休みを終えたあと、すぐにツアーが始まった。
初日は福岡…(いよいよツアーが始まるんだね。)
私は心の中でどうか、怪我なく無事に終わりますようにと呟く。
“Who am I ? Iam a champion!”
円陣を組んでメンバーはステージへ…

ニックンさんは私を振り返りキラリと光るビー玉を握りしめポケットへ入れた。
私も自分のビー玉をギュッと…

みんながステージに立っているなか すでに次の公演の準備が始まっている。
名古屋に移動して…公演前の夜にホテルの部屋で麻の紐で編んだ小さな袋のついたネックレスを作った。
その袋にはニックンさんのビー玉を入れた。
それをもってニックンさんの所へ…
ノートパソコンを覗いているニックンさん。
そこにはケビン君の元気な姿があった。パリ公演に来てくれるらしい…
ニックンさんは笑顔でようやくケビン君との約束が果たせるから嬉しいと喜んでいた。
「僕が頼んでいたものはできた?」
私はさっき出来上がったネックレスを渡す。
「ミナのは?」
自分のは作ってないことを言うと寂しそうに「お揃いがよかったな。」
こそっと“お揃いにしよう”と言われ返事をかえそうとすると…
テギョンさんとウヨンさんが現れて
「そこの二人…やっぱり怪しいぞ♪」
「ホテルのラウンジで微笑みあってるなんて…」
ジュンケイさんは「なんで俺じゃないんだ?」いつもどうり…(笑)
「なに言ってるんですか。変なこと言わないでください。」
ちょっと怒った感じで言ってしまう。
メンバーみんなが「やっぱり、怪しい~」
「へ、部屋に戻ります!!」
そそくさとその場を去った。

ネックレスのことは二人の秘密だよ…
ニックンさんの言葉がまたドキドキさせる。このままだと、メロメロになりそう。

翌日のリハーサル…
スタッフにいろいろ指示しながらニックンさんを見てしまう。実はあの後、私のも作ってしまったんだよね。
お揃いのビー玉ネックレスを…
ニックンさんに見せたいけど、みんながいるし、二人だけの秘密だし♪

あれ?
その時、ニックンさんの動きに違和感を感じた。ダンス確認中、なんだかいつもと違うような気がする。
「いつもと違いませんか?」
チーフマネは変わらないよ。って
違う…右腕をかばってるような。
もしかして、まだタイの怪我が…
あわててニックンさんの腕をつかむと痛がった。
「腕が痛かったんですね。」
私の顔を見て無言で頷く…
30分の休憩をとることにして医療スタッフに手当てしてもらうことになった。
“腱鞘炎をおこしていますね。無理なピアノ練習してませんか?”
腕が痛いのにソロのピアノ練習をしたのが原因らしかった。
名古屋公演はピアノ抜きの歌だけになってしまった。
「ミナ、よくわかったね。」
「私はいつでも見てますから」
(あつい眼差しで…)って付け加えたのはテギョンさん…
千秋楽のパリ公演ではせっかく、ケビン君が見に来るからピアノを弾きたいと思うニックンさん。
でも、無理はしてほしくない…
私はあることを思いつきジュンケイさんに相談する。メンバーみんなも賛成してくれた。
「じゃあ、準備しますね。」
みんなの控室から出て行こうとすると、ニックンさんにひき止められる。
「ミナ、もしかして、ネックレス…」
「はい♪」
お揃いのビー玉ネックレスをメンバーにわからないように見せあった。
「お揃いだね…」
顔を見合せて笑顔でいたらまたもや、テギョンさんに「いちゃついてる。」と言われてしまう。
「じゃあ。」と言って控室を出て行く。
私の思いつきをメンバーみんなが夜遅くまで動きの確認をしていた。

それから…
あっという間にツアーは進みもう、パリの千秋楽になっていた。
「ニックンさん、例のやつのお披露目ですね。きっと、上手くいきますよ。」
ツアー中は歌だけのソロだったニックンさんはジュンケイさんのサポートを受けながらピアノを弾くことになっている。
客席にケビン君をしっかり確認してステージは始まった。
(最高のステージになりますように…)私は出て行くメンバーを見ながら祈る。
みんなはもちろん、かっこいいステージを繰り広げる。(みんな素敵です。)

客席のケビン君は赤いペンライトでニックンさんに声援を送っている。

そして、ニックンさんのソロに入る。
リズミカルな曲に合わせてピアノを運んでくる着ぐるみ達(オクキャット、ピヨン、チャンナナ)
ステージには2台のピアノ、その前に立つ
ニックンさんとジュンケイさん。
(一緒に重奏してジュンケイさんがニックンさんのカバーをしながら演奏してソロを…)
二人の二重奏は凄くて鳥肌がたつぐらいだった。
演奏が終盤になると、着ぐるみ達がお尻を振って踊りだして…
ニックンさんはきゅっと口角を上げて嬉しそうに歌った。

その後、約2時間半のステージは終る。袖に帰ってきたメンバー一人ひとりに声を掛ける。
「お疲れ様です。最高でした。」

「ミナ、ありがとう。ケビンにファン達に僕のピアノが届けられてよかった。」
「私はなにもしてませんよ。」
「僕はミナのことずっと大事にする。」
(今日のステージのニックンさんはとっても素敵な王子様だった。本当に好き…)

すぐにテギョンさんがまじめな顔をしてニックンさんに
「俺は大事にしてくれないの?ニックン…」
「ミナだけ、それにそんな趣味ないからね。」
二人の会話に大爆笑するみんなとツアー成功のハイタッチをかわした。