昨日、牛窓(瀬戸内市)にある臨海実験所で「アユモドキの生態・生理」のセミナーが開かれました。もちろん、講義時間の一コマだから、非公開だけどね。伝手があったので、聴講することができました。


 ドクターコース1年の院生さんが、今までの調査研究をまとめて、学部3年生にわかるようにプレゼンするという感じです。でも、多くの事柄が、今から論文になるようなことなので、興味のある分野を研究している院生のプレゼンは、聞き漏らせません。市内から1時間ほどかかるので、仕事をバタバタと片付けて、駆けつけました。

 プレゼンは、回りくどい説明もなく、難しい言い回しもなく、端的に結果と新知見と考察を淡々と話していました。判りやすく、素直に耳に入ってきます。あっという間に、プレゼンの40分が過ぎ、質疑応答の30分も過ぎました。


 アユモドキのライフサイクルにおける行動は、日常的に生活をしている河川産卵・放精のための氾濫原とを往復する『回遊性』があるという話です。

 以前から、普段は川で泳いでいるが、産卵のために田んぼへ入ってくることは知られていました。受精後24時間くらいで孵化すること、数センチになると田んぼから川へ下ることも知られていました。しかし、数万年も前から田んぼがあるワケではなく、アユモドキは1次的水域の氾濫原の代替地としての田んぼを近年(ここ千年くらい)利用しているに過ぎません。そう考えると、本来、用水や小さな川より、安定して流水が得られる河川を通常の生活の場として選び、産卵・孵化・初期成長には外敵の少ない、突然に沼のようになる氾濫原を選ぶのは、戦略として長けています。アユモドキは、ドジョウの近縁種だが、泥に潜ったりすることはなく、流れの中層を泳いでいるような、泳ぎに長けた性質を持っているあたり、このような生活の場を区別していることは、うなずけます。

 アユモドキは、本流から支流に遡上し、増水によって陸地が水没しているようなあたりを探して産卵します。産卵後は速やかに本流へ下ります。年に一度だけ産卵するそうなので、行動がパターン化しやすそうです。産卵行動に焦点を当てると、いくつかの目的行動に分けることができます。成魚では、(1)遡上行動、(2)産卵場所の探策行動、(3)性的な成熟、(4)産卵と放精、(5)降河行動があり、仔稚魚では、(1)胚発生、(2)孵化、3)成長、(4)降河行動があります。これらの行動などは、体内時計にしたがって進んでいるわけではなく、外的な刺激によっても誘発されることもあります。どのような刺激を受けて行動をするのか、刺激の種類やタイミングも興味がありますが、それらの刺激によるアユモドキの反応(行動)にも興味があります。

 アユモドキにかぎらず、生き物は刺激によって反応するものです。簡単に書くと、


 [反応] = f ([刺激])   ・・・ 式


と表すことができます。 そう、y=f(x) という簡単な関数式です。 という刺激によって、生き物が f(x) という代謝などを経て、 という反応を示すのです。


 生態学的に、いろいろな行動を見せてくれたので、今度は、どんな刺激でその行動が起るのか、アユモドキの体の中で何が起っているのかを知りたいものです。


 きっと、このあと、数々の知見が得られ、アユモドキについて、昭和42年からこちら、棚上げされていた「アユモドキって何?」が明らかにされるのではないでしょうか?

 非常に楽しみなことです。