今日はクラッシュプログラムという、川の中州地帯での一斉投与をしてきた。
Char Megaというこの中州地帯、これまで何回か行ったことがあり、そこでの予防接種にも一緒に参加してきた場所。ロッキプール本島からかけ離れた場所であり、いわゆる行政サービスの全く行き届かない、離れ小島。
この場所はEPIの予防接種の枠からも外れ、世帯数や人口の把握、予防接種対象者の登録などもまったく行われていなかった。
これまでの予防接種では、その場所に数名のワーカーが行き、お店の一角を借りてワクチンなど必要物品を並べ、近くのモスクからマイキング(放送)をして、「来た人に打つ」というやり方をしていた。
「来た人に打つ」にならざるを得ないのは、離れ小島では家同士の距離が非常に遠く、1件1件周って「予防接種してるから来てくださいねー」ってやっていたら日が暮れてしまうから。
離れ小島だから、予算の関係で年に行ける回数も限られていて、この「予防接種してるから来てくださいねー」に時間を費やすよりも、行けるときに行って、来た人に打つ、という方が効率が良い。って皆さん考えていた。
最初に見たときから何とかしたかった。
来た人に打つ、ってやり方じゃ当然、接種漏れの赤ちゃん/女性はたくさんいるはず。
家の数も人口も把握できてない場所だったら、なんとかその全体像を把握して、「何人が全員なのか」っていう意識を皆で共有できないか。
この孤島に暮らす赤ちゃんも女性も、みんな健康でいたいっていう思いは変わらないはず。
そこに自分がどれだけ貢献できるのか。
そんな、いろんな想いがある場所。
これまでに3回、この中州に行って、彼らの仕事ぶりを観察して、一緒に仕事をしてきた。
で、それを県のミーティングでシェアして、首脳陣に訴えてきた。
「とにかくたくさん赤ちゃんも女性もいる。予算が政府から降りてこなくて行けない、っていう問題は理解できるけど、なんとかしようよ」
つたないベンガル語で訴えてきたつもり。
それが伝わったのか、WHOの担当者(SMO)が動いてくれて、WHOから予算を引っ張ってきてくれたのが8月。
「これで中州の全体像を把握するために仕事ができるし、『来た人に』じゃなくて『来るべき人』を把握して接種ができるはず」
と期待したのもつかの間。
結果はというと、
ミーティングが開かれることもなく、小舟代として降りてきた予算を使って今までよりも多く中州に行くでもなく、「あれ?どこに消えちゃったの?」と疑いたくなる状態。
要は、担当地区の責任者のポケットに入っちゃったわけ。
いろんな人に話を聞くと、これってバングラデシュの悪しき習慣。
オフィサーは当然のように自分の懐にお金を入れるらしい。
オフィサーだけじゃなくて、ワーカーレベルの人達でも、予算の中でうまーくやりくりして、自分の懐にお金が残るようにするらしい。
さんざん訴え続けて予算が降りてきたのに、「予算がないから中州までいけない」っていう問題の解決には全くならず。ため息しか出ない日々(笑)
だったらもう自分がお金出してでも行くよ!
今おれがお金出したら、また次もせびられるのは目に見えてるけど、それでも実際に全体像の把握に動いてみて、結果どれだけの赤ちゃんと女性が掌握できたのか、っていうプラスの面を皆で共有できたら、何か変わるんじゃないの??
甘いかもしれないけど、そんな想いを持って20日、レジストレーション(全戸訪問しての登録)に行ってきた。
そこで掌握できた赤ちゃん(2歳未満)は17人、女性(15~49歳)は40人。
想像はしてたけどこんなにも登録から漏れていたのか・・・
って驚いた。
そのレジストレーションの結果を持って、今日は予防接種に行ってきた。
把握できた人達全員に接種できることを祈って。
朝から孤島を練り歩いて
「注射しに来たよー!!」
「あそこのバザールにドクターが来てるから、赤ちゃん連れて早く来てねー」
メガホンマイクを使って練り歩き、バザールに戻るとすでに人でごった返していた。
かなりの混雑の中、注射にミスがないように、対象となるワクチンを間違えないように、5人のワーカーさんの仕事をチェックしながら息の抜けない時間が2時間ほど。
結果、今日接種できた数
赤ちゃん49人(内30人はこれまで未登録)
女性84人(内68人はこれまで未登録)
(未登録には20日のレジストレーションの数も含む)
とにかく、めちゃくちゃ来てくれた。
嬉しかった。
ちゃんと接種に来てくれたことも嬉しかったし、これまで中々動いてくれなかった県のオフィサー(DIMOっていうGAVIファンドのお偉いさん)が20日に一緒に来てくれたこと、今日はロビウルさん(EPIのボス)がついてきてくれて接種のミスがないかをチェックしてくれたこと、いろんな嬉しい出来事が重なった1週間だった。
JICAの関係者が以前言ってたこと
「社会が発展していく中で、種の存続が保たれていく過程で、一般社会から漏れてしまう人が出てくるのは当然の原理」
「バングラデシュのように人口爆発が激しい社会であればなおのこと、その漏れてしまう人達を全て救っていくことが必ずしも社会の発展に寄与するとは限らない」
「ただでさえ少ない人的資源、財源を中州のような場所に投入するのには限界がある」
「全体の利益を考えたら、ある意味切り捨てられてしまう部分があるのは仕方がない」
確かにその通りだと思う。
頭では理解できる。
でも、割り切れない自分がいるのも事実。
命の価値は誰しも皆平等だし、バングラのように急成長している国だからこそ、今後この成長についていくことができずに一般社会と呼ばれるものからあぶれてしまう人達が増えてくるのは目に見えている。
貧富の格差がこれからどんどん広がって、貧しい生活を余儀なくされる人達が増えてくるのも想像に難くない。
地理的な意味だけじゃなくて、離れ小島も増えていくのだろう。
そんな国にいて、少なからず医療という命に関われる仕事をしていて、今すでにあぶれてしまっている人達がいて、その人達を「仕方がない」「限界がある」「当然の原理」って言葉で切り捨ててしまうことはどうしてもできない。
協力隊員っていう立場だから、現場にどっぷり浸かって大局観を持つ機会が少ないから、だからこう思うのかな?
将来、もしこの業界に携わっていられたら、その時には今とは違う考えを持っているのかな?
分からないけど、今のおれは中州に住む人達が健康で暮らせるように、そのことに真正面からぶつかっていけることにむちゃくちゃ充実感を感じる。
開発っていう世界の現実
援助される側の国の抱える悪しき習慣
現場で少ない給料でも必死で働くワーカーさん
貧しい貧しい、と言いながらも、すごく素敵な明るい笑顔を見せてくれる村の人々
いろんな人に出会って、話して、この国のいろんな一面を垣間見て、そしていろんな想いを持って、
悩んじゃうこともたくさんあるけど、
「お前がいなかったらこの場所の人達は注射を受けることはなかったはずだ」
「お前が行くって言わなかったら、おれは絶対この場所には来てない」
そう言ってくれる人達が周りにいるっていうこの事実が、何にも代えがたい宝物。
おれの想いを受け止めてくれる人がいる、っていうこの現実に、絶対に感謝の気持ちを忘れない自分でいたい。
どうもありがとうございます。
おかげで明日もフィールドに出る元気が出てきました。
Char Megaというこの中州地帯、これまで何回か行ったことがあり、そこでの予防接種にも一緒に参加してきた場所。ロッキプール本島からかけ離れた場所であり、いわゆる行政サービスの全く行き届かない、離れ小島。
この場所はEPIの予防接種の枠からも外れ、世帯数や人口の把握、予防接種対象者の登録などもまったく行われていなかった。
これまでの予防接種では、その場所に数名のワーカーが行き、お店の一角を借りてワクチンなど必要物品を並べ、近くのモスクからマイキング(放送)をして、「来た人に打つ」というやり方をしていた。
「来た人に打つ」にならざるを得ないのは、離れ小島では家同士の距離が非常に遠く、1件1件周って「予防接種してるから来てくださいねー」ってやっていたら日が暮れてしまうから。
離れ小島だから、予算の関係で年に行ける回数も限られていて、この「予防接種してるから来てくださいねー」に時間を費やすよりも、行けるときに行って、来た人に打つ、という方が効率が良い。って皆さん考えていた。
最初に見たときから何とかしたかった。
来た人に打つ、ってやり方じゃ当然、接種漏れの赤ちゃん/女性はたくさんいるはず。
家の数も人口も把握できてない場所だったら、なんとかその全体像を把握して、「何人が全員なのか」っていう意識を皆で共有できないか。
この孤島に暮らす赤ちゃんも女性も、みんな健康でいたいっていう思いは変わらないはず。
そこに自分がどれだけ貢献できるのか。
そんな、いろんな想いがある場所。
これまでに3回、この中州に行って、彼らの仕事ぶりを観察して、一緒に仕事をしてきた。
で、それを県のミーティングでシェアして、首脳陣に訴えてきた。
「とにかくたくさん赤ちゃんも女性もいる。予算が政府から降りてこなくて行けない、っていう問題は理解できるけど、なんとかしようよ」
つたないベンガル語で訴えてきたつもり。
それが伝わったのか、WHOの担当者(SMO)が動いてくれて、WHOから予算を引っ張ってきてくれたのが8月。
「これで中州の全体像を把握するために仕事ができるし、『来た人に』じゃなくて『来るべき人』を把握して接種ができるはず」
と期待したのもつかの間。
結果はというと、
ミーティングが開かれることもなく、小舟代として降りてきた予算を使って今までよりも多く中州に行くでもなく、「あれ?どこに消えちゃったの?」と疑いたくなる状態。
要は、担当地区の責任者のポケットに入っちゃったわけ。
いろんな人に話を聞くと、これってバングラデシュの悪しき習慣。
オフィサーは当然のように自分の懐にお金を入れるらしい。
オフィサーだけじゃなくて、ワーカーレベルの人達でも、予算の中でうまーくやりくりして、自分の懐にお金が残るようにするらしい。
さんざん訴え続けて予算が降りてきたのに、「予算がないから中州までいけない」っていう問題の解決には全くならず。ため息しか出ない日々(笑)
だったらもう自分がお金出してでも行くよ!
今おれがお金出したら、また次もせびられるのは目に見えてるけど、それでも実際に全体像の把握に動いてみて、結果どれだけの赤ちゃんと女性が掌握できたのか、っていうプラスの面を皆で共有できたら、何か変わるんじゃないの??
甘いかもしれないけど、そんな想いを持って20日、レジストレーション(全戸訪問しての登録)に行ってきた。
そこで掌握できた赤ちゃん(2歳未満)は17人、女性(15~49歳)は40人。
想像はしてたけどこんなにも登録から漏れていたのか・・・
って驚いた。
そのレジストレーションの結果を持って、今日は予防接種に行ってきた。
把握できた人達全員に接種できることを祈って。
朝から孤島を練り歩いて
「注射しに来たよー!!」
「あそこのバザールにドクターが来てるから、赤ちゃん連れて早く来てねー」
メガホンマイクを使って練り歩き、バザールに戻るとすでに人でごった返していた。
かなりの混雑の中、注射にミスがないように、対象となるワクチンを間違えないように、5人のワーカーさんの仕事をチェックしながら息の抜けない時間が2時間ほど。
結果、今日接種できた数
赤ちゃん49人(内30人はこれまで未登録)
女性84人(内68人はこれまで未登録)
(未登録には20日のレジストレーションの数も含む)
とにかく、めちゃくちゃ来てくれた。
嬉しかった。
ちゃんと接種に来てくれたことも嬉しかったし、これまで中々動いてくれなかった県のオフィサー(DIMOっていうGAVIファンドのお偉いさん)が20日に一緒に来てくれたこと、今日はロビウルさん(EPIのボス)がついてきてくれて接種のミスがないかをチェックしてくれたこと、いろんな嬉しい出来事が重なった1週間だった。
JICAの関係者が以前言ってたこと
「社会が発展していく中で、種の存続が保たれていく過程で、一般社会から漏れてしまう人が出てくるのは当然の原理」
「バングラデシュのように人口爆発が激しい社会であればなおのこと、その漏れてしまう人達を全て救っていくことが必ずしも社会の発展に寄与するとは限らない」
「ただでさえ少ない人的資源、財源を中州のような場所に投入するのには限界がある」
「全体の利益を考えたら、ある意味切り捨てられてしまう部分があるのは仕方がない」
確かにその通りだと思う。
頭では理解できる。
でも、割り切れない自分がいるのも事実。
命の価値は誰しも皆平等だし、バングラのように急成長している国だからこそ、今後この成長についていくことができずに一般社会と呼ばれるものからあぶれてしまう人達が増えてくるのは目に見えている。
貧富の格差がこれからどんどん広がって、貧しい生活を余儀なくされる人達が増えてくるのも想像に難くない。
地理的な意味だけじゃなくて、離れ小島も増えていくのだろう。
そんな国にいて、少なからず医療という命に関われる仕事をしていて、今すでにあぶれてしまっている人達がいて、その人達を「仕方がない」「限界がある」「当然の原理」って言葉で切り捨ててしまうことはどうしてもできない。
協力隊員っていう立場だから、現場にどっぷり浸かって大局観を持つ機会が少ないから、だからこう思うのかな?
将来、もしこの業界に携わっていられたら、その時には今とは違う考えを持っているのかな?
分からないけど、今のおれは中州に住む人達が健康で暮らせるように、そのことに真正面からぶつかっていけることにむちゃくちゃ充実感を感じる。
開発っていう世界の現実
援助される側の国の抱える悪しき習慣
現場で少ない給料でも必死で働くワーカーさん
貧しい貧しい、と言いながらも、すごく素敵な明るい笑顔を見せてくれる村の人々
いろんな人に出会って、話して、この国のいろんな一面を垣間見て、そしていろんな想いを持って、
悩んじゃうこともたくさんあるけど、
「お前がいなかったらこの場所の人達は注射を受けることはなかったはずだ」
「お前が行くって言わなかったら、おれは絶対この場所には来てない」
そう言ってくれる人達が周りにいるっていうこの事実が、何にも代えがたい宝物。
おれの想いを受け止めてくれる人がいる、っていうこの現実に、絶対に感謝の気持ちを忘れない自分でいたい。
どうもありがとうございます。
おかげで明日もフィールドに出る元気が出てきました。