「月末から1年くらい、シンガポールに。」



毎日のように一緒に呑み歩いてた彼。

彼の好意は知ってた。

むしろおおやけに、誰にでも、

「気になってる人です」

さらっとそう紹介してくれていた。



そんな好意に甘えて
ーーー決して答えるわけじゃないのに
毎日楽しい夜を朝まで過ごしてた。


顔の広い彼は、毎回のように
いろんな人を紹介してくれた。

家が近いのもあり
みんな共通点が多くて
どんどん増える知り合いに毎回ワクワクした。

「彼の好きな子」
そんなポジションでも、
図々しくもいつも通りの自分でいられる空間が楽しかった。


ずっと続くと思ってた。






お互い仕事が忙しくなって
会うペースは週一から、月一、
最近は月1回も会わないくらいになってた。


お互い街では噂をきく。
知り合いに顔をあわせれば、お互い聞かれる、
「彼女、彼、最近はどう?」

お互い答えは
「やー、最近、あんまり会えてなくて。」
「でも、元気そうですよ」

たまにとる連絡のおかげで、
そんな答えが自然と出る。




先日も知り合いと彼の話になった。

時間ができて、すこし寂しい、
誰かに会いたい夕方。
彼を思い出して会いに行った。



久しぶりの彼は、
相も変わらず奥手な笑顔。

懐かしくも感じた笑顔にほっとして、
「また遊びましょう」
口に出かけたとき。



「シンガポールに行くかもしれない」



一瞬、言葉が出なかった。
ほんの一瞬、自分の表情がわからなかった。




ずっとあると思ってた場所。

大切にしてもらってたことを
ちゃんとお返ししていなかった自分。


“まただ”


後悔するタイミングは、いつもこう。

何度繰り返せば、
大切なことに、大切な時に、気付くことができるのかな。



さみしくて、少しだけ。
静かにひとり、一筋、涙。




大切なもの
大切なひと
大切な時間


全部有限だって、
分かってるはずなのに、。