「カーサジュリエット」と書かれた小路へ行くと、右壁には恋人たちが書いたであろうと思われる落書きの嵐である。観光客でごった返している。なかなか前に進めない。ガイドブックでは、ジュリエットの右胸に触ると愛が、左胸に触ると金運がくるといわれている。なので、当然多くの人が触っているであろうと、ジュリエットの像が見えるところに来たが、誰一人触っていないのである。これほど多くの観光客がいるというのに、ピカピカに右胸が光っているというのに、である。
そこで私は勇気を出しつかつかトジュリエットに近づいて、かの光輝く右胸をさわったのである。
すると、われもわれもとわらわらと、観光客が寄ってきて触りまくるのであった。私は愛もほしいが、金運もと左胸に触れてきた。
ご婦人がたは、堂々と、紳士の皆様は恥じらいをもった遠慮深さを見せながら、美しい形のジュリエットの胸をなでていた。
ほほえましい光景ではないか。
世界中、女性がつよくなってきたのであろうか?
