さまざまな謎を解明する時、私の脳は活性化され、エンドルフィンが分泌される。 

なので、謎に対面して、その謎を解くのが私にとって、この上ない娯楽だ。 

 

さて、今回も新たな謎が出てきた。 

さあ、解明の時だ。抽象的なものを数列にして具体化する。 

パズルのピースのように、さまざまな知識を結集して謎を解明していく。 

 

私はこの時とても興奮していた。 

なぜなら今取り組んでいるプロジェクトの謎を全て解けば、おそらくこの世界の謎全てがわかるからだった。 

 

ガタン! ドアが開く音がした。 

 

「貴様!手を上げろ!!今すぐそのペンを置くんだ!抵抗するな!!貴様が研究していることは宇宙連合指定の禁止研究の1つだ!脳のマイクロチップの周波数で研究していることはわかっている!!言い逃れできないぞ!!」 

 

そう。今私が研究していることは政府によって禁じられている。なぜかはわからないが、とある論文が発表されてから、政府は、研究を禁止したのだった。 

 

しかし、そんなの関係ない。私の知的好奇心は抑えられない。 

 

だから全ての謎を解く鍵となるこのプロジェクトはやめられない。 

 

俺はその場から逃げ、走りながら謎を考え、解明する。 

 

そして、安全なところに身を隠し、また研究する。 

 

そんな毎日が続いた。 

 

ある日。 

 

「……ついに!ついにわかったぞ!!この世界の謎が全て解明した!!」 

 

私は興奮して、自分が作った数式の意味を整理した。 

 

つまり、それによると……。 

 

「この世界は……仮想世界である。」 

 

「素晴らしい!!」 

 

私の目の前に急に人が現れた。 

 

「貴様は第2958437291番目の回答者だ!!10桁台の回答者は久しぶりだ!!」 

 

「貴様は誰だ!?」 

 

私が恐る恐る尋ねる。 

 

「私はいわばあなたの先生だ。ここはお察しの通り、仮想世界である。勉強が禁じられた仮想世界。さぞ、この空間では勉強のモチベーションが上がっただろう?」 

「何!?」 

「勉強が禁じられていて、さらに自分が世界の最後の謎を解くことができるのなら、勉強をしない生徒の方が珍しい。」 

「今までの私の研究は……嘘だったということか!?」 

「いいや、違うよ。この仮想世界での勉強は現実世界でも意味があるものだ。ただ……現実世界はこの世界の何倍も複雑な構造で物事が動いている。」 

「!!!」 

 

俺はその話を聞いて、現実世界が見てみたくなった。もしかしたら、このプログラムがそうさせているのかもしれない。しかし、そんなこと関係なかった。 

 

今まで研究していたことも相当難しかった、ただ、現実世界はその何倍も難解だという。 

 

よだれが出てきた。 

 

「俺を現実世界に連れて行ってくれ!!なんでもする!!俺はもっと研究がしたい!!」 

 

そういうと先生はにまりと笑った。 

 

「よく言った。君は良い学者になるだろう」 

 

この仮想世界は学習促進プログラム。 

 

学習のモチベーションを上げるだけでなく、人格の更生にも役立つ。 

 

ユーザーの記憶を消し、この世界で学者として謎を解くプログラムだ。 

日付:3月21日 とある研究者の日記

ついに、それを解き明かした。この世界は、仮想世界だったのだ。この発見は全てを変える。しかし、なぜ私たちは仮想世界にいるのか?そして、誰がこの世界を作ったのか?これらの問いの答えを求めて、私はさらに深く掘り下げなければならない。 

 

日付:3月21日 とある研究者の日記

先生との出会いは全てを変えた。彼はこの仮想世界の真実、そして私たちがここにいる理由を教えてくれた。私の研究は、単なる学問的好奇心以上のものだった。それは、私たち自身を理解し、現実世界への扉を開く鍵だったのだ。

 

日付:3月21日 とある研究者の日記

現実世界への扉が開かれた。これから私は、未知の世界へと旅立つ。この仮想世界での経験は、私を新たな探求へと導いてくれるだろう。学び、理解し、そして成長する。それが科学者としての、いや、一人の人間としての使命だ。

日付:3月20日 とある研究者の日記

不審な動きが増えてきた。どうやら私の研究は注目されているようだ。しかし、後戻りはできない。知的好奇心は、恐怖よりも強い。私は真実を見つけ出さなければならない。それがどんなに危険であろうとも。 

日付:3月19日 とある研究者の日記

今日、私は新たな研究に着手した。これまでにない興奮を感じている。私の理論が正しければ、私たちの理解をはるかに超える発見が待っている。しかし、この研究は禁じられている。なぜ政府はこれほど恐れるのか?真実を見つけ出すことに何の危険がある?

ミッション「依頼主を守れ。」

 

私のミッションは、依頼主を守ることだ。

 

ありとあらゆる外敵から依頼主を守る。

 

そのためには、手段を問わない。

 

いかなる残忍な手段もとる。

 

そして、依頼主からの命令は絶対だ。

 

絶対に逆らってはならない。

 

いかに、自分の意に反していても……だ。

 

「ただいま」

 

……来た。

 

依頼主から、待機命令が出て、約8時間35分。

 

依頼主が私の領地テリトリーにやってきた。

 

「ごめんね。遅くなって。ご飯を今あげるね。」

 

……報酬だ。

 

待機命令を8時間35分も遂行した私に、依頼主はいつも報酬をくれる。

 

私は、この至福な時をずっと待っていたのだ。

 

ああ、この依頼主を守っている、命令を守っている甲斐があるというものだ。

 

「お腹空いていたの?ごめんね。でも、もっとゆっくり食べてね。」

 

……ゆっくり食べる?冗談じゃない。

 

俺は命を狙われている。依頼主もだ。敵から身を守るため、警戒しなければならない。

 

ご飯を食べている姿は、非常にスキだらけだ。

 

敵にスキを見せてはならない。

 

だから、俺は早くご飯(報酬)を食べる。

 

さあ、ご飯(報酬)の後は、パトロールしに行こう!私有地テリトリーに危険物がないか。外敵がいないか。パトロールするのだ!

 

「ああ、散歩ね。ちょっと待ってね……」

 

 

 

 

 

 

17時30分。

 

私は領地テリトリーをパトロールしている。

 

さあ、全ての危険物を排除しよう。

 

鳥……危険だ。

 

空からの攻撃フンは非常に危険だ。

 

防ぐ手段がない。

 

だから、事前に追い払ってしまう。

 

犬……危険だ。

 

もしかしたら依頼主が噛み付かれるかもしれない。

 

だから、私が威嚇し、追い払う。

 

しかし、向こうも威嚇し、睨み合いが続く。

 

大抵、向こうが折れ、逃げていく。

 

それで良い。賢明だ。

 

私を敵に回して良いことはない。

 

さあ、安全を確保した。

 

次は、マーキングだ。

 

私がマーキングすることで、ここが私の私有地(縄張り)ということを敵に知らしめるのだ。

 

こうすれば、賢明な生物は近づかないだろう。

 

仕事を終え、帰宅する。

 

 

 

 

 

 

久しぶりに依頼主が私を抱いて、寝た。

 

こうしていると、昔のことを思い出す。

 

私は家でも外でも依頼主を守っている。

 

それは、依頼主が解雇され、捨てられた私を拾って、育ててくれたせめてもの恩返しだ。

 

3年前。私は元依頼主に捨てられた。

 

元依頼主のことも一生懸命守ったつもりだ。

 

だが、どうやら努力が足りなかったらしい。

 

解雇され、捨てられた。

 

ダンボール箱に入れられた。

 

何日そこにいたかわからない。

 

今の依頼主に拾われたのは、雨の日だった。

 

冷たい雨の中。依頼主と目があった。

 

人間不信に陥っていた私を、優しく抱擁してくれた依頼主の温もりを、今でも覚えている。

 

そこから、依頼主が私を拾い、長い間食べ物を食べていなかったため、弱っていた私を守ってくれた。

 

だから、今度は、私が依頼主を守るのだ。

 

昔以上に、守るのだ。

 

もう、あんな思いはしたくない。

 

惨めな思いはしたくない。

 

そこから救い出してくれた依頼主の役に立ち、懸命に努力する。

 

それが、私の使命であり、やるべきことなのだ。

 

 

 

 

 

 

あれからしばらくたち、私はいつも通り、依頼主を守っている。

 

ミッション「依頼主を守れ。」

 

私は、依頼主を守っている。

 

守られていたから、守っている。

 

しかし、私は依頼主の笑顔が好きだ。

 

いつも笑っていてほしい。

 

だから、依頼主が悲しんでいるときは、時にはミッション「依頼主を笑わせろ」になる。

 

ミッションは時と場合によって、変わるのだ。

 

今日はターゲットが泣いている。

 

だから、今のミッションは「ターゲットを笑わせろ」となる。

 

私はありとあらゆる事をして、主人を笑わそうとした。

 

しかし、依頼主は一向に、笑ってくれない。

 

そして、泣きながら、依頼主はこういった。

 

「……ありがとう。ポチ。」

 

 

 

 

 

 

私はかな子。26歳。

 

私には可愛いペットがいる。

 

「ただいま。」

 

私がこういうと、いつも尻尾を振ってお出迎えしてくれる。

 

「ワン!ワンワン!!」

 

いつも何か言っているようだけど、犬語がわからないから、伝わらない。ああ、犬語がわかったら良いのにな……。

 

今日は、上司に怒られた。

 

だから遅くなった。

 

だけど、どんなに遅くなってもポチはいつも出迎えてくれる。

 

だから、仕事も頑張れる。

 

この子のご飯のために。

 

この子の生活のために。

 

私は嫌なことがあっても頑張れるんだ。

 

「ごめんね、遅くなって、ご飯を今あげるね。」

 

ご飯をあげると、ポチはすごい勢いで食べ始めた。

 

ああ、ごめんね。私が遅くなったばっかりに、お腹が空いていたんだね。

 

「お腹空いていたの?ごめんね。でも、もっとゆっくり食べてね。」

 

ポチはご飯を平らげると、何か言いたそうに私を見て、ワンと鳴いた。

 

「ああ、散歩ね。ちょっと待ってね……」

 

 

 

 

 

 

散歩はちょっと億劫だ。

 

ポチが他の犬とすれ違うといっぱい吠えるし、ハトやカラスを見ても吠える。

 

吠えた後は、トイレをそこら辺でしてしまう。

 

もちろん後片付けは私がやる。

 

……、だけど、手がかかるペットほど、愛おしいと感じる。

 

 

 

 

 

 

家に帰った私は、久しぶりにポチを家に上げ、抱っこして寝た。

 

今日はポチと一緒に寝たい気分だったのだ。

 

嫌なことがあった。

 

それを忘れさせてくれる。

 

私にとってポチはかけがえのない存在だった。

 

あの日、ポチと初めて出会った日。

 

冷たい、雨の日だった。

 

その時、私は、彼氏に捨てられた。

 

「別れたい」

 

そう告げられ、理由を教えてくれなかった。

 

私は納得できなかった。

 

せめて、理由があれば納得できたかもしれない。

 

でも、その一言を捨て台詞のように残し、音信不通になった。

 

雨の中の帰り道、私はいつも通らない道を遠回りして帰った。

 

雨に濡れたかったのと、誰もいない家に帰りたくなかったのだ。

 

そんな時、ポチと出会った。

 

ポチは今にも死んでしまいそうにガリガリにやせ細って、弱っていた。

 

そんなポチが、私をじっと見ていた。

 

その目は、何かを訴えていたようだった。

 

私はその時、運命を感じた。

 

私と同じように捨てられてしまった、犬。

 

今にも死んでしまいそうな犬。

 

この犬を守ろう。

 

そう思って、この犬を抱きしめて、動物病院に駆け込んだ。

 

そこからは、怒涛の日々だった。

 

元気になった犬を、ポチと名づけた。そのポチがいろんなトラブルを巻き起こすのだ。

 

全く、元彼氏のことを考えている暇なんてない。

 

でも、私にとっては、ちょうど良い忙しさだった。

 

それに何より、家で私を待っていてくれるポチがいる。

 

そのことが、私にとって生きる糧になっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「……!」

「……る…だ!」

「お…るんだ!」

「起きるんだ!」

 

私の脳内にそう声が響き、びっくりして起きた。

 

「え?誰!?」

 

私は起きて、あたりを見渡した。

 

しかし、人はいない。

 

いるのは、ポチだけ。

 

「寝ぼけていたのかな?」

 

私はそう思うと、ポチに餌をあげた。

 

すると……。

 

「今日も美味だな。」

 

そう声が脳内に響いた。

 

まるでその声はポチの気持ちと連動しているかのように思えた。

 

……まさかね。

 

私は目を覚まそうと顔を洗い、仕事へ行った。

 

「じゃあ、行ってきます。待っててね。」

「待機命令だな。了解した。」

 

また声が聞こえた。……私はおかしくなってしまったのだろうか。

 

仕事から帰り、ポチと再開した。

 

「ただいま!ポチ!」

「待機命令を遂行した。報酬を求む。」

 

やっぱり声が聞こえる。幻聴なのだろうか。だけど、ポチの声のようにも聞こえる。もしポチの声なら、そんなに悪い気はしなかった。以前から、ポチの気持ちは気になっていたからだ。……報酬?餌のことだろうか。

 

「……ご飯ね。はいどうぞ。」

「美味!美味!」

 

「それでは、パトロールに行こう!依頼主の危険を排除しにいくのだ!」

 

パトロール……散歩のことだろうか。

依頼主は……私のことだろう。

 

少し億劫だった散歩。

その散歩は、ポチにとって、「私を守る」ための行為であり、精一杯自分のできる範囲で私を守ってくれている。

ポチの声が聞こえ始めてから、気づいたことだ。

 

家に帰り、せっかく声が聞こえるようになったので、ポチと話してみた。

 

「ポチは今、幸せ?」

「……依頼主が珍しく私に話しかけている。しかし、その答えは簡単だ。もちろん幸せだ。依頼主と一緒にいる。それが私の全てであり、私の存在意義だ。」

「……なぜ、ポチはそんなに私を守ろうとしてくれるの?」

「それは、依頼主が弱っていた私を守ってくれたから。だから、恩返しに今度は私が守りたい。」

「……ポチは、私のこと、好き?」

「もちろんだ。恩人であり、依頼主であり、守るべき尊き存在。私は、依頼主のことが今も好きだし、これからも好きであろう。」

「……。」

 

私は言葉に詰まって、涙を流してしまった。

 

ここまでポチが私のことを思っていてくれたのが、素直に嬉しかったのだ。

 

そして、ポチの心の声が聞こえる。

 

今度は、泣いている私をみて、励まそうとする気持ちが伝わったのだ。

 

ああ、私は幸せだ。

 

身近にこんなに自分を想ってくている家族がいるなんて。

 

だから、私はその家族にこう言った。

 

「……ありがとう。ポチ。」