銀のつぶには かなしみのなみだが くるまれていることを

人魚が しらないはず ありません。

 

「ほう なぜかね。

それには とびきり 深いかなしみが 入っているというのに」

 

人魚は 北の海のおひめさま。

たからものが いっぱいある 海のそこは

きらきらと いつも まばゆく かがやいています。

海にあるもの ぜんぶが 人魚のものです。

これいじょう ほしいものなんて あるのでしょうか。

 

     わたしの海は つめたくて。

     こおりの お城に ひとりきり。

     心もこおってましたのに。

     なぜだか いまは ここちよい。

 

「きっと この銀のつぶのおかげです。

どうか わたしに くださいませ」

 

銀のつぶに とじこめられた

にんげんの子どもの かなしみのなみだが

人魚の心をあたためたのでした。

 

そこで 月は その銀のつぶを 人魚にあたえることにしました。

けっして なくさない ちかいをさせて。

 

月には ねがいごとをかなえる力も あるのです。

 

人魚は じぶんのかみの毛で ひもをあみ

たいせつに通して くびかざりに しました。

 

北のはて 海のそこに 

いまでも 銀のつぶは 

人魚の くびもとで ゆらめいて いるそうです。

 

月は ときどき 銀のつぶと 人魚に あいに出かけるんですって。

 

これは 海で なみから きいた おはなしです。

 

                               おわり