ピルとがんに関するデータの紹介です。
昨日と同じロイアルコレッジ開業医によるピル研究の紹介です。
今回は、がんの発症について、ピルとの関係を論じています。
BMJ. 2007 Sep 29;335(7621):651 PMID: 17855280
結論は、がんは増えないというものですが、ピル群、非ピル群に含まれる女性の年齢には差があります。ピル群の女性が有意に若いのです。
このデータの30歳未満の女性の割合ですが、ピル群で63.6%、非ピル群で51.5%です。観察女性の数に、観察年月をかけた数値は、ピル群744000人、非ピル群339000人となっています。
この論文では、特に観察ができたと思われるサブグループの成績が紹介されており、これは開業医が丁寧に診療して、データ分析したデータであるとされています。
この開業医データでは、メインデータより、がんの発症は、ピル群で増えています。
ピルを内服すると、自然な排卵が起きなくなります。卵巣から成熟卵が外に出る(排卵)時、卵巣の膜は穴があくことになります。すぐ修復されるものの、卵巣の膜にとっては、負担となるでしょう。ピルを飲めば、この卵巣への負担は減るかもしまません。
また、月経周期に従って、子宮内膜は厚くなり、はがれおちるを繰り返しますが、ピルを飲めばこの変化が軽くなります。すると子宮体部に対する負担が経るかもしれません。その結果、子宮体がんと卵巣がんは、ピル群で減少します。
今回は、ピル群で、下垂体を含むがんが増えています。
最も頻度が高い、乳がんへの影響はどうでしょうか?
このデータでは、乳がんの発症は、ピル群、非ピル群であまり差がありません。しかし、再度、この2群では、元々含まれている女性たちの年齢に違いがあることに、注意をしてください。
さて、2007年BMJの論文を見ていきましょう。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1995533/pdf/bmj-335-7621-res-00651-el.pdf
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1995533/pdf/bmj-335-7621-res-00651-el.pdf
メインデータベースを用いたそれぞれののがんの発症は、
すべてのがん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.88倍
乳がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.98倍
子宮頚がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.33倍
子宮体がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.58倍
卵巣がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.54倍
中枢神経がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.34倍
(下垂体を含む)
すべてのがん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.88倍
乳がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.98倍
子宮頚がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.33倍
子宮体がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.58倍
卵巣がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.54倍
中枢神経がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.34倍
(下垂体を含む)
開業医データベースを用いたそれぞれのがんの発症は、
すべてのがん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.97倍
乳がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.02倍
子宮頚がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.49倍
子宮体がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.47倍
卵巣がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.51倍
中枢神経がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、3.23倍
すべてのがん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.97倍
乳がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.02倍
子宮頚がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、1.49倍
子宮体がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.47倍
卵巣がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、0.51倍
中枢神経がん 非ピル群を1とすると、ピル群は、3.23倍
さらに、この論文では、ピルの使用年数によっても、がんの発症頻度を比較しています。4年未満、4-8年 8年以上の3群です。
ピルの使用が長くなると、発症が1をこえるがんが増えてくることにご注目ください。
特に増加するのは、下垂体を含む中枢神経がんです。下垂体は、卵巣におけるホルモン調節をする臓器ですから、人工的なホルモン介入により、刺激ホルモンの分泌が錯乱されてしまうのかもしません。
図1では、中枢神経がんの増加が顕著です。図2では、中枢神経がんをのぞいた各種がんですが、8年をすぎると微妙に増加するがんがふえていることにご注目ください。縦軸は、非ピル群を1とした時の、ピル群の発がんリスクです。
図1

図2

女性ホルモンは、女性の健康をサポートするものですが、その働きは、さまざまであることを示唆する一つのデータとなるでしょう。