私が所属しているマーケティングサイエンス学会でも活躍されている慶応大学の井上教授、
WEB関連マーケティングでは米国でも第一人者であり、コトラーが論文に引用するぐらいのレベルの高さです。他にアスクル関連との協同研究著書など多数の実績をもたれています。
その井上教授が、一昨年の秋に“オーガニックマーケティング”と言うコンセプトをお話されていた。
サマリーとしては、商品を成長させるために“あたかも植物を育てるが如く”メディアにそれぞれの役割を与え、消費者が影響を受けるもっとも最適化されたツールを巧くミックスして使いこなす、と言う定義だ。
これは、バリューチェーンを最適化する上でも最も重要な考え方であり、それこそリコメンデーションルール生成のアルゴリズムにまで論理の最適化に言及されていた。
それと下記の皮肉も込めていたのだろうが、
■現状では先端メディアと先端技術を良く考えもせず、ドーピングするため、何が要因で売上が伸びているのかが予測しづらい。
■予測しづらいと言うことは、売上が横ばい或いは低迷した場合に手の打ちようがない
■結果的に商品のライフサイクルを一様に短縮化させてしまい、次から次へと商品を投入し、スクラップしなければならない
■消費者自体も商品のファンになりづらくなる
■最後に(学者としてマーケティングモデルの研究が不可能となる)という若干の皮肉
売れればよい、生産した物を売り切ればすぐに次を投入すればよい、という現状の考え方では、収益を最大限効率的に考える販売方法ではなく売上最大化を目指してしまう。
私は井上教授ほどインテリジェンスは無いし、権威も無い。
しかし、媒体やツールを単にトレンドだけで、ベンダーに使用させてバリュー最大化の提案ではなく、使用させることによるツールブローカーの打上花火のみのマーケティングになってしまう。
そこには、カテゴリーや業界の違う成功事例を“思いのほか売れた”と言う理由だけで適用させたり、ドーピングを行ったり、
挙句の果てには、身内や関連会社の社員に“一斉に注文しろ!”と号令を流したり。
そのような仕掛けをマーケティングと読んでいるレベルが気に喰わないだけだ。
年間広告アカウントの中で誰をターゲットに、何を使用し、どのようなキャンペーンを行えば、
もっともバリューの高い顧客を獲得でき、競合に対してアドバンテージを築けるのか?
そのような基礎も考慮せず、“あのキャンペーンは売れた”“あれは受注がたくさん来た”と一喜一憂し、バリュー側面では最適化されていない。
私の知り合いの食品会社も、TVでカンフル剤的に売上が伸び、社員が日常業務に影響が出るぐらい突発受注を喰らい、そしてたった1回きりの受注で休眠化する大半の顧客を獲得するために、休日出勤する。
そしてバリューは非常に薄利。
いつも残るのは“ね、TVは反響あったでしょ?”の言葉だけなのだ。
TVのパワーは私は否定はしない。
しかし、バカでも考えが無くても、出せば売れるメディアなのでしょ?TVって。
頭要らないじゃない。
と考えてしまうのでTVメディア信奉者が嫌いなだけなのだ。
TV、新聞、WEB、モバイル、時にはラジオ。これらをストーリーの中で最適化したブランディング提案、すなわちオーガニックマーケティングのカテゴリー別モデルを目指すべきと考える。
これらのメディアミックスの最適化を、一体日本のマーケターと称する何人が企業に提案できるのだろうか?
企業の競争優位性のために。
残念ながら私も出来ない。
しかしながら、自分達が販売できるメディアスペースだけに偏った我田引水提案により、瞬発的に商品に反響をもたらすことは、私はこれからも否定し続けると思う。