そして、歌謡祭当日…
私達は早朝からリハーサルのために会場入りしていた。
昨日のニックンさんを思うとつい、ボーっとしてしまいがちで…
気まずいままが続いた。控室がなにやら騒がしい…(なにかあったのかな?)
衣装スタッフがニックンさんの衣装がないとあたふたしている。なぜかニックンさんのだけがない。
「ないものは仕方ないから裸でやろ~」
テギョンさんはよほど裸になりたいらしいけど、まずいよね。
私はなにかあったらいけないと予備の衣装を荷物に持ってきていた。
この衣装であれば全員同じ衣装で出演できる。
ステージに立つ2PMはなにごともなかったようにファンの心をつかみ盛上がる。
(よかった。)
袖に帰ってきたメンバーを迎え入れてタオルと水を渡す。汗を拭くニックンさんと目があってもなにも言えなくて…
チーフマネに呼ばれて今からある雑誌の取材の打ち合わせをすることに
ニックンさんの方を振り返ると、ソムチャイさんと話をしているのが見えた。


それから数時間後、宿泊先のホテルに戻ってきた。最高のステージだったけど、気持ちがモヤモヤしたままだった。
もし、このままだったら…と思っていたらフロントから内線がなる。
「ミナ様に伝言を預かっております。
二人で話がしたいので17階の1702号室まで来て欲しい。ニックンだそうです。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
ニックンさんから?たしかニックンさんの部屋は19階のはずだけど、とりあえず行ってみよう。
言われた17階の1702号室の前でドアをノックする。

部屋から出てきたのはソムチャイさんだった。
ニックンさんじゃない…部屋の前に立ったまま動かないでいるとソムチャイさんに強引に腕を引かれた。
「やめてください。離して…」と後退りすると
「静かにしろよ!」無理矢理引きずり込まれそうになる。
私は必死に抵抗していたが部屋の床に見覚えのあるものが…
ソムチャイさんはニヤリと笑い。
「なんだ、バレちゃったか。」
そこには無くなったニックンさんの衣装が…
ソムチャイさんがニックンさんの衣装を盗んだの?
「ステージの後、ニックンにミナに近づくなって言われたけど、アンタよっぽど大切な存在みたいだね。」
助けを呼んでも誰も来ないと気を緩めた時、部屋へ引き込まれてしまった。
「大切なアンタになにかあったら、ニックンはどうなるかな。」
(もう、ダメだ)と目を閉じた。
ソムチャイさんから引き離そうとするニックンさんが目の前に立っていた。
その胸にしがみついた。ギュッと抱きしめてくれた。
「間に合ってよかった。もう、大丈夫だよ。」

キッとソムチャイさんをにらんで
「これは一体どういうつもり?」
「見たままさ。」
ソムチャイさんは自分の仕事を取られた腹いせにニックンさんの大事なものを奪い取る。そうすればタイで人気No1は俺だ。と思い続けていたらしい。
そして、部屋のテーブルの上にあったワインの瓶を手にとる。
「お前が俺のプライドを傷つけた。だから、お前の大切なものを傷物にしてやる!!」
ソムチャイさんは私めがけて瓶を降り下ろす。
「ミナ」


つづく