交差点の赤信号で自転車を止めて、待っていた。

誰かが呼ぶ声がする。
目をやると、交通指導の地元ボランティアのおじいさんが、小学生の女の子に話しかけていた。
 
『今日はどうしたの。遅かったんだね』
『今日はちょっと遅くなっちゃった』
『あれかい? 部活かい? えーっと、バスケだっけ』
『ううん、委員のね、用事があったの』
 
信号が変わり、私は自転車をこぎだした。
女の子も
『じゃあね』
と言って、横断歩道をわたりだす。
 
『気をつけて帰るんだよー』
 
おじさんの声が背後から聞こえる。
女の子はふり返り、手を振った。
 
痛ましい事件もある世の中だけど、こうやって小さい子を愛して、守ろうとするたくさんの手があるんだよね。
私もふり返り、おじさんに向かって、心の中で手を振った。