官僚制の逆機能〜ワケ分かんないけど規則だから[No.122] | 起業して不安はあるもののワクワクしている50歳・IT技術者・中小企業診断士のブログ
文章長すぎ!って方は赤字部分だけお読みください。
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規則および上下関係を重視することで合理的、安定的な組織運営を行おうとすることを官僚制という。このようなことが行き過ぎて組織がガチガチになって弊害が生じてしまうことを官僚制の逆機能という。

例えば規則を守ることはお客さんに気持よいサービスを提供するためであるにも関わらず、規則を守りさえすればお客さんのことなんて関係ないみたいな手段と目的が逆立ちしてしまう残念なことが起きてしまったりする。

僕も規則の厳しいところにいたことがあって、このようなことになってしまうのは十分に理解できる。規則を守ることなくミスなんかした日には大勢のギャラリーが見守る軍法会議の場で反省文を発表させられ、メガネの端がピカって光る検察官から厳しい尋問を受け、神経を擦り減らすことになる。小舅の執拗な金銭上の小言に限界を感じ始めている哀れな嫁みたいに。

だから個人の判断の余地は限られ、規則を守ることが最優先される。このような状況では工夫とかお客さんへの思いやり、気遣いといった気持ちは起こり難い。


上下関係・規則といったものに挑戦的だったSex Pistols

また、アメリカのエンロンっていう大きな会社が粉飾決算によって倒産したことをきっかけに2度とこんなインチキな会計処理をさせないようにしよう!っていう内部統制の動きが一時、物凄く活発になった。今はそんなに聞かなくなったけど、当時はJ-SOX法って言葉が流行語大賞の候補にノミネートされるんじゃないかってくらいにもてはやされ、このようなことに明るいコンサルタントが妙に重宝されていた。

そんな状況だったから僕が生業としているITの世界では情報システムに少しでも変更を加えようものなら、インチキやミスの防止のために、幾人もの承認者への、変更の目的、安全性、正確性といったものの説明が求められた。承認者も下手に落ち度を見過ごした日には自分の責任になってしまうからということで、時には重箱の隅みたいな質問も飛んできたりする。こんなことでとんでもなく長くて貴重な時間が失われることになる。遠い海の向こうで起きたお金に目がくらんだ人のお陰で面倒なことになってしまったな、余計なところで変なエネルギー使いたくないな、って多くの人が感じていたことだろう。暫くしてこのような過剰反応は落ち着いたけれど。

強い刺激には過剰な反応が起こり、それに対して反発が起こる。さらに、その反発への反発が起こる、みたいなことを繰り返すことで徐々に程良い所に向かい、最終的にバランスする。左右を行ったり来たりしている振り子が徐々に振幅を縮め、やがて静止するように。

確かにインチキしてそうな会社の株や商品は買いたくない。だから、そういったインチキへの適度なブレーキはもちろん重要だ。でも、それが行き過ぎてしまうと、何から何までチェックということになり、業務は煩雑になるし、何よりもモチベーションの低下は避けられない。オリの中に閉じ込められ見せ者にされているライオンよりも、サバンナを自由に走り回るライオンの方が死の間際に実感するであろう充足感は大きいに違いない。ハイエナの集団に襲われてしまう、ほんの少しの危険はあるけれども。

このような官僚制の逆機能に陥ってしまった場合は、各個人に権限を与えてモチベーションを高めるようにすると良いらしい。細かい指示やチェックばかりされていたら小さくしぼんで本来持っている能力を発揮することなんて出来ない。ある程度の裁量が許されるのであれば、もっと良くしたいと思えるし、失敗した時の責任を全うする自覚も芽生え得る。抑圧でガチガチになって、モチベーションを欠いた状態で犯してしまう失敗は悲惨だ。

アメリカはアポロ計画の成功によってソ連との宇宙開発競争で圧倒的優位に立った。ただ、万事順調だった訳ではなくて、裏では莫大なシミュレーションでも想定し得なかった事故が発生し、規則とかマニュアルには載っていない命のかかった中での冷静かつクリエイティブなアドリブがピンチを救ったこともあったようだ。その一方でライバルのソ連の開発チームは官僚的で失敗した時の責任転嫁が酷かったらしい。やや結果論的ではあるけれど、そんな違いも大きな差を生んだことの一因にはなっている気がする。もしもピンチの際に「マニュアルに載っていない!」とか「俺の責任じゃない!」とか言って宇宙の藻屑となって消えてしまっていたとしたら何とも残念なことだ。似たようなことが日常において、たまにあったりするけれど。


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