{CDDA9A82-5214-4B3E-8225-6D39D938CB73}

陽が翠玲山脈に沈みあたりが碧黒く染まってきた。
山際に祠を見つけ歩みよると、その向こう側には立派な団栗の樹々があった。

「今夜はここにするか」

旅具を背からハズしてやると愛馬のテルクニは、ブルルと身を震わせている。
勾眞野(クマノ)から2日で此処までやってきた。テルク二は母方の祖父様が大事に育てていた馬だった。祖父が不慮の事故で亡くなり面倒を見る身内がいなくなり引き取り共に過ごしていた。小さい頃からテリクリの背中で育っていたのでなついていたのが自分だったのだ。昔、戦時中に祖父と共に生き抜いてきたテルクニは体に幾つか刀傷も刻んでいた。
1日のねぎらいをかけながら毛並みを簡易ブラシで撫でてやると気持ち良さげに目を細めている。ひと通りブラシかけが終わると、鞄から干し芋を取り出し分け合いながら食べた。テルク二は結わえておかなくても大丈夫だった。まだお腹が足りないのだろう、周りの野草を食べ始めていた。
「あまり遠くに行くなよ。」
そう声をかけると、撒きをまわりから集め火を炊き、今夜の寝床を整えてゆく。
空には満天の星が輝きだしていた。月は満月が終わり下弦に向かう頃の姿。

焚き火を眺めながら火の揺らぎに昔を重ねている。手元には使い古した小刀と小枝があった。何をつくるというわけでもなく削りだしていたが小枝の形からジャムをパンにぬるナイフがいつしか出来上がっていた。

ケーン、ケーン、、、
谷の向こうから獣の鳴き声がこだまする。
テルクニの耳がクルとその方向に向いている、距離は遠いのだろう、しばらくすると眼をつむり地に伏せた。

翠玲山脈のふもとには昔父が出稼ぎに長い間行っていた。彼は自分のことをあまり話さない人だった。
「、、、父たちがあの頃あの仕事に就かなければ私の人生はもっとかわっていたのかもな。そうするとsinとも出会わなかったか、、、」
夜が更けシャル(旅の夜具)に包まるとウトウトとsinとの出会いがあたまをよぎってゆく、、テルクニが背中を包み混んでくれたのを遠い意識で確認しながら眠りについていった。

つづく。