食物アレルギーは、IgEが関与する反応です。IgEは、難しい専門用語ですが、アレルギーを持つ人には、検査の説明に使われていますので、多くの人がおおよそを理解していると思います。
 
昨今は、学校給食の現場でも、食物アレルギーで除去食を用意しなければならない子どもが多くなり、現場の関係者の悩みは大きいです。しかし、食物アレルギーがあると主張する親御さんの理解が十分でないことがあります。例えば、油や揚げ物にアレルギーがあると主張する場合などです。理論的には、油で起こる反応は、アレルギーではありません。野菜や果物には、多くの生体活性物質が含まれ、こうしたものに反応する場合も、アレルギーではありません。本物のアレルギー反応は、食べた後にでる反応の一部です。
 
本当にIgEの関与する反応であるかについては、原因となる食べ物と、血液を反応させる検査をして、確かめます。アレルギーを起こす食物は、IgEを結合する構造部分と、結合できる能力が必要です。食物(表面の一部分)とIgEの結合物が、アレルギー細胞を活性化させる能力を持つかを、実験で確かめなければなりません。
 
アレルギー反応を起こす元である好塩基球と、食物蛋白のIgE結合物を、反応させて調べる実験が必要です。しかし、普通は、そこまで調べることはありません。食べて何かが起きれば、アレルギーだろうと言うことが多いのです。ですから、いろいろな誤解が起きてくることになります。
 
巷では、アレルギーと言う言葉が独り歩きをしています。原因のわからない皮膚の反応は、多く、アレルギーと言われますし、老化による変化もアレルギーなどと言われてごまかされてしまうことがあるかもしれません。
 
食物アレルギーの原因となる成分に関しては、研究が進んできていますので、その一端を紹介します。以前、8月21日のこのブログで紹介したピーナッツアレルゲンの記事と似ています。
 
世界の研究施設では、ピーナッツ蛋白のアレルゲン性が、加熱により、どのように変化するのかを調べています。そして、加熱分解したピーナッツ蛋白と、世界中から集めたピーナッツアレルギーの患者さんから提供してもらった血清と、患者さん由来白血球(好塩基球を含む)を反応させます。そして、食べ物に由来するアレルゲン物質としての能力(アレルギーを起こさせる能力)を調べています。
 
一般的に、熱を加えると、蛋白質は構造を変化させます。卵やミルクなどは、十分に加熱すると、人にアレルギーを起こしにくくなるのです。これは、蛋白質を構成する一部分(ペプチド)が、IgEを結合しにくくなったり、アレルギー細胞を脱顆粒させる能力が低下するのです。しかし、加熱して変性後の蛋白質を取りだして研究するのは、生の蛋白質を扱うのに比べて、難しい作業になるそうです。
 
最近、糖が結合した蛋白質は、アレルゲンが高まるのではないかと報告されています。実験で、糖化したピーナッツ蛋白質は、アレルギーが高まるかかが調べられています。日常的には、炭水化物などと一緒に料理したりすると、ピーナッツがアレルギーを起こしやすくなる事と、関連付けられると推定されます。
 
ピーナッツの場合も、熱により構造が変化し、モノマーと呼ばれる短い部分が多くなります。加熱後、蛋白内部に隠れていた新たなペプチド部分が表面にでてきて、IgEと結合してしまうことがあるのではないかなどが、考えられています。

しかし、現時点では、研究ごとに、多少、加熱による影響については、研究結果が異なっているようです。

論文を紹介します。PLoS ONE 2011;6:e23998
Ara h 1とAra h 2/6、Ara h7は、ピーナッツアレルギーを起こす主要な抗原となっています。ピーナッツAra h 2/6、Ara h7は、プロラミンスーパーファミリーと呼ばれ、2Sアルブミン成分が、蛋白構造を強固に保ちます。αヘッリクスと呼ばれる構造を多く持つので、熱に対しても、変化しにくいのです。
 
この論文では、患者血液(患者のIgE)と、ピーナッツを反応させて、生ピーナッツ由来蛋白のAra h 2/6が、加熱により、IgEを結合できる能力を変化させるのかを調べました。
さらに、患者由来白血球と反応させて、患者由来白血球が増殖して、加熱蛋白や、糖化蛋白が、どの位の量のサイトカイン産生をするかを調べました。
 
生、加熱、糖と混ぜて過熱の処理後に、アレルギー能力を比較しています。

実験の結果、ローストピーナッツ由来の、Ara h 2、Ara h 6 は、アレルギー能力を維持していました。一方、生ピーナッツ由来のAra h 2/6では、加熱により、IgE結合性や、サイトカイン産生能は、有意に低下しました。この研究では、生ピーナッツ由来Ara h 2/6は、加熱や糖添加の処理により、アレルギーを起こしやすくなるとの結果にはなりませんでした。
 
著者らは、生ピーナッツに存在する蛋白質は、加熱後もそのまま変性せず存在していて、この部分に、人はアレルギー反応を起こしてしまうのだろうとしています。