【「可愛げ」最強説 】
お出かけの日で

わたしはいつもよりキレイめに装い
鏡のまえでおまじないをして
出かけてきた日のことだった
我ながらなかなか上出来だった

駅の前に着いた頃
私の横をヒラヒラの襟と袖と
ふわふわのスカートで
頭にキラキラの飾りを乗せ
鞄にキャラクターもののヌイグルミをつけて
転んだら死んじゃうんじゃないかと
思うくらいの厚底の靴をはいた女の子が
私の横を走り抜けていった
ああ
不思議な生き物だなあ
女子としてはイタイよね
なんて馬鹿にしてた
↑女の子発見からここまで0.5秒
女子センサーは無意識に一瞬で情報を拾う
そして残酷である

突然
女の子の鞄からヌイグルミが落ちた
私の良い子センサーは
これもまた瞬時に反応して
そのヌイグルミを拾った

しかし走っている女の子に追いつくには
その日の私のヒールは高すぎた

ヌイグルミ片手に
女の子の背中を
どうしようって思って見ていると
ヌイグルミ脱落に気づいた女の子が
くるりと振り返って
走って戻ってきて
私の前に足を揃えて立ち
両手でヌイグルミを受け取って
ありがとうございます

といって
ちょっと恥ずかしそうに
にっこりしたのです

負けた

って思いました

果たして
私は落としものを拾ってくれた人に
全力の感謝を伝えたことがあったか
しかも
相手の心を揺さぶるほどの
笑顔つきで

女の子は別にお顔の作りとしては
普通だったのに
私も別にノーマルなんだけど
それでも
キュンとしてしまった

つまりですよ

可愛げを極めた方が
お化粧やダイエットをして
見た目の美を極めるよりも
破壊力あるっていうことなんです

駅は
人が行き交う場所
人を次の場所へ連れて行く場所
これは
メッセージだと
重く受け止めて
私
水上宙は
今後
可愛げを極めることを
ここに誓います
