忘れられない記憶 ~ごめんね、そしてありがとう~ -2ページ目

結婚

あの人からの電話以来、僕はまた少しだけ後戻りをしていた。


そう、またあの頃 みたいに彼女を作る気が無くなってしまったのだ。

馬鹿な男だ。せっかく前に進んでいたのに。

そうは言ってもそんな気分になれないのだからしょうがない。

無理に作ってもまた別れるだけだ。

そんな風に諦めに似た気持ちで、僕はのんびり過ごしていた。


そんな時期が続いて、また季節が変わっていった。

そしてそんな僕を心配したのだろうか。

ある日曜日の晩、ナミちゃんが電話口で突然言った。


「・・・そういえばユキ 、今度結婚するよ」

「えっ!・・・そうなんだ」

ナミちゃんがそう言うという事は、

きっともっと前に決まっていたのだろう。

ただ僕を気遣って、今まで言わなかっただけ。

彼女の言葉に驚きながらも、

んな風に冷静に考えている自分も居た。


「大丈夫?」

心配そうに電話の向こう側から様子を伺う彼女。

「うん・・・ありがと」

僕は平静な声でお礼を言い、その後23言交わして電話を切った。


あの人が結婚する。

これで本当に終わりなんだな。

僕の頭に浮かぶのはそんな諦めの言葉だけ。

当たり前だ。

どこかの小説映画みたいにどんでん返しなんて起こりえない。

大体もう会話どころか接点すら無いのだから。


そんな事を考えて呆けた頭の僕は、

いつの間にか買い置きの酒を手にしていた。

僕は普段一人では飲まないのだが、

失恋したときは独りで酒を飲むものだなんて

勝手に考えていたのかもしれない。

結局この日僕は朝まで独りで飲んでいた。

あの人との思い出と、

今までの僕の想いをかみ締めながら・・・

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非通知_3


あの人 は無言のまま電話を切った。

ーッ、プーッ、プーッ・・・

電話から聞こえてくる味気無い機械音が僕の耳に響いていた。


ショックだった。電話を切られた事にではない。

あの人はきっと『僕があの人に気付いた事』に気付いていない。

それはつまりこんな無言の電話でもあの人を想像できるほど、

僕があの人を想っていたかすら伝える事ができなかったという事だ。


そして僕の頭には疑問が浮かぶ。

何故あの人は今頃電話をしてきたのだろうか?

いくら偶然見かけたとはいえ、

振った男に電話をかけてくるだろうか?

あの時あの人は笑っていなかった。

もしかしたら今は幸せじゃないのだろうか?


そんな自分に都合の良い考えが頭から離れない。

それと同時に後悔が生まれる。

どうして僕はあの時あの人の名前を呼ばなかったのだろう。

もしかしたら何か変わっていたかもしれない。

いや、何も変わらなかったとしてもかまわない。

僕が伝えたかった言葉を


あの人に伝える事ができたかもしれないのに。


だから僕はそれ以来、どんなに他社の携帯が魅力的でも、


携帯の番号を変えれなかった。


番号が変わってしまったら、あの人との最後の繋がりが切れるから。


そして僕は非通知の着信がある度に、今でも心が乱れるんだ。

もうそんな事はありえないと分かっているのに。


だけど、今でも考える。

もしあの時、僕があの人名前を呼んでいたら、

何かが変わっていたのだろうかと・・・



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非通知_2

「もしもし、どちら様でしょうか?」


「・・・」

僕の問いに無言で返す電話の相手。

その瞬間僕は昨日会ったのはやっぱりあの人で、

電話の相手もそうだと確信した。


思わず名前を呼びそうになるが、

その思いを抑えて僕は席を立って数m先の外への扉に向かう。

いくらうちの会社が寛容とはいえ、

ここではさすがに女の名前なんて呼べやしない。

ましてや込み入った話なんて出来る訳がない。


「もしもし?」

「・・・」

一応相手に尋ねながら足を速める。もちろん相手は無言のままだ。

でも僕は気にしていなかった。むしろこのまま無言でいて欲しかった。

扉を出たら、僕が突然名前を読んで驚かそうと思っていたから。

「ユキ、久しぶりだね」

なんて出せうる限りの優しい声で。


あの人はどんな反応をするだろうか?

そんな事を数秒の間で考えながら扉まであと1m程の所まで来た時、

プツ・・・・・・・

あの人は何も言わないまま、電話を切った。

プーッ、プーッ、プーッ・・・

僕の耳には電話から流れる

味気無い機械音だけが響いていた・・・



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