【ひとは単体では存在しない】
だれも知らない無人島に
だれも知らないAさんが住んでいました
そのAさんは存在していると言えるのでしょうか
私はAさんは存在してないのと同じだと思う
追加情報として
その昔には
そのだれも知らない無人島には
だれも知らないAさんの家族がありました
けれど
家族は皆、もうこの世にはありません
こうなると話は変わります
Aさんを知っていた人がいた
Aさんの思い出の中には
Aさん以外の人がいる
Aさんは突然1人ではなくなりました
Aさんの存在を承認する他者によって
Aさんが存在を承認する他者によって
はじめから1人なら
Aさんは
寂しさを知る事もなかったでしょう
それでも
記憶というか
思い出というか
それを共有する人がいるという事は
幸運な事です
その思い出によって
Aさんには悲しい時間があるとしても
Aさんが存在することを
証明してくれる
ひとは自分の存在を
完全に自分ひとりでは
証明できないのではないか
ひとが存在するには
他者が必要で
不可欠で
他者との記憶があることで
悲しさや
寂しさを
避けることができなくなるけれど
それでも
他者との思い出を持てるという幸福は
ひとの存在を優しく肯定してくれると
思っている
水上 宙