さん。
誰にも電話はつながらない。
入れては戻り、入れては戻ってくる10円玉。
並んでいる人のことをお互いに気遣いあって、一人がかけるのはだいたい
3回程度。
数回チャレンジしてダメなら次の人に譲り、また列の後ろに並ぶ。
そんなことを繰り返しながら、誰もが、繋がらないとわかっていても、
祈るようにかけ続けていた。
