★★★★★★★★★★
以下あらすじ(yahoo映画より抜粋)
『ニューヨークの夜を走るひとりのタクシードライバーを主人公に、現代都市に潜む狂気と混乱を描き出した傑作。ベトナム帰りの青年トラヴィス・ビックルは夜の街をタクシーで流しながら、世界の不浄さに苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィと親しくなるトラヴィスだったが、彼女をポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。やがて、闇ルートから銃を手に入れたトラヴィスは自己鍛錬を始めるが、そんな彼の胸中にひとつの計画が沸き上がる……。』
大好きな映画です。
レビューを書く必要もない名作ですが。
三十年も前のこの映画がいまだに人々の心を掴んで離さないのはトラビスの苦悩は資本主義の現代社会において普遍的なものだからだ。
タクシードライバーというヒエラルキーの最下層で燻っている鬱屈とした男の絶望。
その絶望は映画じみた大袈裟なものではなく、ものすごくぼんやりとしいて、それでいて、いやそれだからこそリアルに伝わる。
トラビスの孤独が身に染みてわかる。
最強伝説黒沢でも言っている
「生きてりゃいい、生きてりゃ勝利なんていうのは動物の話だ!俺は・・・人間だ!」
この普遍的かつ実存的でぼんやりとしたおそれこそトラビスの絶望だ。
徐々に正気を失うトラビスは、後半でついに常軌を逸した行動にでる。
しかし映画にはトラビスが狂気じみた行動に出るに至る説明はまるでない。
だからこのトラビスと同じ様な絶望や孤独を感じた事がない人や、映画を肌で感じる事ができない人はトラビスの異常な行動に「?え?なんで⁈恐い!理解できない」ってなると思う。
人間には勿論本能的な死への恐怖があるが、それ以上に僕たちが恐れているのは、退屈や、孤独といった精神的な死だと思う。
ていうか忙しかったり、充実したりしてる人は死について身近に考える暇なんてないだろう。
だから最後にすべてやり尽くしたトラビスが、一瞬の躊躇もなく自らに引き金を引く。
そして一度死んだはずの男はラストシーンで憑き物が落ちたかのような、同時にやはりどこか世界への諦念じみたものも感じさせる表情をみせる。
憧れの女と再会してもおどけたりせず堂々とふるまう。
トラビスは世界を変える事はできないが、現実をぶっ壊して少なくとも世界の見え方は変わった。
乱暴な言い方をしてしまえば、リア充には一生わからない映画。それがタクシードライバーだと思う。
この映画でトラビスはベトナム帰還兵という設定があるが、そんな事は本質的な問題じゃない。
友達もいず女にも相手にされず孤独で、先行きのわからない将来に漠然とした不安を抱える何処にでもいる社会不適合者の物語だ。
今の悲惨な日本にはトラビス予備軍がごまんと影を潜めているだろう。
他でもない僕もこの映画を観るたびトラビスに酔いしれてしまうが、結局次の日には日常に戻ることだろう。人殺しで妄想癖の狂人に憧れ、また現実に逃げ帰る二重の情けなさだ。
でももし近い将来、自分の人生のために命をかけて戦う時がくるとして、その前に一本だけ映画を観る事を許されたら、間違いなく僕はタクシードライバーを選ぶだろう。
「You talking to me?」


