秀吉はマッチボンバー
《拙著では、秀吉が光秀のクーデターをあらかじめ予知していた可能性を指摘した。なによりも、自らが光秀を追い込んだ(引用者註・四国国分案の変更)ことから、当時の秀吉は光秀の行動を相当に警戒していたであろう。
その証拠の一端として、クーデターの二日後の六月四日までに、秀吉方が備中高松から播磨国姫路を経て但馬国へ北上し、山陰道経由で京都そして近江国長浜までの通路を確保していたことを挙げた。これを単なる偶然の幸運と断言できようか。山陽道(西国街道)ではなく、このような迂回した不自然なルートを確保しえたのは、それまでもこの経路を通じて、光秀の情報を収集していたからではなかろうか。
また拙著では、秀吉がクーデターの背後に潜む人脈や政権構想の詳細まで知っていた可能性まで指摘した。光秀が最も信頼していた与力大名・細川藤孝が、毛利氏が動かないことを確認したうえで、保身のためにクーデターに関わる最高機密を秀吉に密告した蓋然性が高いからである。
なぜ、最前線の秀吉が、約二〇〇キロもの長距離を、異常な速度で、しかも光秀方勢力を的確に掃討しながら京上し、決戦において快勝するといった「奇跡」を実現しえたのであろうか。我々は、秀吉が従軍作家・大村由己などを通じて創作させた数々の「神話」に、いまだ幻惑されてはいないだろうか》
光秀のクーデターを予知しながら信長に来援を仰ぐ、しかも、今度こそ自身出向くという約束、そうせずにはいない信長の性格を熟知したうえで……。
その意味するところはいまさら解説するまでもない。
秀吉はマッチボンバーだったのである。
今日、本能寺の変を裁くとしたら、主犯は光秀で動かないとしても、首謀者は秀吉で同罪である。
以上、本能寺の変を読み解くには十年前の手紙を動かぬ証拠として押さえ、的確に背景を読み解かなければならない。基本は踏まえるべき事実をきちんと踏まえ、あるがままバイアスなしに読み解くことにある。しかし、この基本中の基本が身に備わるには幾多の試行錯誤、解釈上のリングワンデリングを繰り返す必要がある。
(第1回日本史エンタメ講座・完)
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真相に迫る近似値を解析する九つのセンスとノウハウ
これまでの日本史は「俺が、俺が」と個人が勝手に解釈して書き散らかす時代でした。
そこで、次の九つのセンスとノウハウを駆使して解析する試みを提案します。
◎疑問感受性
(解析の切り口を発見するのに不可欠の疑問を感じ取るセンス)
◎見識物差し
(歴史上の人物の見識レベルで判断する洞察力)
◎モンタージュ法
(踏まえるべき事実群から法則性を持つパターンを選り分けてクロス分析するセンス)
◎因数分解解析法
(発言や手紙文を要素別に分解して思いもよらない背景を描き出すノウハウ)
◎セグメント抽出法
(踏まえるべき事実をセグメントして多重解析により思いもよらない背景を描き出すノウハウ)
◎パターン物差し
(パターンを比較して潜在状況を読み切るセンス)
◎時系列物差し
(踏まえるべき事実を時系列的に相関させて一連の動きを筋道立てて掘り起こすセンス)
◎仮説検証法
(方程式は未知数Xを含む等式ですが、仮説Xを用いて真相の近似値を導く手段です。ただし、仮説Xを立てないと解析が一歩も進まないという場合に限って用いる最後の手段です)
◎ジグソーパズル式多重モンタージュ
(最後に仮説検証法も含めて八つのコツから導かれた解析結果を矛盾なく組み合わせて真相に迫る近似相を再構築します)
習うより慣れろ
本講座のモットーです。
説明するよりも実例を用いたほうがわかりが早いと思います。これから更新するたびに実例を展開して解析法を演習していきます。
本講座と出会ったのがきっかけで自力で解析できるようになり最高の知的エンターテイメントを手に入れていただきたいと願っております。
記録にない事実を掘り起こす説明するよりも実例を用いたほうがわかりが早いと思います。これから更新するたびに実例を展開して解析法を演習していきます。
本講座と出会ったのがきっかけで自力で解析できるようになり最高の知的エンターテイメントを手に入れていただきたいと願っております。
これが真実だといいきれる事実はない、というのが本講座の基本認識です。
したがって真相を解明するというより真相の近似値を解析するのが本講座の目的ということになります。記録が少なく既成の解釈や推測まじりの史料から得た事実だけでは解析の精度が低くなりがちなので、極力、埋もれた事実の発掘に努め、解析の精度を高めていく必要があります。
もう、これ以上は不可能というところまで、本講座に終わりはありません。
どのようにして埋もれた事実を発掘していくのか、実例を用いて説明していきたいと思います。
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