新聞を読んでいて、我が街で映画が撮られた事を知った。

少し離れた街かどにイタリアを彷彿とさせる情景があるらしく、日本のその街とイタリアを行き来して撮影し映画が完成したらしい。

へぇ〜、あそこにイタリアっぽいマンションがあったんだ…。このヒロインの女の子、かわいいな。

そんな事を思っていると先生がやってきた。キャンパスのテラスで読んでいた新聞を畳んで、先生に近寄る。

あぁ、君もバスに乗って帰るのか?

はい。先生あのぅ、上場企業が配当の他に株主に還元するアレなんですけど…。

あぁ、アレな…。

………

名前が出てこない…アレなんですけど…。

うむ。アレな…。僕もわかっているのだが、名前が出てこない………。

2人で学内の停留所に向かって歩きながらアレの名前を必死に思い出そうとする。




気づいたら僕はバスの中だった。

乗車している殆どは同じ大学の女生徒だ。各々が大きな声で喋りながら、ある女生徒は靴を脱いだ片脚をシートに上げて体操座りみたいにして黒いタイツの指先をマッサージしたり、明るいレモン色のカットソーの上からアイボリーのロングキャミワンピを着た女生徒は、バスが動こうとエンジンが掛かったにもかかわらず、立ったまま、座っている友達の隣で喋っている。

バスが動き出した。

立っている女生徒がいるにもかかわらず威勢の良い発車だ。慌ててキャミワンピの女生徒は席に就く。

次の瞬間、地元の駅に着いていた。

駅はごった返している。

僕は誰かを待っていた。

彼女を待っているようだ。

全身黒ずくめの背の高い黒髪ショートの女性が怒っているわけでもなく、かと言って笑っているわけでもなく、文字通り澄ました顔で歩いて来た。待っていた女性のようだ。

大学4年の時に付き合っていた百貨店勤めのあの子のような、今の嫁さんのような、足して2で割ったような、やっぱり今の嫁さんだったと思う。

特に会話をする事もなく、家に帰る為に彼女とは違う乗り場に向かう。地元の駅のはずなのに、切符売り場は梅田駅の地下鉄のようだった。

慌ててクレジットカードで切符を買う。

上から電車が来た音が響いてくる。走ってエレベーターを登り、とても高い高架駅のホームに着くと今から乗る列車が滑り込んできた。

天気は快晴。まだ朝のようだ。

トロッコ列車だった。

まるで遊園地にある3歳までしか乗れないような剥き出しの細い客車を、小さな、かといって強力なディーゼル機関車が引っ張っている。

列車は今停車したのに、もう動こうとしている。

かろうじて屋根がある客車に乗ろうと、スーパーの、子供1人が乗る、あのカートの扉にあるようなカシャンとやるロックを開けたのだが、中にいる黒いターバンを巻いた女性が扉が開かないように手に力を入れている。

もう列車は動きそうだ。

僕は剥き出しの、何も支える物も無いただの平均台のような客車を跨いで座る。

トロッコのような列車は堤防なのか高架なのか、何も柵もない剥き出しの線路の上を、かなりの速度で進む。

駅を出て少し進んだ場所の眼下では、楕円のタイヤ痕の先に腹下から煙を出したセダンが縁石の上に乗り上げており、傍に老人が立ち尽くしていた。

騒がしい陸橋を渡り終え、まだ次の駅に着いていないにもかかわらず、あたりは夜になっていた。

次の駅に近づくにつれ列車は減速しだす。降車準備をする人の中、おもむろに黒いジャケットにプリーツの黒いロングスカートの若い女性が立ち上がると、そのロングスカートを脱ぎ始めた。臀部を隠す黒い下着が見えようがお構いなしであるのだが、スカートを脱ぎ終えるとジャケットを下に下に伸ばそうとしてモジモジしている。

アレがアメリカのセレブがこぞってする最新のファッションか…。

垣間見たネットニュースを思い出した。

列車が完全に止まると、最新ファッションの若い女性は吹っ切れたような顔で友人と共に駅のホームに降り立った。

凄いね。

突然、前のトロッコに座っていた同じ大学生くらいの女性が、まるで友達に話し掛けるかのように

くるりとこちらを向いて話してきた。

NHKの川崎理加アナウンサーのような、いやもっと目が大きな女性だった。

どこまで行くの?

凄いねという言葉に対し、そうだねとも言わず、いきなり行き先を尋ねた自分に驚いたが

○○

と目の大きな女性も返してくれた。

この路線は田舎に行くと思っていたのに、実際は環状線なのか?新しく通ったのか?わからない。

ただ、まだかなりある事だけは確かだ。

心の中でそう呟いた瞬間………
















ブォンブォン

ブォン🏍️

あの

たぶん直管であろう

まんま暴走族のような音が鳴り響く。













クソっ💢

フ ミ ヒ ロ かっ!💢




奴は

この界隈で1番立派な豪邸に住む社長の息子で

バイクのエンジン音が爆音なので

僕の家の近くまでバイクを引いてきて

僕の家の横でエンジンを掛けますムキー










夢かぁチーン

奴は10分で帰ってきた🏍️