消防署の人が二人やってきて消火器をチェックしてもらって、簡単な質問に答えて、軽く談笑する。
「ありがとうございました」
と消防士さんが帰っていって仕事に戻る。
5分後に
「ドーーーーーーン!!」
と激しい音。
喪黒福造が来たわけではない。
隣の工場がいつも鉄屑を詰めた大きい箱を、回収業者のトラックにひっくり返して積み込むので、いつもどおりその音だろうと振り返ると。
前の倉庫の建物の塀がグシャグシャで、乗用車が衝突していて正面がぺしゃんこ。
運転席を見ると人が見えなかったので、ちょっと現実離れした光景に
「塀にめり込んで駐車してるだけ??」
とアホな考えをしてしまう。
近寄ると太陽の反射加減で見えなかっただけで、運転席では運転手が後ろに反るように苦しんでいる。
エアバッグが作動している。
片側では女の子が脇と腰付近を押さえて痛がっている。
出てきた近所の人と確認しあってすぐに警察に電話。
胸を押さえてよろめきながら出てきた初老の運転手に確認を取って救急車も呼ぶ。
警察の電話でのあまりの質問の多さに心の中で「そんなことより早く来て!」と少し苛立ったけど、ここはお互い冷静な情報こそが大事な近道なんだと苛立ちを押さえて質問に答えていく。
女の子は「大丈夫」と言うけど「今は大丈夫に思えても後で痛むかも知らんからね。気をつけといてね」と伝えておく。
電話でかけつけた御両親が少し殺気立ってはったけど、当然だ。
先に救急車が到着。
運転手と女の子に話を聞く。
なぜか消防署から電話。
さっきの消火器の件かな?と思ったら「衝突した車からオイル、ガソリンの類が漏れてないか」の確認。
「緑の液体が漏れてます」
と報告すると「すぐに向かいます」とのこと。
通報したら番号が色んなところに回るのだな。すごい。
すぐに警察が到着。
通報した僕の住所と名前と生年月日と連絡先を記入。
住所の「在」の字の確認を「右」とされてしまった。
申し訳ない…悪筆で…。
で、すぐに消防車が到着。
ここで笑ってしまったのが、降りてきたのがさっき消火器を点検しに来たお二人。
「10分ぶりでございます」
とはさすがに言わんかったけど、不思議なご縁を感じる。
さっきの談笑モードとは違い完全なる仕事モード。
テキパキと自分のセクションをこなしながら、それでも消防士、警察、救急隊員が情報を交換、確認し合う姿は「さすがだなぁ」と。
で、当たり前だけど「こんな状況を作品でどう描くかなぁ」と考えながら見る。
変な話やけど。
どんな仕事でも、やっぱり「仕事する人」はカッコいいね。
でも10分後くらいに、肝心の倉庫の持ち主に連絡は??と、近隣の人たちも気付きだして
「そういえば、倉庫代わりなので普段は離れたところに会社を持ってはる」という事を知った。
iPhoneで調べると連絡先が出てきたので電話。
もちろん困惑して慌ててはった。
5分後に到着。
破壊された塀を見て愕然…。
運転手は救急車で運ばれて、女の子も「念のため」救急車で病院に。
僕もそろそろ御役御免になってきたようなので、仕事早引けで学校公演のための打ち合わせに向かう。
事故の流れは曲がり角から出てきた女の子を避けようとして塀に衝突したようだ。
女の子は自転車が少しかすって転倒のさいに脇腹を打ったみたい。
けど、決めつけはダメだけど…。
道路状況、周りの状況、距離の状況、どれを見ても…避けた時に明らかにブレーキとアクセルを間違えている…。
決めつけはダメだけど。
女の子は大丈夫そうで本当によかった。
どうか運転手さんもご無事で。
警察の方、消防士さん、救急隊員さん、お疲れ様でした。
そして今日も元気に学校に、遊びに出かける子供たちも安全に。
家族の元に帰る時も安全に。
そしてどうか皆様もご安全に!
*ただ。
ありきたりな言葉しか言えないけど……。
正直、びっくりした…。